発表

3B-064

安静時脳活動を用いた発達性ディスレクシアの判別

[責任発表者] 浅野 孝平:1
[連名発表者・登壇者] 柳澤 邦昭:1, 奥村 智人#:2, 若宮 英司#:3, 福井 美保#:2, 玉井 浩#:2, 鈴木 麻希:4, 阿部 修士:1, 橋本 竜作:5
1:京都大学, 2:大阪医科大学, 3:藍野大学, 4:大阪大学, 5:北海道医療大学

目 的
 発達性ディスレクシア(DD)は,知的発達障害および感覚障害などで説明できない,読み書きに特異的な発達障害である。日本語話者の有症率は0.7~2.2%(Kita et al., 2013)との報告があり,その数は少なくない。さらに障害に気づかれず診断・支援を受けていない潜在的なDD児の存在も考えられる。それゆえ早期の診断と適切な支援が必要だが,DDの診断には個別の音読検査や医師の診察を必要とし(稲垣, 2010),現時点で実施可能な専門機関の数は限られている。
 これまで日本語話者のDDを対象とした機能的磁気共鳴画像(fMRI)の研究は少なく,fMRIによる診断・鑑別の有用性は未だ明らかではない。本研究の目的は,DDと定型発達児(TD)の安静時fMRIを用いて因果関係のある有向結合を検討し,2群(DDとTD)の差を特徴づけるネットワーク構造,結合パラメータを特定・評価するとともに,群間差を特徴づける結合パラメータを用いて,各群の判別が可能かを明らかにすることである。

方 法
参加者
・DD群:23名(女3名,平均月齢 138.5ヶ月)
・TD群:28名(女6名,平均月齢 140.2ヶ月)
 DD群はWISC知能検査FSIQ 85以上,TD群はレーヴン色彩マトリックス検査(非言語性知能を評価)の成績が当該学年平均の2標準偏差(SD)以内と,いずれも知的な発達の遅れはない。またDDの診断はガイドライン(稲垣,2010)に従い,仮名文字の音読検査の音読時間で,当該学年の平均から2SD以上の延長が,2つ以上の課題で認められた児童・生徒とした。なお全例右利きであった。
手続き
 京都大学こころの未来研究センターのSiemens社製3T MRIスキャナーを使用し,安静時脳活動を約6分間撮像した。参加者には,撮影中は特定のことを考えずにスクリーン上に呈示された固視点を見ながら安静にしているように指示した。
解析手法
 安静時脳活動は集団レベルのDynamic causal modeling解析(Friston et al., 2016)により検討した。本研究ではKoyama et al. (2013)を参考に,読字処理に関わる左半球の紡錘状回(FFG),下頭頂小葉(IPL),上側頭回(STG),下前頭回三角部(IFGtr)を関心領域として,脳領域間結合および自己結合を検討した。

結 果
有向結合に対する解析:(図1)
 解析の結果,IFGtrの自己結合(抑制)がDDで弱いことが確認され,またFFGからIFGtrの結合パラメータ(抑制)がDDで弱いこと,IFGtrからSTGの結合パラメータ(興奮)がDDで弱いことが確認された。
Leave-one-out交差検証:
 群間差が確認された結合パラメータ(IFGtrの自己結合,FFGからIFGtr,IFGtrからSTGへの領域間結合)が,DDか否かを予測する特徴を有するかどうかを検討した。その結果,DDの予測値と実測値に有意な関連が確認された (r=.24, p<.05)。




考 察
 本研究の結果,安静時fMRIから求めた読字処理に関連するFFG,STG,IFGtrの3領域間の領域間結合がDDとTDの差を特徴づけること,その結合パラメータを用いるとDDかTDの判別が可能であることが示された。領域間結合の解釈は,さらに検討を要するが,安静時の脳活動からDDの判別ができることは,診断の改善に寄与する可能性がある。

引用文献
Kita et al. (2013) Altered brain activity for phonological manipulation in dyslexic Japanese children, Brain, 136, 3696–3708
稲垣真澄 (2010). 特異的発達障害―診断・治療のための実践ガイドライン,  診断と治療社
Friston et al. (2016) Bayesian model reduction and empirical Bayes for group (DCM) studies. NeuroImage, 128, 413–431.
Koyama et al. (2013) Cortical Signatures of Dyslexia and Remediation: An Intrinsic Functional Connectivity Approach, PLOS ONE, 8. 2. e554

※本研究は,京都大学心の先端研究ユニット・研究倫理審査委員会の承認および参加者・保護者のインフォームド・コンセントを得て行われた。

キーワード
領域間結合解析/安静時脳活動/発達性ディスレクシア


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