発表

2AM-038

マインドフルネスを用いた介入の効果を調整する個人特性

[責任発表者] 高山 千絵:1
[連名発表者] 杉浦 義典:1, [連名発表者] 砂田 安秀:1, [連名発表者] 田村 紋女:1
1:広島大学

目 的
 マインドフルネスとは“今ここでの経験に,評価や判断を加えることなく,能動的に注意を向ける” という一種の心理状態(Kabat Zinn, 1990)と定義されている。マインドフルネスを用いた心理療法では,慢性的な痛みやストレスの低減,抑うつ,摂食障害の改善といった効果があることが見出されている(春木他, 2008)。同様に,簡易的なマインドフルネス瞑想を用いた実験でも痛みやストレスの低減効果がみられている。このように,マインドフルネスは心理的症状との関連や,その関連においてメタ認知や自己制御を媒介変数としてメカニズムが検討されてきた。一方で,介入においてマインドフルネス瞑想の効果に個人差があるにも関わらず,個人特性の影響を検討した研究は乏しい。しかし,個人特性の一つである愛着は,不安,抑うつに影響を及ぼす対人関係との関連が示されており(Bartholomew and Horowitz, 1991; Shaver and Mikulincer, 2007),セルフ・コンパッションはマインドフルネスとの関連が示されている(Neff, 2003)。以上から,本研究ではマインドフルネスが不安,抑うつを下げる効果を調整する変数として愛着,セルフ・コンパッションを検討することを目的とする。
方 法
 調査対象者 呼吸瞑想を行う実験群と読書を行う統制群の2群を設けランダムに振り分けた。実験群は大学生15名(男性6名,女性9名,平均年齢20.27 ± 1.39)を対象とした。統制群は大学生15名(男性7名,女性8名,平均年齢20.40 ± 1.20)であった。
効果指標 1気分:Visual Analogue Scale (VAS)不安,憂鬱,緊張,楽しさ,怒り,冷静さ,心地よさ,集中,注意
調整変数 2愛着:一般他者を想定した愛着尺度(ECR GO; 中尾・加藤, 2001),3セルフ・コンパッション:セルフ・コンパッション尺度(SCS J; 有光, 2014)
 手続き 実験群は,気分質問紙に回答した後,心理教育,実践の順で実施した。実践ではマインドフルネス瞑想の中でもプログラムの初期に用いられ,マインドフルネスの理論と実践が最も凝縮されたエクササイズとされている呼吸瞑想を用いた(Segal et al., 2002)。実践後,再度気分質問紙に回答した後,個人特性質問紙に回答した。教示は参加者の背後から口頭で行った。統制群は,実験群と同様の手順で質問紙に回答し,実践では読書を行った。
結 果
 群と時点の効果を検討するために,2要因2水準混合デザインの分散分析を行った(Figure1, 2)。楽しさを従属変数とした結果,群と時点の交互作用が有意だった(F (1,28) = 6.19 ,p < .05)。冷静さを従属変数とした結果,実験群のみ時点の主効果が有意だった(F (1,28) = 9.06 ,p < .01)。

実験群に関して,個人特性の影響を検討するために得点の変化量(pre-post)と個人特性の下位因子の積率相関分析を行った(男性: Table 1, 女性: Table 2)。その結果,男性では「愛着回避」と憂鬱に強い正の相関が,「自己批判」と憂鬱に強い正の相関が示された。女性では「自分への優しさ」と緊張に強い正の相関が,「共通の人間性」と緊張に強い正の相関が示された。

考 察
分散分析の結果,呼吸瞑想を用いた短時間のマインドフルネス瞑想において即時的な気分の改善の効果があることが示された。また相関分析の結果,男性では愛着回避,自己批判が,女性では自分への優しさ,共通の人間性が呼吸瞑想の効果を調整することが示された。神経症傾向が高い人はマインドフルネスがより有効に働くこと(Ma S. & Teasdale J., 2004)から,素因が高いほどマインドフルネスの効果も高くなることが考えられる。したがって,個人特性が素因となってマインドフルネス瞑想の効果を調整する効果があり,そのメカニズムが男女で異なる可能性が示唆された。

引用文献
Arch,J.J., & Craske,M.G.(2006). Mechanisms of mindfulness: Emotion regulation following a focused breathing induction. Behaviour Research and Therapy, 44, 1849 4858.

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