発表

3B-065

幼児における姿勢制御と空間認知の関連

[責任発表者] 谷口 康祐:1
[連名発表者・登壇者] 箕浦 有希久:1, 渡部 基信#:1, 小西 行郎#:1, 加藤 正晴:1
1:同志社大学赤ちゃん学研究センター

目 的
 Piaget(1952)が発達過程を「身体活動により発生する認知機能の組織化過程」であるとしているように,乳幼児期の認知機能の発達には身体機能の発達が関連していると考えられている。本研究では,4歳から6歳の幼児を対象として,姿勢制御が空間認知の成績に影響するか検討を行う。姿勢制御は,視覚系・前庭系・体性感覚系といった感覚情報から心的空間地図を構成することが必要とされる(清水・三橋,1997)。そのため,姿勢制御の指標の1つである重心動揺は,心的空間地図を構成するのに必要な空間認知機能と関連していると考えられる。
 そこで,4歳から6歳の幼児を対象に両足と片足で立っているときの重心動揺を測定する姿勢制御課題と,提示されたカードの位置関係を回答する空間認知課題を行う。これらの課題の成績に関連があるかどうかを検討し,発達における身体機能と認知機能の関連を検討する。

方 法
参加児 4歳から6歳の保育園児60名が参加した(男子31名,女子29名,48-80か月)。全ての参加児は事前に保護者から書面で同意を得た。また,この実験計画は同志社大学倫理審査室から承認を受けた(承認番号17056)。
実験機器と刺激 姿勢制御課題では,重心動揺を計測するため重心動揺計(アニマ社製・グラビコーダ)を用いた。空間認知課題の刺激として,陸上動物,食べ物,海洋生物,お菓子の4つのカテゴリーから4種類の対象を描いたイラストを8×8㎝のカードとして提示した。
手続き 姿勢制御課題では,重心動揺計の上に乗り,両足立ちと片足立ち(左右それぞれ)の姿勢を約20秒間維持するように求めた。空間認知課題では,同カテゴリーの4枚のカードの表面を正方形上に並べ,参加児にカードに描かれているイラストの名前を答えさせた。その後,カードを裏返し,そのままの位置でカードの一枚を指差し,そのカードに描かれていたイラストが何であったかを答えさせた(正面位置条件)。2枚のカードのイラストについて尋ねたあと,回答のフィードバックを返した。フィードバック後,先ほどとは反対側の方向に移動させ,残りの2枚のカードについて答えさせた(対面位置条件)。

結 果
 重心動揺の指標として,1秒当たりの重心軌跡の移動量である単位軌跡長(ULNG)を用いた。また,空間認知課題では最初に答えさせたカードの名前と示されたカードが一致していた場合を正答とした。
 年齢と回答した位置によって正答率が異なるか分散分析を用いて検討した結果,年齢の主効果のみ有意であった(F(2, 54) = 3.44, p < .05, ηp2 = .11)。多重比較の結果,6歳児の正答率が4歳児よりも高いことが示された。
 姿勢制御課題と空間認知課題の関連を調べるため,空間認知課題の正答率を従属変数とし,月齢,各姿勢条件のULNG,対面位置条件(ダミー変数)の5つを説明変数とした重回帰分析を行った。重回帰分析の最適モデルはステップワイズ法を用いて求められた。その結果,月齢(β = 0.01, p < .01)と両足立ち時のULNG(β = -0.06, p < .05)が最適モデルに含まれ,それぞれが有意な影響を示した(adj R2 = .20; F(3, 104) = 9.80, p < .001; Figure)。

考 察
 本研究では,年齢に関係なく両足立ち時の重心動揺が少ないと正面位置条件時の空間認知課題の成績が高くなることが示されたため,姿勢制御が空間認知の成績に影響することが示唆された。しかしながら,より難しい課題である片足立ちや対面位置条件の影響が示されなかった。このことから,姿勢制御と空間認知は心的空間地図を構成することが基礎的なメカニズムとして関与しているが,課題の負荷が高くなると異なる要素が付与されると考えられる。
 いくつかの先行研究では,姿勢制御とワーキングメモリ機能との関連が指摘されている(e.g. Reilly, Donkelaar, Saavedra, & Woollacott, 2008)。そのため,心的空間地図の構成と活用にはワーキングメモリ機能が関連していると考えられ,今後ワーキングメモリとの関連について検討していく必要があるだろう。

引用文献
Piaget. J. (1952). Librairie Armand Colin.(波多野完治(訳)(1998).知能の心理学,みすず書房)
Reilly, D. S., Donkelaar, P, Saavedra, S., & Woollacott, M. H. (2008). Journal of Motor Behavior, 40(2), 90-102.
清水俊宏・三橋哲雄(1997)電子情報通信学会論文誌,80(6), 1014-1021.

キーワード
姿勢制御/空間認知/重心動揺


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