発表

2B-075

児童間の話し合いにおける教師の助言的介入
話し合いのスキルと感情的側面への気付きを促す介入の2時期の変化に着目して

[責任発表者] 岩田 美保:1
[連名発表者・登壇者] 佐藤 翔#:2
1:千葉大学, 2:千葉大学教育学部附属小学校

目 的
 学級での話し合い場面は,児童たちが意見を交換し合い,関係性を調整しながら発話を生成していく場といえる(藤江,1999)。しかし,話し合いの初期段階では,児童たちの話し合いのスキルが必ずしも十分とは言えず,教師はそれに対しフィードバックを含むさまざまな助言的介入を行っていることが推察される。他方で,調整的な話し合いでは,学級成員の多様な感情的側面をふまえことも必要であり,教師の助言的介入には,そうした観点からの指摘も含まれることが想定される(Saarni,2009,等)。こうした教師の助言的介入は,児童たち自らが主導となる話し合いが成立する過程において,変化しつつ,重要な役割を果たしている可能性がある。本研究はこうした観点から,6年生学級での話し合いについて,話し合い開始期(5月~6月)と,話し合いに一定程度慣れてきた中盤期(9月~10月)において,児童の話し合いに関わるスキルや,感情的(心理的)側面への気づきを支え得る,教師の介入やフィードバックを含む助言的介入の内容が両時期にどのように変化するかという点に着目し,検討を行う。

方 法
研究協力者:首都圏にある小学校の6年生の1クラス(39名学級),担任は30代の男性教諭。
観察内容: 201X年5月~6月および,9月~10月に行われた,6年生学級での特別活動での話し合い(40分)各4回(計8回)について分析対象とした。教師は皆が対等で認め合える自治的な学級を志向しており,最終的には児童間で自主的な進行ができることを意図し指導にあたっていた。
分析:話し合いの音声・映像記録からプロトコルデータを作成し,教師の発話に基づきその介入内容について分析を行った。
結果と考察
 Table1に,開始期と中盤期における児童の話し合いへの教師の介入の内容について示した。
1) 開始期(5月~6月)の介入内容
 開始期では【話し合いルール】についての介入(23.8%)の他,【議題の種類】や【議題の選定】,【話し合いの流れ】,【話し合いの論点】等,【決定方法(技術)】を除くすべての介入がみられ,話し合いのスキルを高めるための幅広い介入が行われていたことが窺われた。これらは,同時期に児童たちが話し合いの中で困難を抱えていた部分とも捉えられる。フィードバックについても,【話し合いの流れ】や【決定方法】に関するものが順に44.4%,33.3%を占め,同時期の児童たちがそれらに課題を抱えながら話し合いの運営を行っていたこと,また,教師もそれに着目していたことが推察される。一方,フィードバックのうち,肯定的評価を伴うものについても【話し合いの流れ】や【決定方法】に関するものがみられた。同時期の児童たちが,それらのスキルを中心に,自主的な話し合いの運営のスキルを身に着け始めており,それが教師によって評価もされていることが窺われた。
2)中盤期(9月~10月)の介入内容
 中盤期では【話し合いの流れ】に関する介入が半数以上を占めた(53.0%)。これは,学級や個人のうち,誰の問題として考えるかといった帰属の捉え方が難しい議題もみられるようになり,児童たちがそうした話し合いの進行に難しさを抱える中で,教師の介入がそれらに焦点化される形でなされたことの影響が窺われた。フィードバックについては,そうした【話し合いの流れ】に関するもののほか,【話し合いの論点】,【感情的側面】が順に25.0%,33.3%を占めたことは,開始期とは異なる様相であり,当事者や学級の意向や感情を反映しながら議論をどのような論点に基づいて進めていくかについて,教師のフィードバックがよりなされるようになってきたことが窺われる。他方で,【決定方法(技術)】といった多数決の選択肢に番号を振ること等を含む,技術的な側面への介入やフィードバックもみられるようになった(順に5.9%,25.0%)。中盤期には,議論や決定を進めことをより円滑にし得る,そうした細かな技術的要素についても焦点があてられるようになってきたことが窺われる。また,フィードバックのうち,肯定的評価を伴うものについては,開始期と同様に【話し合いの流れ】(75.0 %),【決定方法】(25.0% )に関してみられた。開始期に続いて,児童がそれらを話し合いの基本的なスキルとして受け止め実践しており,教師がそうした状況を肯定的に評価している様子が窺われた。
3)【感情的側面】への介入
 2時期を通じ,【感情的側面】に関わる介入及びフィードバックが一定程度(11.1%~25.0%)を占めた。学級やその構成員のさまざまな感情的側面を考慮した話し合いの展開や終結には,一定の限界もみられ,それが教師のフィードバックによって取り上げられ,気付きを促す試みがなされていることが窺われる。これらは感情コンピテンスの発達においても重要な機会となることが推察される。
【本研究は2018年度科学研究費補助金(基盤研究C,研究代表者,岩田美保)の助成を受けて行われた】

キーワード
児童/学級での話し合い/感情コンピテンス


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