発表

2PM-065

刺激位置による視線と選択への影響

[責任発表者] 大沼 卓也:1,2
[連名発表者] 佐藤 洋大#:2, [連名発表者] 坂井 信之:2
1:近畿大学/東北大学, 2:東北大学

目的
視覚にもとづく我々の選択に対して,刺激の位置が影響を及ぼすことがある。たとえば,並べられた商品から選択をする場合,中央にある商品が最も選ばれやすいことがわかっている (Valenzuela & Raghubir, 2009)。また,PCモニタ上の3×3のマトリクス上に食品画像を提示し, 選択している際の参加者の視線を視線測定装置で計測した研究では,中央の刺激が最も選ばれやすく,なおかつ最も長く見られることがわかっている (大沼・池田・長谷川・坂井, 2016)。
 ところが大沼ら (2016) の実験では,参加者は刺激提示直前までマトリクス中央の注視点を見るよう教示されていた。そのため,中央の刺激への視線の偏りが,単に直前まで注視点が中央に提示されていたために生じていた可能性がある。そこで本研究では,刺激提示前の注視点をマトリクス上の全位置に等しく提示しながら大沼ら (2016) と同様の実験を行い,刺激位置による視線と選択への影響を検討した。

方法
参加者
 宮城県仙台市在住の大学生32名(男性17名,女性15名,平均年齢20.0歳)が同意のもとで実験に参加した。

視覚刺激
 商品(リュックサック,ノートブック,サンダル)および星型図形の計4種類の刺激カテゴリごとに,8色分(白色・黒色・赤色・桃色・橙色・青色・水色・緑色)の画像を作成した。実験では,刺激カテゴリごとに8つの画像をセットとし,モニタ上の9マスのマトリクス(3×3)上に同時提示した。

実験装置
 視線測定装置として,Tobii X2-60 Eye Tracker (Tobii Technology) を用いた。サンプリングレートは60 Hzであった。視覚刺激の提示および反応の記録,視線データの分析にはTobii Studioを用いた。モニタの視距離は約60 cmであった。

手続き
 各試行のはじめに,注視点がマトリクス上のどこかに3 sec 提示された後,8つの刺激からなる刺激セットが提示された(図1)。注視点の位置は毎試行で異なり,また注視点が提示された位置には刺激は提示されなかった。参加者は,刺激提示後5 secの間は選択せずに,刺激を吟味するように教示されていた。5 secが経過した後,選択を促す画面が提示された。参加者は,刺激が商品であれば「最も買いたいもの」を,図形であれば「最も好きなもの」を9マス上の8つの刺激から一つだけ選択し,キー押し(1〜9キー)によって反応した。
 なお,刺激カテゴリ(4種類)ごとに注視点の提示位置(9通り)と刺激の並び(8通り)を考慮した刺激セットを作成した(合計288通り)。参加者一人に対しては,全セットのうち72通りをバランスよく提示した。

結果
 各刺激位置(図2A)に対する選択度数を算出した(図2B)。カイ二乗検定の結果,有意なχ2値がみられ (χ2 = 86.47, p < .001), 中央(5番)に提示された刺激が最も多く選ばれることがわかった。また,各刺激位置に対する全注視時間(図2C)について,繰り返しのある分散分析を行なったところ,刺激位置の主効果が有意であり (F(8, 248) = 24.71, p < .001),Shaffer法の多重比較の結果,中央に対する全注視時間は,その他のどの位置よりも有意に長いことがわかった (ps < .01)。

考察
 本研究では,刺激提示前の注視点の位置を中央に固定せず,マトリクス上の全位置に等しく提示した。その結果,注視点を中央に固定していた大沼ら (2016) と同様に,中央の刺激が最も長く見られ,なおかつ選ばれやすいことがわかった。この結果から,中央の刺激への視線の偏りは,刺激提示前の注視点の位置に依存しない,視覚的な選択の一般的特性である可能性が示唆された。なお,中央の刺激への視線の偏りと選択の関係性については,今後さらなる検討が必要である。

引用文献
大沼卓也・池田有里・長谷川智子・坂井信之 (2016). 選択肢の位置による視線および選択への影響 電子情報通信学会技術研究報告,116(377),33-36.
Valenzuela, A., & Raghubir, P. (2009). Position-based beliefs: the center-stage effect. Journal of Consumer Psychology, 19(2), 185–196.

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