発表

2AM-068

多感覚情動認知における内集団声優位性を決定する要因ー話者の見た目か?言語か?ー

[責任発表者] 河原 美彩子:1,2
[連名発表者] 山本 寿子:1, [連名発表者] 田中 章浩:1
1:東京女子大学/日本学術振興会, 2:日本学術振興会

目 的
 日常生活における感情コミュニケーションでは,言語情報に限定されず,顔の表情や声の調子などの非言語情報も伝達されている。我々はこうした複数の非言語情報を同時に手がかりとし,他者の感情を多感覚的に読みとっているが(de Gelder & Vroomen, 2000),それらの情報をどのように読みとるかは普遍的ではなく文化によって異なることが知られている。顔と声からの情動認知においては,日本人はオランダ人と比較して声の感情を重視する傾向にあることが明らかとなっている(Tanaka, et al., 2010)。また,Kawahara, et al.(2017)では,この文化差は幼児期には存在せず,どちらの文化でも顔の感情を重視するが,特に日本人話者の感情表現に対して,日本人は7-8 歳頃から顔から声へと情報の重みづけを変化させていくことが示された。このように,日本人は特に相手が日本人の場合に,声を重視して判断するようになっていくが,相手のどのような要因が声で判断するためのトリガーになるのだろうか。1つ目の可能性は,相手の見た目が日本人であることである。2つ目の可能性として,相手が話す言語が日本語であることがあげられる。そこで本研究では,このどちらの要因がトリガーになっているのかを検討した。
方 法
実験参加者 日本人の5-12歳児(168名)と大学生(20名)が実験に参加した。
実験刺激 日本語話者とオランダ語話者(各言語女性2名)の感情的な発話(怒り,喜び)が記録された動画の映像と音声を,話者の文化(日本語話者,オランダ語話者)内および文化間で入れ替え,映像と音声の話者が別人の刺激を作成した。刺激には,映像と音声を話者の文化内で入れ替えた文化一致刺激と,文化間で入れ替えた文化不一致刺激があった。また,上記の刺激には,顔の表情と音声が表す感情が一致しているものと,感情が矛盾しているもの(たとえば,喜び顔+怒り声)があった。刺激の組み合わせの例を図1に示す。
手続き 実験では,注視点に続き,動画刺激をPCモニタおよびヘッドホンから呈示した。実験参加者には,1試行ごとに刺激の話者が表す感情が喜びと怒りのどちらであるか,二肢強制選択で回答するよう教示した。教示を行う際には,刺激話者の表す感情を感じたままに判別するよう指示した。なお,実験参加者には必ず各発話を最後まで視聴させた。
結 果 と 考 察
 日本人が相手の声の感情に注意を向ける要因として,話者の発話言語と見た目のどちらがより影響をもたらすのか検討するため,顔と声の感情が矛盾する刺激に対して声の感情を選択した割合(以下,声選択率)を算出した。この声選択率について,話者の組み合わせ(日本人顔+日本語,オランダ人顔+オランダ語,日本人顔+オランダ語,オランダ人顔+日本語)×参加者の年齢(5-6歳,7-8歳,9-10歳,11-12歳,大学生)の2要因分散分析を実施した。その結果,5-6歳を除くすべての年齢群で,発話言語がオランダ語である刺激よりも日本語である刺激に対して声選択率が有意に高いことが明らかとなった(ps < .001)。結果を図2に示す。この結果は,日本人は5-6歳の時点では話者の見た目や言語に依らず,顔の表情を重視して情動認知をおこなうが,その後は話者の見た目にかかわらず発話言語が日本語である場合に声の感情を重視するようになっていくことを示唆している。
謝辞:実験にご協力いただいたお子様と保護者の方々,ならびにデータの収集にご協力いただいた日本科学未来館の皆様,東京女子大学のボランティアスタッフの皆様に心より感謝いたします。本研究は科研費新学術領域研究No. 17H06345「トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築―多文化をつなぐ顔と身体表現-」の助成を受けたものです。
引用文献
de Gelder, B., & Vroomen, J. (2000). The perception of emotion by ear and by eye. Cognition and Emotion, 14, 289-311.
Kawahara, M., Sauter, D., & Tanaka, A. (2017). Impact of culture on the development of multisensory emotion perception. Proceedings of the 14th International Conference on Auditory-Visual Speech Processing, D2.S5.2.
Tanaka, A., Koizumi, A., Imai, H., Hiramatsu, S., Hiramoto, E., & de Gelder, B. (2010). I feel your voice: Cultural differences in the multisensory perception of emotion. Psychological Science, 21, 1259-1262.

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