発表

2AM-030

心理専門職への援助要請に影響を与える要因の検討ーセルフ・コンパッションとセルフ・スティグマ,恥の観点からー

[責任発表者] 佐藤 修哉:1
[連名発表者] 石村 郁夫:2
1:日本学術振興会,東京成徳大学,クイーンズランド大学,国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター, 2:東京成徳大学

目 的
人々のメンタルヘルスの課題を解決するために,予防的な観点からのアプローチが重視されている。そのためには,心理的な危機に陥った場合に,必要があれば専門家を含む他者へ援助要請できることが重要である。重症化する前に介入できれば,早期に問題を解決できる可能性が高まる。そのためには自らの状態に気づき,自分をケアしようとする志向性が求められる。そこで,本研究では,セルフ・コンパッション(以下,SC)(Neff, 2003)と援助要請の関連について検討することとした。援助要請とSCに正の相関を見出した先行研究も存在している(e.g., Brion, Leary, & Drabkin, 2014)。
援助要請に関連のある変数を明らかにし,その結果に基づいて介入を実施することにより,援助要請を促進することが可能になるかもしれない。
著者らのこれまでの研究によれば,非専門家である友人への援助要請に関しては,SCと援助要請の間に直接関連があることが明らかとなった。しかし,専門家である心理専門職に対しては,直接の関連がみられなかった(佐藤・石村,2018)。そこで,改めて関連する変数を検討した。援助要請は恥感情(島田・高木,1994)やセルフ・スティグマ(Ina & Morita, 2015)により抑制されることが明らかになっていることから,これらの変数の関連も併せて検討することとした。
方 法
全国の大学生を対象として,ウェブ上における調査を実施した。回答画面の作成とデータ収集は専門業者に委託した。その結果,420名から回答を得た。各サンプルを注意深く観察し,明らかな不正回答と判断できるものを除外した。その結果,378名の回答を分析に使用することとした(男191名,女187名,平均年齢20.76歳,標準偏差1.36)。有効回答率は90%であった。
使用した尺度は(a)日本語版SC尺度6因子26項目5件法,(b)援助要請することに対するセルフ・スティグマ尺度(SSOSH)日本語版2因子10項目5件法,(c)日本語版メンタルヘルスの問題に対する態度尺度5因子35項目4件法,(d)日本語版心理専門職への援助要請に関する態度尺度短縮版(ATSPPH-SF)1因子5項目4件法であった。
なお,本研究は東京成徳大学大学院心理学研究科研究倫理審査委員会の承認を経て実施された。
結 果
まず,下位因子ごとに相関係数を算出した。その結果,SCと援助要請については弱い有意な相関を示した(.144-.202)。
ATSPPH-SFを従属変数として,独立変数との関連を明らかにするため,ステップワイズ法にて階層的重回帰分析を行った。第1ステップでは性別と年齢を投入し,第2ステップではSCの因子(自己批判,人としての普遍的体験,孤独,マインドフルネス,過剰なとらわれ)を投入した。第3ステップにはコンパッションの観点からの恥の因子(メンタルヘルスの問題に対する態度,外的な恥とスティグマへの意識,内的な恥,自分が罹患した場合の反映的な恥,家族が罹患した場合の反映的な恥)を投入した。第4ステップでは,セルフ・スティグマの因子(不適応感,自信のなさ)を投入した。
その結果,調整済みR2の変化量は順に.057,.100,.117,.208と増加しており,説明率が増していた。最終的に,自己批判(t=2.93, p=0.04),自分が罹患した場合の反映的な恥(t=5.20, p<.001),内的な恥(t=-2.15, p=.032),自信のなさ(t=-6.64, p<.001)が有意な関連を示した。
考 察
心理専門職への援助要請には,SCの自己批判因子,恥の自分が罹患した場合の反映的な恥因子,内的な恥因子,セルフ・スティグマの自信のなさ因子が関連していることが明らかとなった。
SCと援助要請との間に,恥感情やセルフ・スティグマを媒介変数として考慮することで有意な関連を示すことが明らかとなった。SCの中でも自己批判因子が関連していたことから,介入を実施する際にはこれを減じるような介入が必要と考えられる。その他に,恥とセルフ・スティグマに関しても有意な関連を示す因子が確認されたため,これらに焦点をあてた介入の実施が,援助要請促進のために効果的だと考えられる。
引用文献
Brion, J. M., Leary, M. R., & Drabkin, A. S. (2014). Self-compassion and reactions to serious illness: The case of HIV. Journal of Health Psychology, 19, 218-229.
Ina, M. & Morita, M. (2015). Japanese university students’ stigma and attitudes toward seeking professional psychological help. Journal of Japanese Clinical Psychology, 2, 10-18.
Neff, K. (2003). Self-compassion: an alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and Identity, 2, 85-102.
佐藤修哉・石村郁夫(2018).セルフ・コンパッションと援助要請の関連 日本SEL研究会第8回大会
島田 泉・高木 修(1994).援助要請を抑制する要因の研究1―状況認知要因と個人特性の効果について― 社会心理学研究,10(1),35-43.

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