発表

2D-070

里母と生物学的な母親における母性愛と養育態度の違い

[責任発表者] 黒河内 優美:1
1:東海大学

問題 日本では,非血縁関係の子どもを養育する里母の特徴を検討した実証的研究が少ない。そこで本研究は,里親の母性愛や養育の特徴に焦点をあてる。里母は非血縁関係の子どもを自発的に養育することから,子どもへの快感情や接近動機を含む感情的な母性愛は相対的に高いことが予想される。なお,母性愛は感情的な母性愛だけでなく,性役割観の母性愛もある。江上(2005)は,性役割観の母性愛を「母性愛信奉傾向」と定義した。母性愛信奉傾向は社会背景によって形成される価値観であるため,里母とそれ以外の女性に違いはないと予想される。また,養育について,Lucy et al. (2007)は里母と生物学的な母親を比較した結果,里母の方が良い養育をすることを示した。これは里母への専門的な研修や支援体制が整っていたためだと考察された。これと同様の結果が日本の里母でみられるかは明らかでない。
 以上より,本研究は里母と生物学的な母親を対象に,母性愛と養育態度の違いを検討することを目的とする。仮説1:感情的な母性愛は里母が生物学的な母親より高い。仮説2:母性愛信奉傾向は里母と生物学的な母親で有意差がない。仮説3:良い養育態度は里母が生物学的な母親より高い。
方法 分析対象者 里母33名(平均年齢53.91歳),生物学的な母親55名(平均年齢51.49歳)。 里子は乳児から高校生,生物学的な母親の子どもは全て大学生であった。
 養育態度 養育態度尺度(戸田,2006)を5件法で評定した。下位尺度は,「受容/子ども中心主義」,「統制/専制的」,「一貫性のないしつけ」,「服従的」,「過保護」,「甘やかし」,「放任」の全50項目であった。尚,母親には子どもが乳幼児だった頃を想定して回答させた。
 感情的な母性愛 子どもの写真を見せ,顔の評定尺度(Esposito et al,2014)の「ポジティブな感情を感じる」,「近づきたい」など4項目を6件法で評定した。
 性役割観の母性愛 母性愛信奉傾向尺度(江上,2005)を5件法で評定した。項目は,「母親であれば,育児に専念することが第一である」,「母親の愛情ほど偉大で,気高く無条件なものはない」などの9項目であった。尚,里母に心理的負荷を負わせる恐れのある項目は削除した。
結果と考察 養育態度尺度は因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った。その結果,「統制/ 専制的(α = .83)」(「子どもが長い間,外で過ごすことを認めない」など13項目),「受容/子ども中心主義(α = .82)」(「家で子どもと楽しい時間を過ごす」など9項目),「一貫性のないしつけ(α = .77)」(「子どもを笑いものにしてしまうことがある」など6項目),「服従的(α = .76)」(「子どものいいなりになるほうだ」など5項目)に分かれた。そのため,以下の養育態度の分析はこれら4因子で実施した。
 各尺度でt 検定を行った(Table 1)。その結果,感情的な母性愛(t (83.58) = 2.46,p <.01)は有意であり,里母が高かったため,仮説1は採択された。したがって,里母は非血縁の子どもに関心を向けやすいと考えられる。
 母性愛信奉傾向の差は無かったため,仮説2は採択された。里母と生物学的な母親の平均値は理論的中央値(3点)に近いため,適度な母性愛信奉傾向を持っていると考えられる。
 養育態度の4因子は全て差が無かったため,仮説3は棄却された。里母と生物学的な母親も良い養育態度の「受容/子ども中心主義」の平均値(4点以上)は高く,悪い養育態度の因子の平均値(3点以下)は低かったため,里母と生物学的な母親は共に良い養育態度であると考えられる。
 最後に,本研究は母親が養育する子どもの特性に関する統制に課題が残る。母親の養育態度は,子どもの特性によって変化する可能性がある。特に,里子には虐待を経験して心理的な課題を持つ子どもも多い。また,本研究は里母と生物学的な母親の子どもの年齢も十分に統制できていない。今後は,それらを考慮した検証が必要だろう。
引用文献江上 園子(2005).幼児を持つ母親の「母性愛」信奉傾向と 養育状況における感情制御不全 発達心理学研究,16, 122-134.
Esposito, G., Nakazawa, J., Ogawa, S., Stival, R.,  Putnick, L. D., & Bornstein, H. M. (2014). Using  infrared thermography to assess emotional
 responses to infants. Early Child Development  and Care, 185, 438-447.
Lucy, R., Fox, R. A., & Byrnes, J. B.(2007).
 Maternal characteristics and child problem
 behaviors: A comparison of foster and biological
 mothers. Educational Psychology10,23-42.
戸田 須恵子(2006).母親の養育態度と幼児の自己制御機能 及び社会的行動との関係について 北海道教育大学釧路 校研究紀要, 38, 59-69.
付記 本研究は発表者が平成30年度に静岡福祉大学社会福祉学部へ提出した卒業論文の一部である。

キーワード
社会的養護/養育態度/母性愛信奉傾向


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