発表

1EV-075

幼児の模倣学習における行為タイプと年齢の影響

[責任発表者] 木下 孝司:1
1:神戸大学

目 的
 模倣学習において,忠実な模倣は効率的な文化伝達を促進する一方で,無関連な行為も模倣するover-imitationが生じることがある。その要因として,無関連な行為を因果的に必要なものとして認知するのではなく,慣習的に必要なものとしてみなす社会的慣習仮説が提唱されている。それによると,モデルの行為が,ある目標に向けて行っている(目標明示: instrumental)のではなく,その行為そのものが目的となっている(慣習的:conventional)場合に,over-imitationが増加するとされている(Clegg & Legare, 2016)。こうした行為タイプの影響は,行為を行う幼児のスキルや規範性の理解の発達と関連することが予想されるため,本研究では年中児と年長児を対象にして発達的変化を検討する。
 また,文化伝達において,自分が学習したことを他者に教える際,学習内容を忠実に伝達するのか,他者の熟達程度に応じて教示内容を柔軟に調整するのかは重要なプロセスとなる。本研究ではその点も検討する。

方 法
参加児 保育園の年長児20名を目標明示群10名(男児4名,女児6名,平均73.7ヵ月,範囲68〜82ヵ月),慣習群10名(男児6名,女児4名,平均73.0ヵ月,範囲65〜79 ヵ月)の2群に,年中児19名を目標明示群9名(男児3名,女児6名,平均62.0ヵ月,範囲56〜66ヵ月),慣習群10名(男児6名,女児4名,平均58.0ヵ月,範囲52〜62 ヵ月)の2群に分けた。
課題 模倣課題:材料セット(赤・青・黄の円柱ビーズ,赤・緑・黄の立方体ビーズ,二色の紐,モール,製氷皿)をトレイに配置して子どもの前に提示した。子どもに対面した実験者が,目標明示群においては「ここにあるものを使って,これから首飾りを作ります。おじちゃんが作るところをよく見ててね。では,首飾りを作ります。」,慣習群では「ここにあるものを使って,みんなが必ずすることがあります。おじちゃんがすることをよく見ててね。では,みんなが必ずすることをしてみます。」と教示した。実験者は次の一連の行為を演示する。1)青い立方体を取って,両手でこすってから製氷皿に載せる。2)黄色い立方体を取って,両手でこすってから青い立方体の隣に載せる。3)赤い立方体を取って,両手でこすってから黄色い立方体から少し離して置く。4)薄色の紐を取り,立方体の穴に通していく。実験者はうまく通らないのを装い,「ここ,ちょっと難しいなあ」と言う。5)青と黄色の立方体を通したところで,モール(一端は丸めてある)に紐を通して,モールを使って紐通しを行い,「これを使うと,通しやすいな」とつぶやく。その後,材料セットを置いたトレイを子どもに提示して,「さあ,〜ちゃんの番だよ。〜ちゃんもやってみて」と教示した。記憶確認課題:材料セットを提示して,使用した紐,使用したビーズとその順番を質問した。
教示課題:第2実験者が操作するパペットに,「さっきの首飾りの作り方」(目標提示群),「さっきしていたこと」(慣習群)を教えるように教示した。その際,パペットは手を使うのが苦手で紐通しがうまくできないことを子どもには伝え,実際に紐通しの場面でパペットは困惑する様子を見せた。
手続き 保育園の一室で個別に課題を実施し,その様子はビデオカメラで記録した。時間は一人あたり10〜15分であった。

結 果
 実験者が提示したモデルをどの程度忠実に模倣ないしは教示していたのかを算出するために,1)用いた立方体ビーズの種類,2)その順番,3)ビーズの配置の仕方,4)両手でビーズをこする動作の有無,5)用いた紐の種類,6)モールの使用の観点で評価し,それぞれ1点とした忠実度得点(0〜6点)を算出した。その平均得点をTable 1に示す。模倣課題では年齢ならびに条件の主効果は認められず,教示課題において条件の主効果が認められた(F(1,35)=5.78,p<.05)。
 首飾りを作るのにもっとも関連性が低い「こする」行為と,手操作に苦手な学習者には補助となる「モール」使用の見られた子どもの人数をTable 2に示した。年中児においてのみ,「こする」行為をする人数は慣習群の方が多い傾向が認められた(模倣課題:p=.069,教示課題:p=.020)。

考 察
 関連性の低い行為をも忠実に模倣するのは,年中児においてのみ確認された。他者に教えることで,特に目標明示群で忠実な模倣は減じることが示唆され,慣習群との違いがより明確になることが予想される。

引用文献
Clegg, J. M., & Legare, C. H. (2016). Instrumental and Conventional Interpretations of Behavior Are Associated With Distinct Outcomes in Early Childhood. Child Development, 87, 527-542.
*本研究は科研費(15K13131)の助成を受けた

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