発表

2C-055

自己決定理論に基づく父親の育児意欲尺度の作成

[責任発表者] 大内 善広:1
[連名発表者・登壇者] 野澤 義隆:2, 萩原 康仁:3
1:城西国際大学, 2:東京都市大学, 3:国立教育政策研究所

目的
 父親の育児参加に関する社会的関心は高まってきており,どのように父親の育児参加を促せば良いかについては重要な課題となっている。父親の育児参加は,例えば母親の育児ストレスやマルトリートメント(不適切な養育)の軽減にも関連があり(大内・野澤・萩原,2014),母親の精神的健康や子どもの健やかな育ちにとって重要であることが指摘されている。また,北村ら(1999)の調査では,母親が父親の主体的な育児参加を求めていることが示されている。しかし,主体的に育児に参加している父親ばかりであるとは考えられず,例えば母親が主体となり,父親は母親の指示に従って育児を手伝っているような状況も想定できる。
 こうした父親の育児参加への主体性を測定する尺度は知る限り開発されていない。そこで本研究では,父親の育児参加への主体性を測定する尺度を,自己決定理論(Ryan & Deci, 2002)の有機的統合理論に基づき作成を試みる。
方法
調査方法 調査は2019年2月にマクロミル社に依頼しインターネット上で行った。未就学児の子どもがいる,父母子どもが皆同居している家庭という条件でスクリーニングを行い,412件の有効なペアデータが得られた。
育児意欲尺度 Hayamizu(1997)や西村・河村・櫻井(2011)の学習意欲尺度を参考に,育児に関して「外的調整」「取り入れ的調整」「同一視的調整」「内的調整」に相当すると考えられる項目をそれぞれ7項目ずつ,計28項目を作成した。「あなたが育児をする理由として,それぞれの文章がどれくらいあてはまりますか。それぞれ,最も自分の考えに近いものをお選び下さい。」という教示文で「1.とてもあてはまる」から「5.全くあてはまらない」の5件法にて父親に回答を求めた。
育児自己効力感尺度 育児自己効力感尺度(田坂, 2003)14項目を6件法にて父親に尋ねた。育児自己効力感尺度の3因子(「子どもへの積極的関わりの自信(6項目)」,「子どもを安堵させる自信(6項目)」,「子どもを自己統制させる自信(3項目)」)の尺度得点を用いた。
夫婦ペアレンティング調整尺度 夫婦ペアレンティング調整尺度(加藤・神谷・黒澤, 2014)14項目を6件法にて母親に尋ねた。夫婦ペアレンティング調整尺度の2因子(「促進(9項目)」,「批判(7項目)」)の尺度得点を用いた。
結果と考察
 本研究では,Mplus(Ver. 8. 2; Muthén & Muthén, 1998-2018)を使用し,ESEMの枠組みで分析した。まず,育児意欲尺度28項目に対する父親からの回答に関してカテゴリカル因子分析を行った。推定にはWLSMV,因子の回転法はobliminを用いた。因子数は4因子を想定していたが,3因子解から5因子解までの結果を検討したところ,解釈可能性から3因子解を採択した。各項目の因子負荷量の最大値が.50に満たない項目を削除して分析をし直した結果,最終的に25項目が残り,Table 1のような結果が得られた。なお,適合度指標はRMSEA=0.093,CFI=0.950となった。
 第1因子は全て「外的調整」を想定した項目,第2因子はほとんどが「同一視的調整」「内的調整」を想定した項目,第3因子は全て「取り入れ的調整」を想定した項目で構成され,それぞれ「外的調整」「同一視的・内的調整」「取り入れ的調整」因子とした。各因子の内的整合性を検討するために信頼性係数αを算出したところ,それぞれ.871,.943,.767であり内的整合性には概ね問題はないと判断できた。
 次に,育児意欲尺度の構成概念妥当性を,因子間相関および育児自己効力感尺度,夫婦ペアレンティング調整尺度との相関によって検討したところ,Table 2のような結果が得られた。因子間相関はシンプレックス構造の傾向が見られ,自己決定理論に基づく自律性に関する連続性を持つ因子構造であると解釈できる。また,同一視的・内的調整因子は夫婦ペアレンティング調整尺度における妻の夫への促進と正の相関,批判と負の相関が見られ,外的調整因子とは真逆の傾向が見られた。このことから,父親の育児参加に対する主体的について今回作成した育児意欲尺度で測定できていると解釈できる。また,同一視的・内的調整因子は自己効力感とも正の相関があった。以上より,作成した尺度の構成概念妥当性についても確認できたと考えられる。

詳細検索