発表

2PM-075

DRMパラダイムにおける新奇顔への虚記憶の生起過程の検討 顔刺激の形態的・評価的側面,及び記銘者の個人特性からの体系的考察

[責任発表者] 島根 大輔:1
[連名発表者] 松井 大:1, [連名発表者] 伊東 裕司:1
1:慶應義塾大学

目 的
 Deese-Roediger-McDermott(DRM)パラダイムは,参加者に互いに関連した項目のリスト(DRMリスト)を学習させることで,「学習した項目と関連するが,実際には学習していない項目(lure項目)」への虚記憶を生起させるという虚記憶研究の手続きの一つである(Deese, 1959; Roediger & McDermott, 1995)。先行研究では,単語・画像・形・無意味単語などの刺激を用いて,本パラダイムで生起する虚記憶のメカニズムが検討された。このような基礎的な刺激における虚記憶の生起過程が解明されてきた一方で,DRMリストを作成することが難しい顔刺激を用いた研究はほとんど為されなかった。本研究では,この顔刺激を形態的な類似性によってリスト化し,各リストを学習することで,非学習のlure項目への虚再認が生起するかどうかを検討した。さらに,生起した虚再認の生起確率を各リストの顔刺激の形態的・評価的側面,及び参加者の個人特性から説明しようと試みた。

方 法
被験者 慶應義塾大学の学生35名(内,女性20名,平均年齢21.91 ± 1.99)が参加した。
刺激 コンピュータで作成され,事前に印象評価(支配性・魅力・信頼性)された120枚の顔刺激が用いられた(www.facegen.com/)。全刺激をリストに分割するため,各刺激の形態情報を数量データとして抽出した。具体的には,顔形態に対応するX-Y軸の38個の2次元ランドマークによって位置情報を数値化し,これらの座標に主成分分析を適用した。抽出された5つの主成分に対応する5つの主成分得点が各顔刺激のパラメータとなる。このパラメータの類似度が高くなるように,全刺激を8項目からなる15個のリストに分割した。各リストにおいて,8項目のパラメータの重心から,最も近い項目をlure(非学習関連)項目とし,最も遠い項目と2番目に遠い項目をnew(非学習無関連)項目,その他の5項目をstudy(学習)項目とした。
要因計画 再認テスト項目の種類(old・new・lure,参加者内)の一要因参加者内計画であった。従属変数は再認テストにおけるテスト項目へのold反応率であった。
手続き 各試行は2つのフェイズで構成された。学習フェイズでは,リスト内の5つのstudy項目を学習させた。30秒間の計算問題の後,テストフェイズでは,lure項目・2つのnew項目・2つのold項目(提示した5つのstudy項目からランダムに選定)を逐次提示し,各項目が学習フェイズで提示されたかどうかを “old / new” で判断させた。この流れを1試行とし,全15リストについて実施した。最後に,個人特性(楽観性など)についての質問紙への回答を求めた。

結 果 と 考 察
 各項目への平均old反応率は,それぞれ0.67 ± 0.02,0.08 ± 0.01,0.21 ± 0.02(± 1SE)であった。虚記憶の生起の有無を確認するため,再認テスト項目の種類について一要因分散分析を行った結果,有意な主効果が認められた (F(2,99)= 52.19, p<.01)。Ryan法による多重比較を行った結果,全てのペアの間に有意差が認められた (ts(34) > 8.14, ps<.01, 図1)。
 lure項目へのold反応率がnew項目よりも高いという結果は,形態情報を元にリスト化した顔刺激のDRMパラダイムによって,lure項目への虚記憶が生起したことを示す。lure項目は,各リストの中心的な特徴を有する項目である。従って,この特徴が顔刺激における虚記憶の生起に影響した可能性がある。事前に行った顔の評価課題の結果とold反応率の関係については,lure項目が高く虚再認されるリストほど,リスト内の各項目への評価値が収束している傾向が認められた。一方,個人特性(楽観性)とold反応率の関係は,従来のDRMパラダイムで認められたような正の相関関係を示さなかった。これらの結果は,顔刺激のリスト学習において,符号化される中心的な表象があることを示す一方で,基礎的な刺激を用いたDRMパラダイムとは異なる記憶方略が取られる可能性を示す。

引用文献
Deese, J. (1959). On the prediction of occurrence of particular verbal intrusions in immediate recall. Journal of experimental psychology, 58(1), 17.
Roediger, H. L., & McDermott, K. B. (1995). Creating false memories: Remembering words not presented in lists. Journal of experimental psychology: Learning, Memory, and Cognition, 21(4), 803.

詳細検索