発表

3PM-058

不気味の谷現象における他人種間効果:瞳孔径計測による検討

[責任発表者] 実吉 綾子:1
[連名発表者] 鈴木 玄:2, [連名発表者] 小山 貴士:2, [連名発表者] 大久保 街亜:2, [連名発表者] Bruno Laeng#:3
1:帝京大学, 2:専修大学, 3:オスロ大学

目 的
 ロボットやアンドロイドが人間に似てくるにつれてその印象が急激に悪化し不気味に感じられるという不気味の谷現象がMori(1970)によって予測され、実際に認められている。この不気味という印象は目を不自然に大きくすることで得られることがSeyama and Nagayama (2007)によって報告されている。実吉ら(2017,日本心理学会大会)では、目を段階的に大きくした顔を刺激として、不快、不気味と感じる度合いを評価させた。その結果、顔刺激と自分の人種が一致する条件では、不一致の人種の条件と比較して、わずかな目の大きさの変化でも不気味と感じることが示唆された。本研究では、不気味と感じている指標として、不快感の評価に加えて瞳孔径を計測した。瞳孔反応は自動的で意図的な制御ができない。したがって、適切な刺激条件での瞳孔径の計測により、不快さや不気味さについて、参加者の意図が関与しない反応を取得できる。瞳孔径は恐怖や不快な感情を抱いている時に拡大するため、目の不自然に大きい顔刺激に対する不気味という印象に瞳孔径の変化が伴うこと、また不気味という印象の人種間効果が瞳孔径にも反映することが予測された。また、目が不自然に小さくなる条件も設け、不気味という印象が目が不自然な大きさであることによって生じるのかを検証した。
方 法
実験参加者 日本在住の日本人大学生21名が実験に参加した。分析にはデータに不備のあった1名を除い20名のデータが用いられた。 実験刺激 FaceGen Modeller 3.5 (Singular Inversions Inc.)でランダムに作成された東アジア人種の顔8種類とヨーロッパ人種の顔8種類をオリジナル画像として用意した。オリジナルとする顔画像は目の大きさを揃え、顔を丸く切り抜き輪郭や髪型などの情報を排除した。モーフィングソフトを用いて各オリジナル画像の目の大きさを、-150%から+150%まで増減5段階ずつ計11枚の顔画像が作成された。さらに各顔刺激のスクランブル画像を作成し輝度が一致する比較刺激として用いた。
装置 瞳孔径の測定にはSMI社製の眼球運動測定装置が用いられた。刺激の提示と反応の取得には装置に付属する刺激提示ソフトが用いられた。
手続き 提示された注視点を1秒間注視していると試行が開始された。まず顔刺激のスクランブル画像が500ms提示され、その後顔刺激が5000ミリ秒提示された。各画像が1回ずつ提示され、計176試行行われた。
顔刺激の評価 提示される顔刺激に対して、どの程度不快に感じるかを9段階で評価させた。評価は顔刺激を5秒間観察してから画面上に提示される9段階の選択肢から選ばせた。
瞳孔径の測定 顔刺激を観察する5秒間の瞳孔径とスクランブル画像観察時の瞳孔径を計測した。
結果と考察
 各条件の顔刺激への不快度の平均値を求めた。さらに、各条件の顔刺激観察時と顔のスクランブル画像観察時の瞳孔径の平均値をそれぞれ求め、顔刺激観察時の瞳孔径の、スクランブル画像観察時からの変化率を算出した。
顔刺激に対する評価 全体的に目の大きさが変化するに従って、不快という印象が強くなった。人種の一致と目の大きさの交互作用が認められ、original,+150%, -60%の条件で人種が一致する顔に対して不一致の顔よりも不快度が有意に高かった,F(10,190)=2.34,p=.013,partialη2=0.11。
顔刺激観察時の瞳孔径 人種の一致度に主効果が認められ、全体的に人種が一致している方が瞳孔径が有意に拡大した,F(1,19)=11.71,p=.003,partialη2=0.38。交互作用は認められなかったが、目が最も大きい条件では人種が一致していると不一致の条件と比較して瞳孔径がより大きい傾向があった。
 結果から、不気味という印象の測定に瞳孔径が有効であること、また他人種間効果が認められる可能性が示唆された。

引用文献
Mori, M. (1970). The uncanny valley. Energy, 7(4), 33–35.
Seyama, J., & Nagayama, R.S. (2007). e uncanny valley: Effect of realism on the impression of artificial human faces. Teleoperators and Virtual Environments, 16(4), 337–351.

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