発表

2D-065

乳児期の睡眠・覚醒リズムと感覚運動機能の関連
月齢3ヶ月から6ヶ月までの縦断研究

[責任発表者] 成瀬 茉里香:1
[連名発表者・登壇者] 中川 敦子:1, 宮地 泰士#:2, 瀬尾 智子#:3
1:名古屋市立大学, 2:名古屋市西部地域療育センター, 3:緑の森こどもクリニック


 目 的
 乳児は生後2か月頃から,睡眠と覚醒がそれぞれ夜間と昼間の時間帯に集中するようになり,生後3~4か月頃までにほぼ安定した睡眠・覚醒リズムを形成していく。乳児期の睡眠がヒトの高次脳機能の発達過程に関与することは,発達性精神・神経疾患(自閉症,レット症候群,トウレット症候群)の発症とそれに関与するアミン系神経系の特異性の関連から指摘されてきた(瀬川,2004)。アミン系神経系の発達は,睡眠要素やロコモーションの発達に深く関わることから,乳児期の睡眠と感覚運動機能には関連がみられると考えられるが,用いられる睡眠および感覚運動機能の個人指標が様々であること,対象月齢が様々であったことなどから,これまで両者の関係について一貫した結果が得られているとは言い難い(総説,Ednick,2009)。
 また,近年の出生時コホート研究(奥村・高貝,2016)では,生後10か月時の就寝時刻と,生後10,14,18,24か月時の神経発達(Mullen Scales of Early Learningスコアによる)の関連を潜在成長曲線モデルで検討した。その結果,遅く寝る子どもほど粗大運動や微細運動が発達しにくいと報告している。しかし一方で,乳児期に夜間の睡眠時間が長いことや,断続的な睡眠が必ずしも発達に良い影響を及ぼすとは限らないという報告(中川・鋤柄,2016 : Mäkelä et al.,2018)もあり,乳児の睡眠と感覚運動機能の発達については,さらなる検討が必要と考えられる。特にこれまでの研究では,乳児期後半以降における検討が多く,乳児期前半の睡眠・覚醒リズムと発達予後とを検討したものは少ない。そこで本研究では,睡眠・覚醒リズムの形成段階にある月齢3か月から6か月にかけて,睡眠と感覚運動機能の関連を明らかにするための縦断研究を行った。睡眠は加速度センサー(アクチグラフ)を用いて調べ,感覚運動機能は,月齢6か月時点で確認できる9項目の質問紙を用いた。なお本研究は名古屋市立大学研究倫理委員会の承認を得て行われた。
 方 法
 研究協力者 A県内のNクリニックの小児科外来とH水泳教室で研究参加の同意を得た30名で,そのうち在胎週数が37週未満であった1名を分析対象から除外した(総数: 29,男児: 17,女児: 12)。在胎週数は38~41週(平均39.38週),出生体重は平均3,088.34gであった。
 測定装置 腕時計型小型高感度加速度センサー(米国A.M.I.社製アクチグラフ,マイクロモーションロガー時計型)を用いた。
 調査用紙 月齢6か月: 対象児の感覚運動機能等について10項目に回答を求めた(うち1項目は今回の分析から除外した)。質問項目内容は,寝返りの頻度とそのパターン,リーチングの頻度,抱かれた時の力の入り具合,左右の視性立ち直り反射,癇癪の頻度,空腹時欲求の程度,哺乳時の吸いつきの程

度であり,これらは乳幼児の発達臨床に詳しい療育機関医師らが作成した。分析時には大きい値が良好を示すよう操作し用いた。
 手続き 研究協力者(以下,対象児)は月齢3,4,6か月の最初の5日間,原則片方の足首にアクチグラフを装着したまま生活した。対象児の装置装着中,養育者には,1日24時間を1時間毎に区分した記録用紙に,アクチグラフの装着開始時刻,装着終了時刻,取り外し時間帯,睡眠時間帯の記入を依頼した。月齢6か月には調査用紙への回答を求めた。睡眠の個人指標として,夜間期(20~8時)および昼間期(8~20時)の,動睡眠時間,睡眠時間,睡眠効率,最長覚醒時間をとった。
 結 果
 まず,夜間期および昼間期の動睡眠時間,睡眠時間,睡眠効率について,月齢を要因とした一要因分散分析を行った。その結果,昼間期の睡眠効率以外のすべての指標で月齢の主効果が認められた。動睡眠時間(夜間期)では月齢3,4か月と6か月,睡眠時間(夜間期)では月齢3か月と4,6か月の間に有意差がみられた。動睡眠時間(昼間期),睡眠時間(昼間期),睡眠効率(夜間期)ではすべての月齢間で有意差が見られ,動睡眠時間(昼間期)と睡眠時間(昼間期)は減少,睡眠効率(夜間期)は増加していた。
 次に,乳幼児の睡眠・覚醒リズムと感覚運動機能との関連を検討するために,相関分析を行った。月齢3か月では,睡眠効率(昼間期)と哺乳時の吸い付きの程度に正の相関(r=.428, p<.05)が認められた。月齢4か月では,動睡眠時間(昼間期),睡眠時間(昼間期)と視性立ち直り反射(右)に正の相関(r=.401, p<.05 ; r=.369, p<.05),最長覚醒時間(昼間期)と視性立ち直り反射(左・右)にそれぞれ負の相関(r=-.594, p<.01 ; r=-.487, p<.01)が認められた。月齢6か月では,睡眠効率(昼間期)と寝返りのパターンに負の相関(r=-.429, p<.05), 睡眠効率(夜間期)と寝返りの頻度に正の相関(r=.550, p<.01)が認められた。
 考 察
 今回,月齢4か月では昼間の睡眠が月齢6か月の一部の感覚運動機能と正の関係,昼間の覚醒が負の関係にあった。一方,月齢6か月では夜間の睡眠が寝返りの良い結果と,昼間の睡眠が悪い結果と関連していた。つまり,月齢6か月時点では成人と同様の,夜によく寝て日中は覚醒しているという睡眠・覚醒リズムが感覚運動機能の良好な発達と関連すると言えるが,月齢4か月のような乳児期前半では逆に,成人と同様の睡眠・覚醒リズムは必ずしも発達に良い影響を及ぼす睡眠であるとは言えず,むしろ,まだリズムができていないことが良好な発達であると言えるかもしれない。今後,対象児の発達予後についても検討を進め,乳児期前半と後半では良好な睡眠が異なる可能性を明らかにしたい。
謝辞 本研究はJSPS科研費(17K18710)の助成を受けた。

キーワード
乳児/睡眠・覚醒リズム/感覚運動機能


詳細検索