発表

1AM-100

動物の反応のバウト/休止パターンに関する時系列モデリング

[責任発表者] 松井 大:1
[連名発表者] 山田 航太:1, [連名発表者] 坂上 貴之:1, [連名発表者] 丹野 貴行:2
1:慶應義塾大学, 2:明星大学

目 的
 動物のオペラント反応は,時間的に不規則に生じるのではなく,群発して生じることが知られている。そのような反応の「まとまり」は,「バウト」と呼ばれる。反応バウトに基づく分析では,動物の反応はバウト内反応,及びバウト間の休止という,2 つの状態の遷移として記述されてきた (Shull et al., 2001)。しかし,バウト/休止のパターンの状態推移の時間的変動について定量的に扱った研究は少ない。そこで本研究は,バウトと休止の時間的変化パターンを定量評価することを目的とし,バウト/休止の時系列モデルを立てた。モデルを変動比率 (VR) スケジュール,並びに変動時隔 (VI) スケジュール下のラットのレバー押し反応データに当てはめ,そのパラメータ推定を行うことにより,バウト/休止パターンの時間的変動を推定することを試みた。

方 法
被験体 実験歴のあるラット4匹を用いた。
装置 通常の1レバーオペラント箱を使用した。
手続き はじめに,全個体がVR30スケジュールを経験した。その後,強化率を統制するため,VRスケジュールにyorkedさせたVIスケジュールを経験させた。1セッションは80強化で構成され,最低20セッション行った。解析には,反応の安定した最後5セッション分の反応データを用いた。
解析 1秒あたりの反応数の時系列データを解析対象とした。反応が時間を通じてランダムに生起すれば,単位時間あたりの反応数はポアソン分布に従うと考えられる。しかし,バウト間に反応の休止期が入るならば,反応数の時系列には,単一のポアソン分布よりも多くの0が含まれることが予想される。そこで,反応数が従う分布として,ゼロ過剰ポアソン分布を仮定した。ゼロ過剰ポアソン分布は,ベルヌーイ分布とポアソン分布の混合分布であり,0 が大量に含まれるデータのモデリングに用いられる。
ここで,ベルヌーイ分布のパラメータはデータ中の 0 (無反応) の多寡を決めるため,バウト状態への滞在率と見なすことができる。一方,ポアソン分布の平均パラメータは,バウト状態における反応率 (バウト内反応率) として解釈できる。バウト率,バウト内反応率が強化子呈示間の時間感覚 (強化間間隔) を通じてどのように変動するかを記述するために,ベルヌーイ分布パラメータ及び,ポアソン分布パラメータがランダムウォークすると仮定した。以上のモデルのパラメータを,変分ベイズ法により推定した。推定にはR3.4.0,並びに {rstan} パッケージを用いた。
 提案モデルのパラメータ推定の感度を検証するため,シミュレーションにより作成したデータへのモデルフィッティングを行った。シミュレーションデータは,Brackney et al. (2011) のモデルから生成した。シミュレーションデータは,バウト内反応率は固定し,バウト間隔を4段階に変化させた。従って,本研究の提案モデルがパラメータを識別して推定できれば,バウト内反応率を反映するポアソン分布パラメータはデータセット間で一定となる一方,バウト率を反映するベルヌーイ分布パラメータが変化することが期待される。

結 果
 図は,バウト内反応率を表すポアソン分布パラメータ,並びにバウト率を表すベルヌーイ分布パラメータの時間変動の推定値である。バウト内反応率はVR-VIスケジュール間で強化間間隔を通じて差が見られた一方,バウト率はスケジュール間で差が見られなかった。また,バウト内反応率は強化間間隔を通じて比較的安定して推移する一方,バウト率は時間経過ととも下落していく傾向が見られた。
シミュレーションデータへのフィッティングの結果,ポアソン分布パラメータはデータセット間で比較的一定であったが,ベルヌーイ分布パラメータは,データ生成に用いた,Brackney et al. (2011) のバウト率パラメータに応じて変化した。  

考 察
 本研究は,VR-VIスケジュールの反応を対象に,バウト/休止の時間的パターンの分析を行うことにあった。バウト中の反応率にはポアソン分布,バウト率にはベルヌーイん分布を用いることで,バウト/休止の仮定を取り込むことができた。結果,バウト内反応率はスケジュール間で異なり,バウト率はスケジュール間で変化しないという,従来の「反応間間隔」を用いたバウトの分析と整合する結果が得られた。また,シミュレーションの結果から,提案モデルにより,バウト内反応率とバウト率を識別して推定可能であることが示唆された。

詳細検索