発表

2C-051

幼少期の褒められる・叱られる経験がレジリエンス,保育観に及ぼす影響

[責任発表者] 佐々木 真吾:1
1:名古屋女子大学

親の肯定的養育態度は子どもの情緒や社会性の発達を促すことが知られている(e.g., 浅野ら, 2016)。これらの先行研究では,親の養育態度は,一般的な子どもとの関わり方を尋ねることで判断される(例えば,「悩み事を真剣に聞く」「子どもが悪いことをしたら叱る」など)。しかし,子どもの行動の中には,意図せず好ましくない結果を引き起こしてしまう行動もあり,褒めるか,叱るかが曖昧な状況が多く存在する。本研究では,褒めるか,叱るかが曖昧な状況における親の養育態度に焦点を当てる。これにより,子どもが引き起こす行動の価値が曖昧な状況であっても,肯定的養育態度が子どもの情緒や社会性の発達を促すのか否かを検討する。とりわけ本研究では,養育態度がレジリエンス及び保育観の発達に及ぼす影響を検討する。レジリエンスは困難な状況であっても適応的に生きる能力であり,その発達には親の養育態度との関連が指摘されている(葛西・藤井, 2013)。また,保育観は子どもとの関係性のあり方に関する認識であり,幼少期の親の関わり方が影響することが推測される。
方法
参加者と手続き 大学生99名に,個別に回答してもらった。
質問紙 (1)褒められる・叱られる経験を測定する質問 日常生活で出会うであろう褒められるか,叱られるかが曖昧な場面を4つ設定した(①かけっこの際にゴール直前で転んでしまった,②友達におもちゃを譲ったけど片付けの時間だった,③お手伝いをしたくて勝手にした,④親の大切なものを壊したが素直に話した)。これらの場面について,幼少期に親から褒められた程度,叱られた程度をそれぞれ5段階で回答してもらった。
(2)レジリエンス尺度 大石・岡本(2009)のレジリエンス尺度を用いた。この尺度は,内面共有性(6項目:迷っているときは人に聞いてもらいたいと思うなど),楽観性(4項目:何事も良いほうに考えるなど),内省性(6項目:困ったことが起きるとその原因を考えるなど),遂行性(4項目:やり始めたことは最後までやるなど)の4因子から構成される。それぞれについて,自分に当てはまるかどうかを4段階で回答してもらった。
(3)保育観尺度 館林・宮沢(2015)の保育観尺度を用いた。この尺度は,管理的保育観(3項目:子どもはほっておくと何をするかわからないなど),協調的保育観(3項目:子どもの主張はよく聞くべきだなど),子ども中心保育観(3項目:子どもが喜ぶことをおとなはすべきだなど)の3因子から構成される。それぞれについて,自分の考えに当てはまるかどうかを5段階で回答してもらった。
結果と考察
褒められる・叱られる経験の回答別に4場面の合計点を算出し,平均値を求めた。その上で,各経験で平均値よりも得点が高かった者を高条件,低かった者を低条件とし,(a)褒高・叱高群,(b)褒高・叱低群,(c)褒低・叱高群,(d)褒低・叱低群の4群を作成し,レジリエンス及び保育観の各尺度得点について分散分析を行った。
(1)レジリエンス(Table1) 内面共有性は褒高・叱低(21.54)>褒低・叱低(18.65)であり,内省性は褒高・叱低(20.81)>褒低・叱低(18.18)であった(順に,F (3, 80) = 3.62, p < .05; F (3,80) = 3.10, p < .05)。このことから,幼少期に褒められる程度が多く,叱られる程度が少ない人ほど,褒めも叱られもしない人に比べ,他者と思いを共有する態度や,自己を振り返る態度が身につくといえる。また,遂行性で有意傾向があり,褒高・叱低(12.85)>褒低・叱高(11.16)であった(F (3,80) = 2.47, p < .10)。幼少期に褒められる程度が多く,叱られる程度が少ない人ほど,褒められる程度が少なく,叱られる程度が多い人よりも,何事にも諦めない態度が身につくと言える。
(2)保育観(Table2) 協調的保育観は褒高・叱低(14.50)>褒低・叱高(13.53)であった(F (3,80) = 2.90, p < .0.5)。幼少期に褒められる程度が多く,叱られる程度が少ない人ほど,褒められる程度が少なく,叱られる程度が多い人よりも,子どもの自主性を重視する保育観が身につくといえる。
価値が曖昧な場面であっても,褒められるという自己を肯定的に受け入れてもらえる体験が社会性や情緒の発達につながることが示唆される。

キーワード
養育態度/レジリエンス/保育観


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