発表

1EV-081

高齢期において日々の感情は年を経ても安定しているーー測定バースト日誌調査ーー

[責任発表者] 中川 威:1,2
[連名発表者] 安元 佐織#:3, [連名発表者] 樺山 舞#:3, [連名発表者] 松田 謙一#:3, [連名発表者] 権藤 恭之:3, [連名発表者] 神出 計#:3, [連名発表者] 池邉 一典#:3
1:国立長寿医療研究センター/日本学術振興会, 2:日本学術振興会, 3:大阪大学

目 的
 幸福感は成人期にわたり長期的に安定する一方,幸福感の諸要素のうち,とりわけ感情は短期的に変動する。若年者と高齢者を比較した横断研究では,感情の変動の程度と関連要因に年齢差があることが示唆されている。しかし,感情の短期的変動と長期的変化との関連を検討した縦断研究は希少である(Röcke & Brose, 2013)。本研究は,測定バーストデザイン(Sliwinski, 2008)を採用し,2年間3時点で各時点7 日間にわたって収集したデータを用い,高齢期において日間隔で測定した感情が年間隔でどう変化するか記述した。
方 法
 分析対象者 2014—2016年に兵庫県で行われた縦断研究の参加者のうち,73名(82—86歳)が7日間にわたる日誌調査に参加した。2年間3時点の調査(調査間隔7−13ヵ月)を実施し,46名(63.0%)が2時点以上の調査に参加した。分析対象者は,1時点目に1日以上回答した57名(女性36.8%)である。
 手続き 参加者の自宅または自宅近くの調査会場にて,調査への参加の同意を書面にて得た後,日誌への回答方法を教示した。教示の翌日から7日間起床後と就寝前に日誌への回答を求め,8日目に返信封筒にて日誌の送付を求めた。
 尺度 日本語版PANAS(佐藤・安田, 2001)を用い,就寝前に1日に経験した肯定的感情(8項目)と否定的感情(7項目)の頻度を6件法(1 = 全く当てはまらない~6 = 非常によく当てはまる)で尋ねた。各感情の合計得点を項目数で割り,平均値を尺度得点として分析に用いた。得点範囲は1−6点である。
 分析方法 マルチレベルモデルにより,感情の変化を推定した。日(レベル1),バースト(レベル2),個人(レベル3)という3つのレベルで感情の分散成分を分け,感情への時間(日レベルおよびバーストレベルの2つのレベル)の効果を推定した。なお,時間の分析単位は,日レベルの時間を週単位,バーストレベルの時間を年単位とした。参加者によって調査間隔は異なるが,すべての参加者の調査間隔は等しい(1年間)と仮定したモデルを推定した。バーストレベルの時間は1時点目で中心化し,日レベルの時間は集団平均で中心化した(つまり,7日間の参加期間の中日である4日目を0とした)。
結果と考察
 無条件平均モデル 説明変数を投入せず,レベル毎に感情の分散成分を推定した。肯定的感情の全分散のうち,個人レベルが50%,バーストレベルが16%,日レベルが34%を占めた。否定的感情の分散については,個人レベルが37%,バーストレベルが12%,日レベルが50%を占めた。
 無条件成長モデル 説明変数に時間を投入し,時間の効果を推定した。肯定的感情と否定的感情のいずれに対しても,時間の効果は認められず(TableおよびFigure),感情は週単位でも年単位でも変化せず,安定していることが示唆された。
 今後の展望 時間の変量効果を設定するとともに,参加者によって異なる調査間隔をバーストレベルの時間として投入し,モデルの精緻化を行うべきである。また,本研究では,感情価(肯定的-否定的)で感情を捉えたが,それらが混在した混合感情などの枠組みで感情を捉え直すとともに,個人内偏差や慣性係数などの変動の定量化を検討すべきである。
引用文献
Röcke, C., & Brose, A. (2013). Intraindividual variability and stability of affect and well-being. GeroPsych, 26, 185–199.
Sliwinski, M. J. (2008). Measurement-burst designs for social health research. Social and Personality Psychology Compass, 2, 245–261.
佐藤 徳・安田 朝子. (2001). 日本語版 PANAS の作成. 性格心理学研究, 9, 138–139.

詳細検索