発表

2D-068

身振り行動を伴った回転状態の理解における幼児期の変化

[責任発表者] 野田 満:1
[連名発表者・登壇者] 落合 洋子#:1
1:江戸川大学

 問題
 幼児期の子どもは対象物の動きを捉える場合,最初と最後の状態しか捉えないことが知られているが(Piaget & Inhelder,1971),実際にKerr et al.(1980)は中間状態をイメージできないことを指摘し,Quaiser-Pohl(2003)も幼児期の空間検査を開発している。しかし性差研究へと重点を移したこともあり途中の状態について扱われることはなかった。一方で Dean,Gross & Kunen(1987)は,対象の動きを系列化の問題として捉え直している。対象の動きや変化の過程を論理的な順序系列で捉える上で求められる要件として,1)運動それ自体を系列全体の中の中間状態へと分化すること,2)中間状態の空間的つながりや論理的関係を吟味すること,3)回転中の対象の各部分どうしの空間関係を保存すること,を挙げている。しかし順序数としての空間的性質があるので,数の概念形成の文脈の中で扱われることの多い内容だが(山形,2015),対象の動きを伴う点で微細運動と数との関連が近年重要視されてきている(Asakawa & Sugimura,2014; Asakawa et al.,2019)。そこで,本研究はDeanらが扱わなかった中間状態の構成を求める課題を考案し,運動系列が十分に形成されていないとされる幼児期の子どもに実施するとともに,身振り等の動きを捉え,イメージの流れを助ける身体あるいは道具利用の在り方を検討することとした。
 方法
参加児:保育園児(3歳児34名,48.3か月:4歳児44名,平均60.7か月:5歳児33名,平均72.6か月)
傾き課題:カードを用いて対象物の状態を表した。5枚のカードそれぞれに対象物が順次傾く様を表した絵を示した。各カードは0,45,90,135,180度の状態を示す。0度と180度を離して提示し,その途中の3カード分がどのような順番で生じるかを子どもに配置させる課題となる。絵刺激は幼児に親しみがあり,方向手掛かりが明確になるよう工夫したキリンとモグラの絵を用いた。
記録:別に作成した記録用紙にカードの配置を記録し,身体の動き(身体と道具利用)を事象観察の手法で記録した。身体利用は手だけ回転させる場合,指を回す場合,道具利用はカードを重ねる場合とカードを回転させる場合とした。
手続き:ラポールの後,検査者はまずカードを用いて実演した。静止した見本と対応させてカードを回してその回転の動きを見せた。子どもに練習を行わせ理解を促してから本検査を実施した。本検査では0度と180度の間に3枚配置できるスペースを設け,カードをシャフルして子どもに渡した。尚,遂行にあたり学内倫理委員会の審査を受けた。
 結果
傾き課題:正しい向きと配置に1点を与えた(0~3点)。年齢×刺激条件の分散分析の結果,年齢の主効果が認められた(p <.01,η2 =.24)。交互作用が認められたので,多重比較したところ,キリン条件で図1に示したように3,4歳から5歳にかけて成績が上昇した(p <.05)。一方モグラ条件では年齢群ごとに成績が上昇した。
身体の動き:各事象について独立性の検定を行った。身体利用での年齢差は認められなかったが,少数が身体利用をしていた(0~10%)。一方,対象操作を行った動きにおいて,図2に示すように,キリン条件では年齢とともに何もしない子どもは減少し(p <.05),カードを回す子どもが順次増加した(p <.05)。モグラ条件では年齢差は認められなかった。
 考察
 中間状態の表象を得ることの難しい幼児期において,本研究で用いた課題により3,4歳から5歳にかけての急速な変化を捉えることが出来た。なんらかの質的違いがあるようだ。一方で身体利用は少ないながら確認でき,身体へのイメージの転写が予想される。また動きを伴う空間的なイメージのシミュレーションに,役立つと思われる道具利用は年齢に従い増加した。おそらくイメージ補完の利用に気づき,回すことによる確認作業を行おうとする年齢に達したものと推測される。傾き課題での成績変化は道具利用が大きな要因となっていると考えられた。
 本研究は江戸川大学学内共同研究費,科研費(課題番号19K11603)の助成を受けた。

キーワード
傾くイメージ/身振り/道具利用


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