発表

2AM-034

精神的回復力が登校行動持続要因を介し登校行動に及ぼす影響

[責任発表者] 加藤 陽子:1
1:十文字学園女子大学

目 的
 加藤(2011)は,女子大生・短大生を対象に登校行動を持続させる要因(以下,登校行動持続要因)と登校回避感情および登校率の関連性について検討し,登校行動持続要因を多く保有していないほど登校回避感情が高まり登校率が低くなるが,登校回避感情が高い場合でも,登校行動持続要因を多く保有していれば登校率が高い傾向にあることを明らかにした。つまり,登校行動持続要因を多く保有することは,登校への意味づけを相乗的に強め,登校行動を持続させやすいといえるだろう。学生支援の立場に立てば,登校行動持続要因の保有数を増加させることは,継続的な登校を促し,学生を早めの対応と適切なケアを望める環境に置くことができると考えられ,持続要因保有数の増加への働きかけはすなわち不適応の予防策になりうるといえるだろう。
 そこで,本研究では,登校行動持続要因の保有数および実際の登校率に影響を及ぼす要因を検討すべく,精神的回復力に着目する。精神的回復力は,困難な状況にさらされても精神病理的な状態に陥らない,あるいは回復できる個人の心理的弾力性を指し,ストレス反応の抑制や自尊感情の維持などと関連することが示されている(小塩ら,2002)。大学生の登校行動は本人の自主的な行動であり,ストレスや学業不振などの要因が容易に登校しぶりを起こすことを考えると,精神的回復力が登校行動持続要因保有数や登校率に影響を及ぼすことが予想される。加藤(2016)は,精神的回復力のうち新奇追求や肯定的な未来志向の高さが同時点の登校行動持続要因保有数を介して実際の登校率に影響を及ぼすことを明らかにしている。ただし,それらがのちの登校行動を維持しうるのかどうかについての言及はなされていない。実際に不適応への予防的介入を試みる際には,同時点のみならずのちの登校行動を予測する要因を検討する必要があるだろう。
 そこで本研究では,精神的回復力の高さが登校行動持続要因保有数を介して,のちの登校率および出席率,持続要因保有数に及ぼす影響について継続的調査による検討を行う。なお,本研究では,学校に登校し続けられる要因について明らかにすることを目的としたため,大学に入学してある程度大学の生活に慣れたと考えられる2年生を調査対象に7月と翌年1月の2時点で調査を実施することとした。
方 法
 調査対象者:協力が得られた首都圏にある私立4年制女子大学に在籍する学生208名のうち,2時点ともに回答漏れのなかった173名(平均年齢19.16歳;SD =.81)。
 調査時期と手続き:2015年7月および2016年1月に大学の授業時間の一部を利用して集団実施した。
 調査内容:(1)登校行動持続要因チェックリスト(加藤,2011):40項目5件法,(2)精神的回復力尺度(小塩ら,2002):「新奇追求」8項目,「感情調整」8項目,「肯定的な未来志向」5項目からなる全21項目5件法,(3)授業への出席率:授業のある日数を100%としたうちの授業に出ている割合,(4)登校率:授業のある日数を100%としたうちの授業への出席率と授業に出てはいないが大学にいる割合を加算した割合,について回答を求めた。
結 果 と 考 察
 精神的回復力や登校行動持続要因の保有数と登校率・出席率との関連について縦断的に検討するため,7月の精神的回復尺度の各下位尺度を説明変数,7月の登校行動持続要因保有数を媒介変数,1月の持続要因保有数・登校率・出席率を目的変数とした強制投入法による繰り返しの重回帰分析を行った(Figure 1)。なお,保有数の分析にあたっては〈保有している=1点〉(「あてはまる」「ややあてはまる」)と〈保有していない=0点〉(「どちらでもない」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」)に得点を補正した上で,各項目の加算得点を登校行動持続要因の保有数とした。
 分析の結果,精神的回復力尺度のうち,7月時点の肯定的な未来志向が同時点の登校行動持続要因の保有数を介し,1月の持続要因保有数および登校率,出席率を高めることが明らかとなった。すなわち,精神的回復力の中では,将来の見通しは明るいと感じる,将来の目標のために努力しているなどの肯定的な未来志向が高い者ほど,登校行動持続要因を多く保有しており,のちの持続要因保有数も多く,登校率や出席率も高い傾向にあったといえる。
 登校行動持続要因の保有数の多さが登校率の高さと関連することを勘案すると,登校行動持続要因保持および登校率,出席率の向上のためには,特に肯定的な未来志向の上昇に介入し,持続要因を増加させることが必要だと考えられる。また,大学生活においては,夏休み前の登校行動持続要因の保有数がその後の登校行動持続要因の保有数の多さにつながる可能性が示唆されたことから,継続的登校のためには定期的に保有数の検討を行う必要があることも示唆された。

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