発表

3A-071

子どもの睡眠と視聴覚情報の同期性の知覚と視聴覚統合の関係

[責任発表者] 奥野 晶子:1
[連名発表者・登壇者] 加藤 正晴:1, 板倉 昭二:1
1:同志社大学赤ちゃん学研究センター

 目的
近年,子どもの睡眠の質・量・リズムは脳の発達において非常に重要であることがわかってきた。しかしながら,睡眠の問題がどのように子どもたちの認知に影響を及ぼしているかは,まだ明らかにされてはいない。そこで本研究は,子どもの睡眠リズムと視聴覚情報の非同期と視聴覚統合の関連性について検討した。

 調査対象者
木津川市の保育園に通園する3~5歳児77人を対象とした。参加児童は,木津川市こどもの睡眠リズム改善プロジェクトに参加し,2週間にわたる睡眠ログ(起床・就寝時間などの記録)に基づき,小児科医により,睡眠良好群(A群:n=16)と睡眠不調群(C群:n=37)に分類された。この分類は(1) 10時間の夜間睡眠,(2) 19時から7時までの間に眠ること,(3) 決まった時刻に眠ることの3つに基づいた。

 方法
参加児には,モニターの左右に呈示される映像(一方は音声と映像が一致,他方は音声と映像が不一致)を見てもらい,アイトラッカーを用いてその時の視線計測を行った。刺激は,女性がカメラに向かって,子ども向けの絵本の内容を子どもに語り掛けるように話している約14秒の映像であった(図1参照)。映像からの音声の遅延間隔は,0秒,0.3秒, 0.6秒,1.0秒の4条件であり,参加児には計12個のビデオクリップを見てもらった。

 分析
モニター全体に対する注視時間のうち,視覚と音声が一致していた映像に対する注視時間の割合をデータとして用いた。 2(睡眠判定;睡眠良好A群,不調C群)×4(遅延; 0秒,0.3秒, 0.6秒,1.0秒)×4(年齢;3歳,4歳,5歳,6歳)のANOVAによる解析を行った。

 結果
A群と比べて,C群は音声と映像が一致している映像を見る時間が短かった(図2参照)[F(1,39)=1.923, p=.037]。また,年齢と睡眠判定の交互作用が有意傾向であった[F(3,39)=2.618, p=.028]。特に,4歳と5歳において,A群と比べて,C群は音声と映像が一致している映像の注視時間が短かった(4歳p=.034,5歳p=.028)。

 考察
この結果から,睡眠生活リズムが不調な児は,良好な児よりも,視覚と聴覚情報の同期性への感度が低いことを示唆している。視聴覚情報の同期性への感度は言語能力と関係がある

という研究報告もあり(Righi, Tenenbaum, McCormick, Blossom, Amso, & Sheinkopf, 2018),本結果はこどもの睡眠と言語獲得への影響も今後検討する必要がある。また,睡眠生活リズムの不調な児は,自閉症傾向が高いという研究報告もあり(e.g. Uren, Richdale, Cotton, & Whitehouse, 2019),本研究の結果は,睡眠生体リズムによる分類から,このような視聴覚情報の同期性の知覚課題が,自閉症傾向の診断に適用できる可能性を示すものである。


 引用文献
Uren, J., Richdale, A. L., Cotton, S. M., & Whitehouse, A. J. (2019). Sleep problems and anxiety from 2 to 8 years and the influence of autistic traits: a longitudinal study. European child & adolescent psychiatry, 1-11.

Righi, G., Tenenbaum, E. J., McCormick, C., Blossom, M., Amso, D., & Sheinkopf, S. J. (2018). Sensitivity to audio‐visual synchrony and its relation to language abilities in children with and without ASD. Autism Research, 11(4), 645-653.

キーワード
睡眠/視聴覚統合/視線計測


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