発表

2AM-045

妊婦の被援助志向性について(1)

[責任発表者] 日下部 典子:1
1:福山大学

目 的

 妊娠中の女性のメンタルヘルスは,妊婦だけではなく胎児の発達にとっても重要であることはもちろん,出産後の母親のメンタルヘルスと子どもの心身の健康にも大きく影響することが明らかとなっている。すなわち,妊婦の抑うつ症状あるいはストレス予防は女性のメンタルヘルスを考える上で,重要な課題の一つである(Cox & Holden,2006)。
ところで,ストレス・プロセス研究から,ストレス低減にはソーシャル・サポートが重要な要因であることが明らかとなっているが,サポートを必要とする妊婦が必ずしもソーシャル・サポート希求をしているとは限らない(日下部,2014)。ソーシャル・サポート希求を阻害する要因の一つに被援助志向性があると考えられる(田村・石隈,2006)。そこで本研究では,妊婦における被援助志向性の現状と抑うつ症状との関連を明らかにすることを目的とする。

方 法

調査対象者 調査対象者は妊娠している女性150名(平均年齢32.69歳,SD=4.31)であった。
調査方法 2017年12月に調査会社を通じて,インターネット調査を実施した。
質問紙の内容 フェイスシートで,年齢,健康状態,就労状況,住居形態等の対象者の属性を尋ねた。また,妊婦がサポートを求めようとする状況7項目(日下部,2014)について,「配偶者・パートナー」,「親・きょうだい」,「友人・知人」,「医師・保育士・心理士等の専門家」それぞれに対してどのくらい相談すると思うかを尋ねた。抑うつ症状については,エディンバラ産後うつ病調査票(EPDS)日本語版を使用した。EPDS(30点満点)は21項目,各質問に対して4件法で回答を求めた。
 
結 果
 
 調査対象者の妊娠週数は平均23.00週(SD=10.48),88%が健康であった。就労状況は無職が53%,就労43%のうち,フルタイムが25%,パートタイムが18%であった。また80%が核家族であり,拡大家族は4%であった。 
「第1因子 夫への被援助志向性」,「第2因子 親やきょうだいへの被援助志向性」,「第3因子 友人・知人への被援助志向性」,「第4因子 専門家への被援助志向性(人間関係・育児について)」,「第5因子 専門家への被援助志向性(妊娠や体調について)」の5因子から構成される妊婦の被援助志向性尺度(日下部,2018)の因子得点を算出した結果,各因子の平均値(sd)は3.06(.70),2.63(.75),2.61(.73),2.03(.78),2.71(.82)であった。属性による得点の違いを検討した結果,第1子を妊娠している妊婦(N=75)は第2子を妊娠している妊婦(N=55)と比べて,第1因子の得点が有意に高いことが明らかとなった(F(2,147)=4.09, p<.05)。また健康状態が良好な妊婦(N=132)は不良な妊婦よりも第3因子が有意に高い得点であった(t(147)=2.16, p<.01)。
EPDSは最大値22.0,最小値0.00,平均値は8.15(.54)であり,抑うつ傾向陽性とスクリーニングされる9点以上が63名(42%)であった。被援助志向性尺度と抑うつ症状との関係を明らかにするため,Pearsonの相関係数を検討した結果,有意な相関は認められなかった。

考 察

本研究の目的は妊婦の被援助志向性と,抑うつ症状との関連を明らかにすることであった。第1子を妊娠している女性の方が第2子妊娠中の女性より第1因子得点が有意に高いことから,初めて妊娠した妊婦は,親や友人等へのサポートは第2子を妊娠している人と変わらないが,夫のサポートはより求めていることが示された。初産婦に対して夫が適切なサポートができるよう,たとえば妊娠中の教室に夫がより多く参加できる工夫が必要であろう。友人・知人へのサポートは健康状態が良好な妊婦がより求めており,健康な妊婦は良好な対人関係を形成していることが示唆された。約9割の妊婦は健康であるが,残りの1割の妊婦へのサポートのあり方を考える必要がある。
EPDSの結果から,約半数で抑うつ症状が認められたが,この数値は先行研究に比較して高い数値であり,妊娠時期やストレス状態等様々な要因が影響している可能性があるため,今後詳細に検討していくことが必要である。EPDSと被援助志向性との関連を検討したが,有意な関連は認められなかった。先行研究から,抑うつ症状が高い人はサポート希求がうまくできないことが明らかとなっているが,被援助志向性には関連が認められなかったことから,サポート希求を妨げる,抑うつ症状が高い人に特有のサポートに関連する他の要因を検討することが必要であること必要性が示唆された。

引用文献

日下部 典子(2014).乳幼児を育てる母親のソーシャル・サポート希求と被援助志向性 福山大学人間文化学部紀要,14,53-61.
田村 修一・石隈 利紀(2006).中学校教師の被援助志向性に関する研究-状態・特性被援助志向性尺度の作成及び信頼性と妥当性の検討- 教育心理学研究,54,75-89.

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