発表

2AM-037

日本語版Mini-CERTS(Cambridge-Exeter Repetitive Thought Scale) の信頼性・妥当性の検討

[責任発表者] 神原 広平:1,2
[連名発表者] 吉良 悠吾:1, [連名発表者] 尾形 明子:1
1:広島大学/日本学術振興会特別研究員DC, 2:日本学術振興会特別研究員DC

目 的
 反復性思考は,頻繁に生じる自己や世界についての思考である (Segerstorm et al., 2003)。反復性思考は抑うつを予測するなど非機能的結果をもたらす一方で,問題解決の促進といった機能的結果ももたらす (Watkins et al., 2008)。Watkins (2008) は,反復性思考に関する幅広い論文をレビューし,“処理モード”が反復性思考の機能性を分ける一因と述べている。処理モードとは,反復性思考の抽象性であり,抽象的処理モードの反復性思考 (以下,AAT) は,出来事や行動の意味の要約に関連した思考をもたらし,具体的処理モードの反復性思考 (以下, CET) は,出来事や活動の詳細に焦点化した思考を生じさせる。例えば,ある会社員が上司から書類の不備を指摘された際,「私はいつも指摘されている,なぜ指摘されるのだろうか」はAATであり,「上司に不備で指摘された」はCETである。失敗やネガティブイベントに対するAATは,その後のネガティブな気分の増加 (Moberly & Watkins, 2006) といった非機能的結果をもたらす。反復性思考の処理モードを測定する質問紙は,The Mini-CERTS (Cambridge-Exeter Repetitive Thought Scale; Douilliez et al., 2014) がある。この尺度は,Watkins (2008) の処理モードの分類の2因子構造を想定した尺度であるが,日本語版尺度は作成されていない。本研究は,Mini-CERTSの日本語翻訳を行い,因子構造の妥当性および基準関連妥当性を検証する。
方 法
対象者 大学生222名 (男性108名,女性94名,不明20名,平均年齢=20.32,SD=1.66) に対して質問紙を配布した。
測定尺度 (1) 日本語版Mini-CERTS 普段の反復性思考について訊ねる尺度であり16項目で構成される。下位因子として,AAT (項目例:“私は頑なに同じようなことばかり考えてしまう”) とCET (項目例:“私は細かく分析せずに周りの変化を感じ取ったり,それに反応したりできる”) がある。それらの項目に対する当てはまりを,1 (“ほとんどない”) から4 (“ほとんどいつも”) の4件法で尋ねた。(2) 抑うつ症状 小嶋・古川 (2003) により作成された日本語版BDI2を使用した。(3) 心配  本岡他 (2009) により作成された日本語版Penn State Worry Questionnaireを使用した。(4) 反すう Hasegawa (2013) によって作成された日本語版Ruminative Responses Scaleを使用した。
手続き 原版との概念的等価性を担保するために,尺度翻訳に関する基本指針 (稲田,2015) にのっとり,翻訳を実施した。その後,質問紙を集合調査および縁故法で配布した。本調査は,広島大学大学院教育学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結 果
 探索的因子分析を実施し,因子負荷量が.3を切る項目を除外したところ,16項目中4項目が除外された (Table 1)。確証的因子分析の結果,4項目を除いた12項目の適合度が原版通りの16項目の適合度よりも良い指標を示し (GFI = .906,AGFI = .861,CFI=.782,RMSEA=.087),12項目のCronbachのα係数は,AAT: α = .65 CET: α = .69であった。よって以降は12項目版で解析した。AATは心配,反すうといった非機能的な反復性思考と高い正の相関がみられ,CETは弱い正の相関もしくは無相関であった。さらに,抑うつを目的変数とし,Mini-CERTS,反すう,心配を説明変数に投入した重回帰分析を実施したところ,AATが抑うつの強さを有意に予測した一方で (β = .216,p < .05),CETは抑うつの弱さを有意に予測した (β = .-148,p < .05)。
考 察
 本研究より,信頼性および妥当性を有した日本語版のMini-CERTS (CERTS-J) が作成された。しかし,原版と異なり,4項目が除外され,CETは従来の非機能的な反復性思考である反すうや心配と負の相関を示さなかった。一方で,CERTS-Jは,原版の構造よりも適合度が良く,従来の反すうや心配といった非機能的な反復性思考の尺度と異なり,AATが抑うつの増加を予測し,CETは抑うつの減少を予測するといった,反復性思考の機能的弁別が可能であることが示された。CERTS-Jによって,本邦の臨床場面において,非機能的な思考と適応的な思考の変化を同時に測定・検討することが可能になると考えられる。

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