発表

2D-071

青年期における容姿の操作と価値観
大学生女子を対象として

[責任発表者] 佐藤 有耕:1
[連名発表者・登壇者] 鈴木 理央#:2
1:筑波大学, 2:筑波大学卒

 青年期は容姿についての関心が高まる(島,1988)。特に女子青年は,容姿に対する劣等感を抱いている(髙坂,2008)こと,気分を高揚させるための化粧には一定の効果がある(髙坂,2017)ことが指摘されている。見た目を変えるには「化粧」のみならず,「美容整形」,「プチ整形」という方法もあり,若年であるほど興味を有する者は多いが,経験者は5%に満たない(鈴木,2017)。また,その中間の選択肢として,近年では素顔を別人のように変える「詐欺メイク」という化粧法も話題になっている。しかし,これらの容姿の操作を願望レベルで「してみたい」という気持ちはあっても,実際には何らかの抑制要因が働き,「してみる」という行動レベルでは消極的になると予想される。
 そこで本研究では,「美容整形」などを「容姿の操作」とし,大学生女子を対象としてそれらの操作に対する接近・回避要因,容姿の操作に関する価値観,個人特性との関連を検討する。そして,どのような価値観が容姿の操作を促進または抑制しているのかを明らかにすることを目的とする。
方 法
参加者 国立大学1校62名,私立大学3校(17名,47名,36名),私立短期大学1校14名の計5校176名及びGoogleフォームを用いたweb調査による35名を加えた大学1-4年生(順に55,59,58,39名)女子211名に質問紙調査を実施した。平均年齢は20.14(SD=1.26,年齢範囲18-23)才。
質問紙の構成 容姿の操作として「詐欺メイク」「プチ整形」「美容整形」を取り上げ,①容姿の操作に対する肯定度:それぞれの操作に対し,「興味・関心(6件法)」「願望(7件法)」「25歳時にしている可能性0-100%(11件法)」「抵抗の少なさ(6件法)」「一般論(悪いことか良いことか)(6件法)」「親友がすることへの賛否(6件法)」を尋ねた。加えて,②容姿の操作の接近要因・回避要因:予備調査の結果に基づいて独自に作成した12項目,6件法。③容姿の操作に対する価値観:予備調査に基づいて独自に作成した20項目,6件法。④個人特性:公的自己意識尺度(菅原,1984より抜粋),2項目自尊感情尺度(箕浦・成田,2013),容姿に対する劣等感尺度(髙坂,2017),親に対する肯定的感情(佐藤,2015),5件法を用いた。
調査時期 2018年10-11月。調査時に口頭及び質問紙表紙上で,研究協力は任意であること等倫理的配慮について周知し,質問紙は参加者が個別に封をし,封筒に入れて回収された。
結果
1.容姿の操作に対する肯定度
 「興味・関心(6件法)」について回答を1-3,4-6で2分割すると,興味・関心がある割合は「詐欺メイク」「プチ整形」「美容整形」の順に,50.24%,40.28%,24.17%であった。「願望(7件法)」についても回答を1-3,4-6と7で2分割すると,してみたい割合は,順に54.50%,36.02%,19.91%であった。7の“すでにしている”という回答者は7名(3.3%),3名(1.4%),2名(0.9%)であり,鈴木(2017)の結果よりさらに低かった。「25歳時にしている可能性0-100%(11件法)」について,0-4,5-10で2分割すると,している可能性が50%以上あると回答した者の割合は,順に10.90%,13.74%,4.74%であった。
2.容姿の操作に対する接近・回避要因
 容姿の操作ごとに肯定度を合計して従属変数とし(容姿の操作の順にα=.88,.88,.89),因子分析によって得られた接近・回避要因4因子の得点を独立変数とした重回帰分析を行った。
 「詐欺メイク」「プチ整形」「美容整形」の3つの容姿の操作に共通していた接近要因は,コンプレックスや向上心などの「見た目に対する自己価値の低さ(α=.85)」(容姿の操作の順にβ=.66,.67,.68),回避要因はリスクやコストなどの「予期不安(α=.82)」(順にβ=-.27,-.29,-.33)であった。
3.容姿の操作に対する促進・抑制要因
 3つの容姿の操作の肯定度を従属変数,個人特性4因子を第1水準,価値観5因子の得点を第2水準とした重回帰分析の繰り返しによるパス解析を行った。
 3つの操作に共通していた促進要因として,個人特性の「容姿に対する劣等感(α=.90)」(容姿の操作の順にβ=.18,.22,.21),抑制要因として,価値観の「親への申し訳なさ(α=.88)」(β=-.28,-.30,-.35)があった。パス図の解釈からは,容姿に対する劣等感が大きいほど,容姿の操作に対して肯定的になる一方で,親に対して肯定的感情が高いほど,親のことを考えれば顔や体を傷つけるべきではない,という価値観に基づいて容姿の操作に対して否定的になることが示された。そのほか,容姿の操作をすることは公正とは言えないと考えているほど,「詐欺メイク」に対して否定的になり,世の中は見た目重視だと考えているほど肯定的になること,すっぴん美に価値を置くほど「プチ整形」に対して肯定的になり,見た目よりも中身に価値を置くほど,否定的になることが示された。
考察
 容姿の操作は直接的には「自分を良く見せたいから」,「リスクやコストがかかるから」という理由で肯定・否定されるが,親に対して申し訳ない行為だと認識していると否定されるように,容姿の操作に関する価値観が関与していることが示唆された。青年が容姿の操作をためらうことには,リスクやコストなどの現実的な要因だけではなく,自分の体は自分だけのものかという自己所有権の問題にまで関連することが示唆された。
主要引用文献 鈴木公啓(2017).美容医療(美容整形およびプチ整形)に対する態度――経験の有無や興味の程度による比較―― 東京未来大学研究紀要,11,119-129.

キーワード
容姿/化粧法/青年期


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