発表

3A-072

児童期の子どもの感情制御
プレゼント課題におけるコルチゾール反応と対処行動

[責任発表者] 風間 みどり:1
[連名発表者・登壇者] 平林 秀美:2, 井澤 修平:3, 唐澤 真弓:2
1:小田原短期大学, 2:東京女子大学, 3:労働者健康安全機構労働安全総合研究所

【問題と目的】
チャレンジ課題におけるコルチゾール反応と対処行動について,幼児期の子どもでは,泣いたり立ち上がって歩いたりするなどのネガティブな対処行動が少ない場合,コルチゾール反応が大きいことが示された(Hirabayashi et.al.,2016; Kazama et al.,2016)。本研究では,子どもの感情制御の発達を検討するために,児童期の子どもに対しプレゼント課題を実施し,コルチゾール反応と対処行動,関連要因として子どもの気質について検討した。
【方法】
〈研究参加者〉
都内の子どもとその養育者31組(男児12名, 女児19名, 平均年齢9歳2ヶ月,標準偏差9.58か月,レンジ7歳10か月~10歳7ヶ月)を対象に,子どもに対して実験課題を実施し,養育者に対して質問紙調査を行った。
〈子どもの気質〉
養育者にThe Temperament in Middle Childhood Questionnaire (TMCQ: Simons & Rothbart,2004)に回答してもらい,Activation Control, High Intensive Pleasure, Perceptual sensitivity, Inhibitory Control, Anger Frustration, Attention Focusing,を分析した。
〈チャレンジ課題における子どものコルチゾール反応と対処行動〉
子どもにプレゼント課題(Cole,1986)を行い,唾液を採取してコルチゾール分泌量を測定した。プレゼント課題は,子どもは提示された5つの品物の中から一番好きなものをプレゼントされると約束したにもかかわらず,一番好きではないものを受け取り,椅子に座って部屋に一人でいることを求められる課題である。最終的には,子どもは一番好きなものを受け取ることができる。本研究では,好きでないものを受け取った後,部屋に一人で1分間いるときの対処行動を分析した。さらにその時の生理的ストレスを見るために,課題実施10分後から30分後までのコルチゾール分泌増加量(AUCi10-30)を分析した(Fekedulegn et al., 2007)。
【結果と考察】
〈コルチゾール反応(AUCi10-30)〉
性別と「子どもが部屋に一人でいる1分間に入り口方向を振り返る対処行動(する・しない)」に分類してコルチゾール反応を比較した。男児のうち,「入り口方向を振り返る」対処行動をした男児はコルチゾール反応を示したが,女児と「入り口方向を振り返らない」男児は,コルチゾール反応を示さなかった(男児:〈振り返る〉6.44ug/dl〈振り返らない〉-1.97ug/dl, 女児〈振り返る〉7.28ug/dl〈振り返らない〉-4.94ug/dl)。
〈対処行動:4歳児の先行研究との比較〉
本研究では,立ち上がった子どもは40名中1名で,他の39名はじっと座ったままであった。42名中6名の子どもが立ち上がる/歩くなどの対処行動をした4歳児(Hirabayashi et.al.,2016)に比べて,9歳児の行動は,足をぶらぶら動かしたり(全員)は見られたものの落ち着いていたと考えられる。
〈コルチゾール反応と子どもの気質との関連〉
相関係数を算出した結果(Table1),男児ではInhibitory Controlとの間に正の相関,Impulsivityとの間に負の相関が見られた。Inhibitory Controlが高いほど,コルチゾール反応が大きいこと(r=.635, p<.05), Impulsivityが高いほど,コルチゾール反応が小さいこと(r=-.683, p<.05)示された。女児では,High Intensive Pleasureとの間に正の相関が見られた。High Intensive Pleasureが高いほどコルチゾール反応が大きいこと(r=.602, p<.01)が示された。
 結果から,9歳の子どもは,見知らぬ人から好きではないものをプレゼントされるチャレンジ課題では,4歳の子どもが示した(Hirabayashi et al., 2016)ほどのストレスは感じていなかったと推測できる。しかし,女児ではコルチゾール反応は示されなかったが,男児のうち,好きではないものをプレゼントされ部屋に一人いるとき,入り口の方向を振り返る行動を示した男児については,コルチゾール反応を示したことから,一部の子どもには生理的ストレスが生じていたと推測できる。コルチゾール反応と子どもの気質との関連については,男女で異なる結果が得られた。男児では,気質の抑制的制御が高いほどコルチゾール反応が大きく,衝動性が高いほどコルチゾール反応が小さいことが示され,児童期の男児では,気質的に抑制制御が高いほど,チャレンジ場面における生理的ストレスが大きい可能性が示唆された。女児では,気質的に楽しいことに集中できるほど,チャレンジ場面での生理的ストレスが大きい可能性が示された。今後は,児童期の子どものチャレンジ課題での生理的ストレスについて,子どもの認知能力,問題行動傾向,養育者の気質や養育行動との関連から分析し,子どもの感情制御の発達を統合的に分析する必要がある。
【付記】本研究発表は,JSPS科研費17H02636の助成を受けている

キーワード
感情制御/コルチゾール反応/対処行動


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