発表

3B-066

被養育経験が夫婦関係や育児不安を媒介して養育態度に及ぼす影響

[責任発表者] 松本 添実:1
[連名発表者・登壇者] 赤澤 淳子:2
1:福山大学, 2:福山大学

目 的
 児童相談所の児童虐待相談対応件数は毎年増加している(厚生労働省,2018)。虐待が起こる背景には様々なものが考えられるが,本研究では両親の被養育経験,夫婦関係,育児不安に焦点を当て,それらが養育態度にどのような影響をもたらしているのか検討することを目的とした。その際,ペアデータを用いて,被養育経験が夫婦関係や育児不安を媒介して養育態度に及ぼす影響について夫婦間の比較検討することも目的とした。仮説モデルをFigure1に示す。
方 法
調査対象者 A県の幼稚園・保育園に子どもを通わせている父親138名(平均年齢37.6歳,SD=5.48),母親165名(平均年齢35.5歳,SD=4.94),計303名を対象に質問紙調査を実施した。このうち,夫婦ペアが138組であった。
調査日時 2017年8月~9月に実施した。
調査手続き 父親・母親用の質問紙を,幼稚園・保育園の先生方にご協力いただき配布し,各家庭で回答してもらった。回答後の質問紙はそれぞれ別々の封筒に入れた状態で園の回収ボックスに入れてもらい回収した。
質問紙の構成 1.養育態度:中道・中澤(2003)の親の養育態度尺度,渡辺・広利・松本(1993)のMS式養育態度診断尺度,赤澤・竹内(2015)の暴力を測定する尺度を参考に,15項目を作成し,4件法で尋ねた。2.被養育経験:養育態度で使用した15項目の質問文を回答しやすいように書き直し,4件法で尋ねた。3.育児不安:住田・中田(1999)の育児不安尺度を参考に12項目を作成し,3件法で尋ねた。4.夫婦関係:木本・岡本(2007)の配偶者の育児サポート尺度,渡辺・広利・松本(1993)のMS式養育態度尺度を参考に,5項目作成し,各項目に対して4件法で尋ねた。5.回答者の属性:年齢,同居の有無,子どもの人数,子どもの年齢,職業,就労時間,育児サポート。
分析方法 因子分析と分散分析,重回帰分析を行うため,統計解析ソフトIBM SPSS Statistics 21を使用した。
倫理的配慮 本研究は,福山大学学術研究倫理会で審査を受け,承認された。
結 果
 まず,各尺度の構造を明らかにするために因子分析を行った。その結果,被養育経験および養育態度は「応答性」,「拒否的態度」,「暴力」,「統制」の4因子構造だった。育児不安は「育児への負担感・束縛感による不安」,「育児能力に対する不安」,「育児に対する肯定的感情」の3因子構造だった。
 次に,仮説モデルを検証するために重回帰分析を行った。その際,母親の,「育児能力に対する不安」と「育児への束縛感・不安感」の相関が0.6以上であったため,二つの変数を合計して「育児不安」とした。分析の結果,「暴力」的な養育態度について,父親・母親ともに「暴力」的な被養育経験から直接的に正の有意な影響を受けていることが明らかとなった(父親:β=.38,p<.001;母親:β=.28,p<.01)。また,父親においては「夫婦関係」から負の有意な影響も受けており(β=-.29,p<.001),母親では「育児への肯定的感情」から負の有意な影響を受けていた(β=-.31,p<.001)。「拒否的態度」については,父親・母親ともに「夫婦関係」から負の有意な影響を受けていることが明らかとなった(父親:β=-.45,p<.001;母親:β=-.21,p<.01)。また,父親は「育児能力に対する不安」からの正の有意な影響も受けており(β=.24,p<.01),母親においても「育児不安」から正の有意な影響を受けていた(β=.46,p<.001)。さらに,夫婦間の影響について検討した結果,「夫婦関係」は配偶者の「育児に対する肯定的感情」に正の有意な影響を及ぼしていた(父親:β=.35,p<.001;母親:β=.16,p<.05)。
考 察
 暴力的な養育態度を受けたと認知している父親・母親は,自身の被養育経験が子どもへの養育態度に同様の形で受け継がれているということが明らかとなった。Parker & Colimer(1975)は,親から拒否されたり殴られるといった恐怖に苦しんだ経験のある母親は,自身の子どもにも虐待する傾向があることを明らかにしているが,本研究の結果からも父子関係・母子関係の双方において虐待の世代間伝達が示唆された。また,夫婦関係が良好であれば育児不安が低まり,育児不安が低下すると子どもへの拒否的な態度も少なくなるということが示された。さらに,夫婦関係が良好であれば,配偶者の育児に対する肯定的感情が高まることも明らかとなった。福田(2004)は,母親において,夫婦関係が良好であるほど子どもへの関わりの質が高くなるとしている。本研究より,夫婦関係の良好さは母親の育児不安だけでなく,父親や配偶者の育児に対する肯定的感情へも影響を及ぼし,それが養育態度へも影響していることが示唆された。
 本研究では,夫婦関係や育児不安が養育態度に及ぼす影響について明らかにしたが,今後は夫婦関係を良好にする要因や育児不安を低減させる要因について検討したい。

キーワード
養育態度/育児不安/夫婦関係


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