発表

2AM-036

コミュニケーションロボットとの関わりが大学生の攻撃性および気分に及ぼす影響 ーオウム返し機能に着目してー

[責任発表者] 桜井 美加:1
[連名発表者] 大浦 邦彦#:1, [連名発表者] 神野 誠#:1, [連名発表者] 三上 可菜子#:1
1:国士舘大学


目 的
 本研究の目的は、コミュニケーションロボットとの関わりが、大学生の気分や生理的反応に及ぼす影響について検討することである。さらに大学生の攻撃性の度合いにより、心理的効果が異なるかどうかについて検討することにより、同類のロボットでよいのか、機能の異なるロボットが対象によって求められるのかを明らかにする。大学生を対象としたコミュニケーションロボットによる心理的効果研究については、齋藤・椎塚(2008)がコミュニケ―ションロボットのイフボットを使用して、ストレス軽減を目的とした会話が掲載されているロボットの開発を試みた結果、良好な気分がpost-testで示されている。しかし語彙が少ない、作成したシナリオと被験者にずれがあるなど、課題が見られる。
本研究は、カール・ロジャーズが提唱したカウンセリング技法「オウム返し」に着目した。オウム返しは、会話者にとって、対話は特に深まらないが、侵襲的でなく、自分の意思決定が尊重される望ましい方法として、広く用いられてきた。これに近い機能を有しているのが、まねっこ豆シバ(株)オスト製)(ここでは「オウム返しロボット」と呼ぶ)である。オウム返しロボットと対話することで気分や生理的反応に良い影響をもたらすのではないかと考えた。さらに、オウム返しロボットとの関わりと被験者の攻撃性の関連性を明らかにする。
方 法
・研究内容:大学に設置されている実験室において、実験協力者に、オウム返しロボットとふれあい、予めノートPCで設定された順に、大学生活、友人関係、家族関係の悩みを豆芝に話すことを促すように設定した。所要時間は15分である。
・対象:大学生12名(男性8名、女性4名)。
・期間:2017年12月から2018年4月まで。
・質問紙:ベースラインの測定として、自記式大学生版能動的・反応的攻撃性尺度(濱口,2017)を使用した。能動的攻撃性は、他者支配欲求、攻撃有能感、攻撃肯定評価、欲求固執、報復意図でそのうち攻撃肯定評価と欲求固執は十分な信頼性が得られなかったため除外し、3尺度使用した。反応的攻撃性は易怒性、怒り持続性、怒り強度、外責的認知で、そのうち外責的認知は十分な信頼性が得られていなかったため除外し、3尺度使用した。自分自身のふだんの様子や考え方について、5件法で回答を求めた。短縮版POMS2®は、被験者のその日の気分を測定し、実験終了後も実施した。さらに、オウム返しロボットについての印象や感想を自由記述で求めた。
・生理的指標:脳波を測定する機器は、Fp1-Electrometer-Zで前頭葉中央部(Fp1)1chのみで測定した。
結 果
1.実験前後の気分の影響:オウム返しロボットと関わる前後で気分をPOMS2で測定し、得られた結果TMD得点の各平均値がpre-test=13.42(409.91)、post-test=1.58(222.63)で、t検定したところ、t=3.305,p<.05で、post-testのほうがネガティブな気分が減少することがわかった。
2.反応的・能動的攻撃性が実験後の気分に寄与する度合い:反応的攻撃性x、能動的攻撃性y、TMD得点をzとし、その関係を最小二乗法によりモデル化したものを以下に示す。
Pre z=0.99x-0.69y 定数項含めると z=1.31x-0.36y-31.7
Post z=0.49x-o.44y 定数項含めると z=0.83x-0.09y-33.3
この結果は、被験者がもともと持っている攻撃性の寄与が、実験後のTMD得点に反映される割合が小さくなっていることを示唆している。
3.自由記述からみた印象など:「かわいい」「楽しい」と回答したものが12名中9名、「ぬいぐるみを連想する」3名、「動物のペットを連想する」が1名であった。一方で、「もうちょっと自分の言うことを聞き取って真似できたらいいのに」など、ロボットの機能改善を求める回答もみられた。
4.実験中の脳波測定結果:オウム返しロボットとの関わりの初期の段階に、α波の割合が増加する傾向になった。
考 察
オウム返しロボットと関わることにより、混乱、緊張-不安、怒り-敵意、疲労などのネガティブな気分が緩和されることがわかった。また被験者の反応的攻撃性および能動的攻撃性ともに、オウム返しロボットとの関わりにより、気分の変動への寄与が小さくなる。つまり攻撃性が高い人でも気分がポジティブに変化することが推測される。生理的指標においても、α波が増大することが認められ、気分のリラックスが示された。これらのことから、オウム返しロボットは、ヒトに対してポジティブな効果を有することが示唆された。一方で、自由記述ではオウム返しロボットについておおむね好印象を抱いているものの、聞き取りが十分でない時があったなど、コミュニケーション機能についてはまだ改善の余地が残されている。
引用文献
齋藤智子・椎塚久 2008 コミュニケーションロボットとの感性的対話による気分の変化について 第51回自動制御連合後援会, 山形大学工学部
濱口佳和 2017 大学生の能動的・反応的攻撃性に関する研究-尺度構成と攻撃的行動傾向との関連の検討-教育心理学研究,65,248-264.

詳細検索