発表

2AM-041

児童期における主観的幸福感と原因帰属様式の関連についての検討

[責任発表者] 小嶋 佑介:1
1:淑徳大学

目 的
 主観的幸福感と原因帰属様式に関する研究では、成功場面を内的要因に帰属し、失敗場面を外的要因に帰属させることで、自己高揚的傾向が高まり(Kashima & Triandis,l986)、自己高揚は主観的幸福感を促進することが明らかとなっている(黒田ら,2004)。しかし、日本人に特徴的な帰属スタイルとして、成功場面は外的要因に帰属し、失敗場面は内的要因に帰属するという自己卑下的傾向が示されている(北山・高木・松本,1995)。ただし、北山ら(1995)は、日本においては、自己のネガティブな属性を見つけ出し、それを矯正するというプロセスが共有され、受け入れられていると指摘している。よって、日本人においては、失敗場面を内的要因に帰属させることが、文化的適応や幸福感に結びついているとも考えられる。
 児童期である小学校高学年は、物事をある程度対象化して認識できるようになり、自己を客観的に捉えられるようになる時期である(文部科学省,2002)。自己概念の発達に伴い、幸福感という感覚を自己の中に見出し、原因帰属様式にも個人的特性が色濃く反映されると考えられる。友人や教師との対人関係、学業、集団適応などに関する様々なイベントを経験し今後の人格的成長を目指す中で、幸福感は適応的な学校生活に重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では、児童期における幸福感の様相を明らかにするため、原因帰属様式および自己決定理論における学習動機づけの観点から検討することを主な目的とする。
方 法
 Z県の小学5、6年生137名(男68名・女69名)を対象に、x年2月に質問紙調査を実施した。使用した尺度は、オックスフォード幸福感尺度(Hills & Argyle,2002;祁・浅川,2011)、原因帰属様式測定質問紙(樋口ら,1981)、自己決定性尺度(竹村・小林,2008)の3つである。なお、幸福感尺度および原因帰属様式測定尺度については、項目文を小学生に理解しやすいような簡易な表現に修正した。さらに、調査における負担を考慮し、項目を一部省略した。データの分析は、統計ソフトのSPSSを使用した。
結 果
 まず、原因帰属様式に関して、課題の成功・失敗場面、友人関係の成功・失敗場面のそれぞれに対して、内的要因(課題場面であれば、努力・能力・体調と気分。友人関係場面であれば、努力・性格・印象)と、外的要因(課題場面であれば、課題の難易・運。友人関係場面であれば、相手の性格・運)のどちらに帰属させたかを分類した。その上で、帰属様式における幸福感得点の平均値の差を明らかにするため、t検定を行った。その結果、友人関係の成功・失敗場面において、内的帰属と外的帰属の間の幸福感得点に有意な差がみられた(t(131)=3.29, p <.001)、(t(120)=2.27, p <.025)。課題場面においてはいずれも有意な差はみられなかった。次に、自己決定理論に基づく学習動機づけ尺度の4つの下位尺度(内発調整、同一化調整、取入調整、外的調整)と主観的幸福感の相関を求めた。その結果、内発調整(r=.304(p <.001)、同一化調整(r=.318(p <.001)、取入調整(r=.226(p <.001)、外的調整(r=-.169,n.s.)であった。
考 察
本研究の結果から、友人関係の成功・失敗場面(友達に親切にされた理由、友達にいじわるされた理由)のいずれも、外的要因に帰属させるよりも、内的要因に帰属する方が主観的幸福感が高いことが示された。友人関係場面の内的帰属において、成功場面では、幸福感を高める在り方が強調されたと考えられる。失敗場面では、内的要因に帰属することが、反省的傾向を示し、幸福感と結びついているのではないかと考えられる。これは、上述した北山(1995)の指摘に共通する側面があると考えられる。すなわち、日本人に特徴的な自己卑下的な原因帰属スタイルが、日本の文化的特徴を経由することで幸福感と結びついたと考えられる。また、自己決定性における学習動機と幸福感の関連について、外的調整のみが幸福感と相関を示さなかった。これは、学習の価値を少しでも内在化することが出来ていれば、ある程度の幸福感が維持されることを示唆していると考えられる。
引用文献
Kashima, Y. & Triandis, H.C., (1986), The selfserving bias
in attributions as a coping strategy: A cross cultural
study. Journal of Cross Cultural Psychology, 17,83-97.
北山忍・高木浩人・松本寿弥 (1995). 成功と失敗の帰因 ‐日本的自己の文化心理学‐ 心理学評論,38,247-280.
黒田祐二・有年恵一・桜井茂男(2004)大学生の親友関係における関係性高揚と精神的健康との関係 -相互協調的‐相互独立的自己観を踏まえた検討- 教育心理学研究, 52,24-32.
文部科学省. 子供の発達段階ごとの特徴と重視すべき課題 2002. 小児看護, 25(2).

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