発表

3A-076

4歳児における「友だち」の認識
―子どもの回答と保育者の評価の比較から―

[責任発表者] 河原 紀子:1
1:共立女子大学

【問題】
 幼児期は,保育園や幼稚園などの集団生活の中で,他児との関係や相互作用を通じて,喜怒哀楽様々な感情を体験し,社会性を育む重要な時期である。幼児期の「友だち」関係の特徴を明らかにする方法として,行動観察や実験的検討など様々なアプローチがある。Kawahara & Negayama(2018)や河原(2019)では,幼児期の「友だち」の認識について,子どもへのインタビューと保育者の評価の双方から横断的に検討してきた。その結果,「一緒に遊ぶ友だち」の人数が3,4歳児では少なく,5歳児では増加すること,また子どもの回答と保育者の評価とを比較すると,5歳児になると一致する割合が高くなることが示唆された。さらに,3歳児の「友だち」の認識について,年度初めとその半年後の縦断的な検討の結果,回答された友だちの名前は2つの時期の間で変動する子どもが多かったが,子どもの回答と保育者の評価の一致率は,半年後になると増大することなどが示された(Kawahara & Negayama, 2019)。しかし,4歳児の「友だち」の認識については3歳児と5歳児の通過点のような位置づけで,十分検討されていない。そこで,本研究では,4歳児における「友だち」の認識の短期縦断的変化について,幼児の回答および保育者の評価の比較によって明らかにすることを目的とする。
【方法】
1.幼児へのインタビュー 対象児: 都内A保育園に在籍する4歳児クラスの幼児21名(男児10名,女児11名)。インタビュー実施時期: 年度初めから2か月経過した6月(1期,平均月齢:56.8,SD:3.9),その約半年後の12月(2期,平均月齢:62.8,SD:3.9)の2回実施した。インタビューの手続き: 午前中の保育から参加して4歳児クラスの幼児とのラポール形成に努め,主に昼食後の自由遊びの時間に,インタビューアーと1対1の場面で,簡単に答えられる日常的な質問をした後,「一緒に遊んでいる友だち」「仲良しの友だち」等について尋ねた。インタビュー場面はデジタルビデオカメラで記録された。
2.担任保育者による評価 研究協力者: 4歳児クラスの担任保育者2名。 調査時期: 幼児のインタビューとほぼ同時期(2回)に実施した。調査内容: 4歳児クラスそれぞれの幼児について,「遊んでいる仲良し友だち」がいるかどうか,いる場合には3名まで具体名を挙げてもらった。
 なお,研究の開始にあたって,園長及び主任には文書と口頭によって,幼児の保護者には研究目的・計画等について文書により説明し,それぞれ文書による同意を得た。また,共立女子大学・共立女子短期大学研究倫理委員会の承認(KWU-IRBA#17113)を得た。
【結果と考察】
 子どもの回答は,保育者の評価の内容と一致する「遊んでいる友だち」「仲良しの友だち」の回答を分析対象とした。「遊んでいる友だち」の質問に,1期は81.0%,2期は90.5%の子どもが,「仲良しの友だち」の質問には1期・2期ともに85.7%の子どもが1名以上の友だちの名前を回答した。友だちの名前以外の回答には,「ひとりであそんでいる」「誰もいない」もあれば,「みんな」「いろんな人」などもあった。また,「友だち」についての2つの質問の回答を比較して1名以上一致する名前を答えた子どもは,1期で52.4%,2期で57.1%であり,子どもにとって「遊んでいる友だち」と「仲良しの友だち」は必ずしも一致しないことが示された。一方,保育者が「いつも一緒に遊んでいる仲良し友だち」が「いる」と評価した割合は,1期90.5%,2期100%で上記の子どもの回答よりも相対的に高かった。
 回答・評価された「友だち」の人数は,1期・2期,子ども・保育者いずれも,2.6人~3.0人で有意な差は見られなかった。しかし,Kawahara & Negayama(2019)で検討した3歳児・2期の「遊んでいる友だち」1.8人と同4歳児・1期の2.8人,同様に3歳児・2期の「仲良しの友だち」1.6人と同4歳児・1期の2.7人を比較するとそれぞれ有意に増大していた(順に,t(16)=-3.203, t(17)=-4.559, ともにp<.05)。このことから,3歳児クラス後半から4歳児クラス初めにかけて,幼児の「友だち」と認識する範囲が拡大する可能性が示唆される。
 次に,「遊んでいる友だち」「仲良しの友だち」に対する子どもの回答の1・2期における変化・継続性について検討した。1・2期の回答を比較して,一名以上の名前が一致した割合を調べたところ,「遊んでいる友だち」は71.4%で一致する子どもが多い傾向が見られた(p<.10)。しかし,「仲良しの友だち」は52.4%で有意差は見られなかった。また,1・2期で「友だち」の名前が一致した平均人数は,「遊んでいる友だち」1.53人,「仲良しの友だち」は0.76人で「遊んでいる友だち」方が有意に多かった(t(15)=2.179, p<.05)。
 また,各時期における子どもの回答と保育者の評価との比較を,上記と同様の基準でしたところ,1期では,どちらの「友だち」も一致率52.4%で違いが見られなかった。それに対し,2期になると「遊んでいる友だち」の一致率は90.5%(Fisher直接確率 , p<.01),「仲良しの友だち」の一致率は71.4%(Fisher直接確率 , p<.10)とどちらも一致率が高くなることが示された。
 以上のことから,4歳児にとって,「遊んでいる友だち」と「仲良しの友だち」は必ずしも同一の対象ではなく,1期から2期にかけて「遊んでいる友だち」の方が「仲良しの友だち」よりも継続性が見られ,その人数も多く,保育者の評価との一致率も高くなることが示された。一方,「仲良しの友だち」については,「けんかしないひと?」などの子どもの回答から,「仲良し」という言葉に対する認識が多様である可能性が示唆された。
【謝辞】 本研究は,JSPS科研費 JP17K04368の助成を受けて行われたものである。

キーワード
4歳児/友だち/短期縦断研究


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