発表

2AM-043

発達障害児をもつ母親の心理的苦痛と家族レジリエンス

[責任発表者] 鈴木 浩太:1
[連名発表者] 平谷 美智夫#:2, [連名発表者] 水越 菜那#:1, [連名発表者] 林 隆#:3, [連名発表者] 稲垣 真澄#:1
1:国立精神・神経医療研究センター, 2:平谷こども発達クリニック, 3:西川医院

目 的
 発達障害児をもつ母親は,育児の中で様々な困難を経験し,精神的な問題を抱えるリスクが高いことが知られている。家族レジリエンスは,困難な状況に家族が良好に適応する過程として定義される概念である。家族レジリエンシー(家族レジリエンスの要素をもつ程度)が母親の精神的な問題を抱えるリスクを軽減する要因になり得ることが予測された。そこで,本研究では,家族レジリエンシ―を測定する尺度を開発し,家族レジリエンシ―が子どもの発達障害の重症度と母親の心理的苦痛に与える効果を検討した。

方 法
研究対象 対象は,注意欠如・多動性障害(Attention Deficit Hyperactive Disorder: ADHD),自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD),学習障害(Learning Disorder: LD),知的障害(Intellectual Disability: ID)の診断を受けた子どもの養育者324名であった。欠損値のない母親274名を分析に用いた。
家族レジリエンス要素質問票(Family Resilience Elements Questionnaire: FREQ) 家族レジリエンス尺度(得津・日下, 2006)及び家族レジリエンス測定尺度(大山・野末, 2013)より,信念体系,組織的なパタン,コミュニケーション・プロセスの各概念から7項目を抽出した。計21項目について,発達障害をもつ母親8名に予備的に調査を行った。予備調査の結果に基づき,質問項目を修正した。また,発達障害の育児に関する7項目を追加した。再度,10名の母親に対して予備調査を行い,質問項目を確認し,本調査に用いた。「1.全くあてはまらない」~「5.よくあてはまる」の5件法で回答を求めた。
質問項目 子どもの発達障害の重症度を評価するために,Impairment Rating Scale (IRS)を用いた。母親の心理的苦痛を評価するために,Kessler 6-items Psychological Distress scale (K-6)を用いた。

結 果
FREQ 因子数を決定するために,平行分析とMinimum Average Partialテストを実施したところ,1因子が妥当であると判断された。最尤法による探索的因子分析を行ったところ,1項目の因子負荷量が,0.34であり,残りの27項目の因子負荷量が,0.48以上であった。そのため,27項目の平均値をFREQの得点とした。
階層的重回帰分析 K-6をIRS,FREQ,IRSとFREQの交互作用項で予測する階層的重回帰分析を行った。まず,K6をIRSとFREQで予測するモデルは有意であった(R2 = .22, F(2,271) = 38.79, p < .01)。次に,このモデルに,IRSとFREQの交互作用項を投入したところ,R2が有意に増加した(ΔR2 = .02, F(1,270) = 4.56, p < .05)。
 交互作用項を含むモデルでは,IRS,FREQ,IRSとFREQの交互作用項がK-6を有意に予測していた(p < .05)。交互作用項について詳細に検討したところ(図),FREQが+1SD高い(b = .11, p < .05),平均 (b = .17, p < .001), -1SD 低い(b = .25, p < .001),-2SD低い (b = .32, p < .001)場合には,IRSがK6を予測しているが,+2SD高い場合には,IRSとK-6の関係性が認められないことが示された。

考 察
 K-6を予測する階層的重回帰分析では,IRSとFREQの交互作用項が有意であり,FREQが高い場合に,IRSとK-6の関係性が認められないことが示された。つまり,子どもの発達障害の重症度が高いと母親の心理的苦痛が高い関係性があるが,家族レジリエンスが高い家族では,子どもの発達障害の重症度が高くても母親の心理的苦痛が増大しないことが明らかになった。家族レジリエンシーが高い家族では,母親以外のメンバーも,適切に子育てに関わることができているため,母親の子育ての負担が軽減されることが想定された。

引用文献
大山寧寧・野末武義 (2013). 家族レジリエンス測定尺度の作成および信頼性・妥当性の検討. 家族心理学研究, 27, 57-70.
得津慎子・日下菜穂子 (2006). 家族レジリエンス尺度 (FRI) 作成による家族レジリエンス概念の臨床的導入のための検討. 家族心理学研究, 20(2), 99-108

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