発表

2C-054

様々な誤信念課題の比較
位置移動タイプ,予期せぬ中身タイプと明示的な誤信念課題

[責任発表者] 東山 薫:1
1:龍谷大学

目 的
 心の理論(theory of mind)とは,「自己および他者の知識,信念,思考,疑念,推論,ふり,好み,目的,意図,の内容を理解すること」,もしくは,「個人が自分自身,もしくは他者に心的状態(mental states)を帰属させること」と定義されている(Premack & Woodruff, 1978)。心の理論の有無は,誤信念課題を通過できるか否かで論じられ,メタ分析が行われたことにより,生後44か月になれば半数以上の子どもが通過できることが明らかになった(Wellman, Cross,& Watson, 2001)。その後,Wellman & Liu(2004)によって,考案された心の理論課題では,予期せぬ中身タイプの誤信念課題と明示的な誤信念課題が用いられている。様々な誤信念課題が実施されているが,その発達は同じであろうか。本研究では,幼児を対象に様々な誤信念課題を実施し,その成績について比較することを目的とした。

方 法
調査対象者:3歳2か月~6歳9か月(M=5歳4か月,SD=14.78)の幼児31名(女児13名,男児18名)を対象とした。
調査内容:
(1) 心の理論課題における予期せぬ中身タイプの誤信念課題:バンドエイドの箱の中にブタのおもちゃが入っているのを見た子どもが,それを知らない登場人物が箱を外から見ただけだったら中に何が入っていると答えるかを問う課題。
(2) 心の理論課題における明示的な誤信念課題:登場人物の手袋は本当はリュックサックの中に入っているが,登場人物はタンスの中に入っていると思っていることを子どもに明示し,登場人物は手袋を見つけるためにどちらを探すかを問う課題。
(3) 位置移動タイプの誤信念課題A:ケーキを冷蔵庫にしまった登場人物Aがいない間に,登場人物Bがケーキを冷蔵庫から食器棚に移動してしまった後,帰ってきた登場人物Aはケーキを食べようとどちらを探すかを問う課題
(4) 位置移動タイプの誤信念課題B:自分のピンクの箱にブロックを入れた登場人物Aがいない間に,登場人物Bがブロックを自分のブルーの箱に移動させてしまった後,帰ってきた登場人物Aはブロックで遊ぼうとどちらを探すかを問う課題
(5) 予期せぬ中身タイプの誤信念課題:ポテトチップスの箱の中にペンが入っているのを見た子どもが,それを知らない登場人物が箱を外から見ただけだったら中に何が入っていると答えるかを問う課題。
(6) PVT-R(上野・名越・小貫,2008):4コマの絵の中から,検査者の言う単語に最もふさわしい絵を選択させ,語彙発達年齢を測定。
得点:心の理論課題では,記憶質問とターゲット質問を正解すれば2点を与え,記憶質問は正答するがターゲット質問に誤答する場合は1点,他は0点とするため,すべての誤信念課題においてこの方法で得点を算出した。

結 果
(1) 生活年齢と誤信念課題との関連
それぞれの誤信念課題と生活年齢は有意な正の相関が認められた。すなわち,年齢が上がるにつれてどの誤信念課題も正答率が上がった。しかし,相関の強さは一様ではなく,心の理論課題における明示的な誤信念課題は5%水準で有意な正の相関が認められ,他の誤信念課題は1%水準で有意であった。
(2) 語彙発達年齢と誤信念課題との関連
 それぞれの誤信念課題と生活年齢は有意な正の相関が認められた。すなわち,語彙発達年齢があがるにつれてどの誤信念課題も正答率が上がった。
(3) 各誤信念課題間の相関と生活年齢,語彙発達年齢を統制した偏相関
 まず,各誤信念課題の相関を見たところ,Table 1のようになった。心の理論課題における明示的な誤信念課題はどの誤信念課題とも有意な相関が認められず,それを除く誤信念課題はそれぞれ有意な正の相関が認められた。

考 察
本研究では,幼児を対象に様々な誤信念課題を実施し,その成績について比較を行ったところ,心の理論課題における明示的な誤信念課題のみが他の誤信念課題と異なる性質を持つ課題であることがわかった。

キーワード
心の理論/誤信念課題/幼児


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