発表

3AM-068

ネコは同居個体の名前を知っているのか?

[責任発表者] 高木 佐保:1,3
[連名発表者] 齋藤 慈子:2, [連名発表者] 黒島 妃香:1, [連名発表者] 藤田 和生:1
1:京都大学/日本学術振興会, 2:上智大学, 3:学術振興会

目 的
 伴侶動物はヒトの言葉とそれが指し示すものを理解し、それに従った行動をとることができる。ヒトの言葉の理解においてイヌは特に秀でており、1000以上のオモチャの名前を覚えることができ (Pilley & Reid, 2011)、さらにfMRIを用いた研究から、イントネーションと言葉を区別して理解していることが示されている (Andics, Gábor, Gácsi, Faragó, Szabó, & Miklósi, 2016)。しかし、その他の伴侶動物がヒトの言葉をどの程度理解しているのかは明らかになっていない。本研究では、ヒトの言葉の理解を調べるために、同居個体の名前を刺激として用いた。ネコが同居他個体の名前と顔のマッチングができるかどうか期待違反法を用いて調べた。飼育環境による違いを検討するため、ネコカフェ/家庭で飼育されているネコの分析を別々に行った。

方 法
被験体 家庭やネコカフェで飼育されているイエネコ48 個体 (オス28個体、メス20個体)を対象に実験を行った。平均年齢は4.5歳で、SDは3.6であった。実験は飼い主の家、及びネコカフェで行い、29個体はネコカフェで、19個体は家庭で飼育されている個体だった。
装置 ノートパソコン (NEC Lavie G)で顔刺激を呈示し、それとつなげたUSBスピーカー (SANWA MM-SPS2UBK)から音声を再生した。被験体の行動は3つのビデオカメラで撮影した (SONY CX900)。
刺激 声刺激と顔刺激の2つを用いた。声刺激として、飼い主が同居他個体の名前を呼ぶ声を用いた。顔刺激として、被験体と共に飼育されている同居他個体2個体 (同居個体AおよびB)の顔写真を用いた。
手続き 1試行はVoice phaseとFace phaseの2つで構成された。被験体は床に置いたパソコンから30cmの距離で実験者1に軽く保定された。被験体の同居個体を飼い主が呼ぶ声が4回再生され (Voice phase)、その後同居個体の顔刺激が7秒呈示された (Face phase)。声と顔が一致している2条件(一致条件)に加え、両者が一致していない2条件(不一致条件)があった。ネコが他個体の名前を知っており、声から顔を想起しているのなら、不一致条件で期待違反が生じ、画面を長く注視することが予測された。全ての個体は全ての条件に1試行ずつ参加したが、画面を全く見ていない試行は分析から除外した。
分析 Face phaseでの画面への注視時間を指標とし、LMMを用いてモデルを立て分析した。Cogruency (congruent/incongruent)、生育環境 (ネコカフェ/家庭)、試行順 (1~4)を固定要因とし、被験体をランダム要因とした。


結 果
 統計的検定の結果、一致性の主効果(F (1, 60.87) = 4.10, p = .04)、飼育環境の主効果(F (1, 79.03) = 8.06, p < .01)、一致性と飼育環境の交互作用が有意だった(F (1, 60.71) = 7.76, p < .01)。下位検定の結果、カフェネコは一致条件で画面へ注意を向ける時間が長くなったが、統計的に有意な差は見られなかった。一方家庭ネコは、不一致条件で統計的にも長く画面へ注意を向けた(p < .01)。

考 察
本研究の目的は、ネコが同居個体の名前と顔のマッチングができるかどうかだった。実験の結果、家庭ネコにおいて不一致試行で画面へ注意を向ける時間が長くなった。他方、カフェネコに関しては、条件間で違いは見られなかった。これらの結果は、少なくとも家庭ネコでは、他個体の名前と顔のマッチングができており、飼い主が名前を呼ぶ声から、その個体の存在を想起している可能性が示唆された。このことから、イヌばかりでなくネコも、ヒトの言葉とそれが指し示すものについて理解していることを示すものである。

引用文献
Pilley, J. W., & Reid, A. K. (2011). Border collie comprehends object names as verbal referents. Behavioural Processes, 86, 184-195.
Andics, A., Gábor, A., Gácsi, M., Faragó, T., Szabó, D., & Miklósi, Á. (2016). Neural mechanisms for lexical processing in dogs. Science, 353, 1030-1032.

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