発表

3PM-060

プランニングと系列順序記憶の関連についての検討

[責任発表者] 肥後 克己:1
[連名発表者] 岡本 尚子#:2
1:立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構, 2:立命館大学

目 的
 本研究では,ものごとの順序を記憶する機能と,ある目標を達成するまでの手順を組み立て,それを実行する能力との関係を調べることを目的とした。例えば料理を作る場合,何を作るかを決め,そのために必要な材料を集め,野菜を切り,順番に鍋に投入していくというように,目標の設定と手順の組み立て・実行が重要となる。本実験は,手順の組み立てと実行には,ものごとの順序を記憶する機能が重要であると考え,実験を行ったものである。これまでもプランニングについて実験的に検討した研究は存在するが(Altgassen et al., 2007)これらは「どのように情報が処理されているか」という観点からの研究である。それに対して本研究では,順序情報の「保持」に焦点を当てている。

方 法

実験参加者 日本語を母語とする8名(男性6名,女性2名;19-31歳)であった。

実験刺激 実験課題には,順序の再構成課題とハノイの塔課題を用いた。順序の再構成課題は,呈示された刺激の順序を記憶し,回答する課題であった。回答の際は刺激項目の再生は求められず,順序の再生だけを求められた。順序の再構成課題では,言語性条件(無意味語;梅本他,1955)・視覚性条件(無意味図形;Vanderplas et al., 1959)・空間性条件(空間位置)の3種類の刺激を用いた。セットサイズは全て7で,各条件6試行実施した。ハノイの塔課題は,ルールに従って任意の枚数のディスクを動かし,初期状態から目標状態への移行を行う課題であり,プランニングに関する実験に用いられるものである。本実験では,ディスク3枚,4枚,5枚の3試行行った。分析にはディスク5枚条件の課題成績を用いた。

手続き 順序の再構成課題では,実験参加者はノートパソコンの前に座り,ディスプレイに提示される刺激の順序を記憶することが求められた。刺激の呈示が終わるとすぐに回答にうつった。回答は,ランダムな順序に並べられた刺激項目が記載された回答用紙に,呈示順序を数字で記入することで行われた。ハノイの塔課題では,参加者はハノイの塔(トーヨーフィジカル製)の前に座り,ディスクの枚数が3枚の条件から順番に実施した。

結 果
 3種類の順序の再構成課題の成績とハノイの塔課題成績の関連を図1に示す。図1は,8名の実験参加者の課題成績をプロットしたものである。順序の再構成課題の成績は,セットサイズ7つのうち正しく順番を想起できた数を数え,6試行の合計数を求めた(最大値は42)。ハノイの塔課題の成績は,実際の手数とディスク5枚条件の最小手数(31手)との比率で示しているので,数値が小さい方が課題成績は高いことを示している。


図1 順序の再構成課題成績とハノイの塔課題成績の関連

 結果として,順序の再構成課題の成績が高い実験参加者は,ハノイの塔課題の成績も高くなる傾向が示された。

考 察
本研究は,順序記憶と目標達成のためのプランニング機能の関連を検討することを目的とした。結果として,順序の再構成課題の成績が高い実験参加者ほど,ハノイの塔課題の成績も高くなる傾向が示され,順序記憶とプランニング機能には関連があることが示された。このことは,目標達成までのプランニング時に,それまでの手順やこれから取りうる手順を保持することの重要性を示唆していると考えられる。ただし,本実験だけでは,両課題に対する実行系機能の関連まで検討することができないため,今後,実行系機能の観点からの検討が必要となると言える。

引用文献
Altgassen et al. (2007). Role of working memory components in planning performance of individuals with Parkinson’s disease. Neuropsychologia, 45, 2393-2397.
梅本尭夫他. (1955). 清音2字音節の無連想価及び有意味度. 心理学研究. 26. 148-155.
Vanderplas et al. (1959). The association value of random shapes. Journal of Experimental Psychology, 57, 147-154.


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