発表

2D-067

円・三角形の一筆描きにみられる描線動作の文化的特徴(4)
日本と台湾の小学生を対象とした比較文化的研究

[責任発表者] 田口 雅徳:1
1:獨協大学

目 的
これまでの一連の研究(田口, 2017a; 田口, 2017b)において,日本,中国,台湾の大学生を対象として円や三角形の描線動作を検討してきた。その結果,これら漢字圏の大学生では,円の描画においても,三角形の描画においても,描線動作に多くの共通特性がみられることが明らかとなった。すなわち,円の描画では円の左下あたりから時計回りに描く反応が多く,また円を上側から描くときには時計回りに描く反応と反時計回りに描く反応に二分されることがわかった。さらに,三角形の描画では,上の頂点から反時計回りに描く反応が大半であることが示された。
このような漢字圏の大学生にみられる描線動作の特徴は,本格的に文字学習が始まる小学校低学年の段階からもみられるのだろうか?本研究では日本と台湾の小学1~2年生を対象とし,円や三角形などの図形の一筆描き課題を実施して,描線動作の特徴を比較検討することとした。
方 法
被験者:日本の小学1年生21名,小学2年生16名,台湾の小学1年生10名,小学2年生26名を本研究の分析対象とした。どの被験児も日常的に右手で書字をしていた。
手続き:実験は個別法であった。ただし,台湾の児童を対象とした実験では,実験者の他に通訳も同席した。実験では,事前に円や三角形などの図形が点線で描かれた用紙を配布し,各図形をそれぞれ任意の位置から自由に一筆でなぞり描きするように教示した。実験者は図形ごとに各被験児の描画開始位置および描画方向を記録した。円描画における描画開始位置は,時計の文字盤(1~12)をもとに12分類した。三角形の描画における描画開始位置は3つの頂点(上・左下・右下)のいずれかであった。描画方向は各図形を描くときの手の動きであり,“時計回り”と“反時計回り”の2分類とした。
倫理的配慮:各被験児には,まず文書により実験内容の概要を説明した。そして,実験への参加は拒否できること,実験に参加しても途中で中止できることなどを説明した。その後,実験参加に同意した被験児に対してのみ実験をおこなった。
結 果
円および三角形の描画開始位置と描画方向の反応頻度を示したのがTable1およびTable2である。
 円描画課題では(Table1),台湾の小学2年生において有意な結果が得られ(p=.015),また日本の小学2年生でも有意傾向がみられた(p=.070)。いっぽう,台湾,日本とも小学1年生では有意な結果は得られなかった。小学1年生では描画開始位置が円全体にばらける傾向があるのに対して,小学2年生では円の上側(時計の文字盤の11-12時)に描画開始点をとる傾向がみられ,さらに,そこから時計回りに描く反応と,反時計回りに描く反応に二分れることがわかった。また日本の小学2年生で円の左下から時計回りで描く反応も多かった。
つぎに,三角形描画課題の結果をみると(Table2),日本の小学1〜2年でも,台湾の小学1〜2年生でも,三角形の上の頂点に描画開始位置をとり,そこから反時計回りに描く反応が多かった。また,そうした描画反応は日本よりも台湾の児童に多くみられ,統計的検定をおこなったところ,いずれの学年でも日本と台湾の児童の間で有意差がみられた(1年生χ2(1)=7.03,p<.001;2年生χ2(1)=3.97,p<.05)。
考 察
円描画課題の結果では,日本でも台湾でも小学2年生になると大学生と同様の描画反応が増えることが示された。また,三角形描画課題の結果では,小学1年生から大学生と同様の描画反応が多くみられた。ただし,そうした描画傾向は台湾の児童の方が日本の児童よりも強いことも示され,これには日本と台湾の児童における漢字使用頻度の違いが関係していることが推察された。
引用文献 
田口雅徳(2017a) 円・三角形の一筆描きにみられる描線動作の文化的特徴(2):日・中大学生を対象とした比較文化的研究 日本発達心理学会第28回大会発表論文集 
田口雅徳(2017b) 円・三角形の一筆描きにみられる描線動作の文化的特徴(3):日・台大学生を対象とした比較文化的研究 日本心理学会第81回大会発表論文集 

キーワード
比較文化/描線動作/漢字


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