発表

2C-052

製作遊び場面における幼児の注意喚起行動の行動目録

[責任発表者] 廣瀬 翔平:1
[連名発表者・登壇者] 園田 和子#:2, 園田 裕紹#:3
1:立命館大学, 2:せっつ遊育園, 3:とりかいひがし遊育園

目的
 幼児の日常場面において,友人や大人の注意を自身に向けさせようと「みて」・「みてて」といった発話,もしくはそれと同義な行動がよく観察できる。これらは,注意喚起行動(Attention-Seeking Behaviors 以下, A-S行動)と呼ばれ,集団生活場面での事例観察による先行研究では,他者からの承認を得るために機能すること,友人関係での共感的な機能についても考察されている(福崎,2006)。しかし,保育場面では,A-S行動があまりにも日常的であり,わざわざ焦点化されない(福崎,2006)こと,それに伴って,幼児が行うA-S行動自体についての知見が不十分であるという課題がある。そこで本研究では,このようなA-S行動に注目し,製作遊び場面での幼児のコミュニケーションの観察を行う。観察場面として,製作遊び場面を選択するのは,同じ空間で,自分と友人が同じテーマで似たようなものを作るため,作ったものを見せ合うことや先生に作ったものを見てもらおうとすることが起こる。これらは先に挙げたA-S行動の機能と合致するものであり,A-S行動の研究知見を蓄積するには適した観察場面であると考えられるからである。
 以上のことから本研究では,製作遊び場面の観察を通して,幼児間もしくは幼児-先生間でのコミュニケーションにおけるA-S行動を分析する。その結果から,A-S行動が製作遊び場面では,どのような形でみられ,どういった機能を果たすのか,またA-S行動をきっかけにその後どのようなコミュニケーションが生じるかを明らかにする。
方法
観察対象者 A市内にある認定こども園の3歳児クラスを対象とし,製作遊び場面で同じ机に着席している3歳児クラスの幼児5名と製作遊び場面に関わる保育者を観察した。製作遊びは,複数の机に5-6名ずつ座っており,この座る位置と座るグループは,朝の会やお昼ごはん,おやつなど全員が着席する必要のある場面では,基本的に固定となる。
観察方法 観察は,行動サンプリングの連続記録で行なった。製作遊び場面の記録には,ビデオカメラ (SONY社製 HDR-CX680) を使用した。記録は,製作遊びの準備が完了し,幼児が製作遊びを開始した時点から,作っているものが出来上がり,片付けが始まる直前まで行った。このビデオカメラでの記録から,幼児が行ったA-S行動について(誰が,誰に向けて,注意の対象,使用した方法,注意喚起の成功失敗,注意喚起行動後の行動)取り出し分析考察を行った。
 また,観察者は,20xx年より週1回程度,8:00-17:00の時間帯で保育場面に参与し,幼児と関わりをもち,園生活になじむようラポール形成を行なった。
倫理的配慮 研究の目的と方法,データの取り扱いなどについて,園長会と教諭全体への研究説明,保護者会での承諾を得た上で行なった。
結果と考察
 観察を行った4事例の製作遊び場面を分析対象とした。観察事例のうち,「完成したものをみてもらうためのA-S行動」,「製作がうまくいかない時に先生を呼ぶためのA-S行動」の2つのA-S行動を詳細に書き出した。
 完成したものをみてもらうためのA-S行動として,「できた」,「かけた」といった完了報告,完了報告と同時に手で作ったものを掲げて提示,「先生」,「みて」といった呼びかけ,呼びかけと同時に手で作ったものを掲げて提示,またこれら4種類と同時に注意を引きたい相手の方に身体を向ける動作が加わった合計8種類に分類された。また,製作がうまくいかない時に先生を呼ぶためのA-S行動として,「できない」,「無理」といった状況報告,状況報告と同時に先生の方を向く行動,「先生」といった呼びかけ,呼びかけと同時に先生の方を向く行動,の4種類に分類された。
 1人の幼児が先生もしくは友人に完成したものをみせようとA-S行動を行い,応答が得られた場合,同じ机の別の幼児もA-S行動を行う,A-S行動の連鎖が観察できた。これは,先行研究でも示されている他者からの承認を得るために機能によるものであると考えられる。また,これらの観察事例の中で,幼児間での自分のつくったもので表現したい内容について他児に説明し,それらに応答し,自分のつくったもので表現したい内容の説明を返すという,連続した相互的なコミュニケーションがみられた。これは,A-S行動には自己表現の媒介としての機能を有すると考えられる。観察事例を増やすことで,このような自己表現のきっかけとしてのA-S行動が,生起しやすい条件を検討することで,今後,保育場面への教育支援としての応用可能となると考えられる。
 A-S行動の結果,応答が得られなかった事例について,完成したものをみてもらうためのA-S行動では,気づいてもらえるまでA-S行動を続ける,呼びかける対象を変える,一旦あきらめ改めてA-S行動する,という場面が観察された。また,製作がうまくいかない時に先生を呼ぶためのA-S行動のうち,呼びかけたが助けが得られない際の行動であった。先生が気づいてもらえるまで,呼びかけを続けるパターン,ずっと先生の方を向きつづけるパターンや諦めて作業に戻るパターンが観察された。
 本研究では,3歳児クラスの事例のみをとりあげA-S行動,他の年齢クラスの事例は観察を行わなかった。しかし,他の年齢クラスの事例についても同様の観察をすることで,年齢によるA-S行動の特徴が発達的にどのように変化するかを示すことができるため,今後の課題である。
引用文献
福崎淳子 (2006). 園生活における幼児の「みてて」発話−自他間の気持ちを繋ぐ機能− 相川書房

キーワード
注意喚起行動/製作遊び場面/行動目録


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