発表

3PM-022

いま手の中にある機器に,家族はどうすべきか -インターネット嗜癖者の治療効果に対する家族の関与の影響 -

[責任発表者] 三原 聡子:1,2
[連名発表者] 藤 桂:3
1:筑波大学/久里浜医療センター, 2:久里浜医療センター, 3:筑波大学

問題と目的
 ネットの急速な普及により,ネット嗜癖は各国で深刻な問題となりつつある。わが国においても, Mihara et al.(2016)が,全国の中高生約10万人を対象とした調査より,ネット嗜癖が疑われる者が51万8千人にのぼると推計している。こうした各国におけるネット嗜癖問題の深刻化をうけ,Billieu et al.(2017)などは,ICD-11において診断基準に含めることの重要性を強く指摘している。さらに,ネットの使用年齢および使用開始年齢の低年齢化も指摘されており,平成29年の「低年齢層の子どものインターネット利用環境実態調査」によると(内閣府,2017),3才児はすでに28.2%,7歳児で49.7%,0歳児ですら3.1%がネットを使用した経験があることも報告されている。
こうしたネット使用年齢の低下に伴い,ネット嗜癖問題も低年齢化していくことは十分に予測される。さらに,ネット嗜癖問題が低年齢化してゆくとすれば,その解決に向けて自ら相談機関に出向くことができなかったり,有効な情報を自身で収集したりできないというケースも増えていくことと推察される。このような問題とともに今後増加していくと予測されるネット嗜癖児の介入と治療に関しては,家族の関与が大きな影響をもたらすと考えられる。
そこで本研究では,通院中のネット嗜癖者の家族を対象に追跡調査を行い,通院期間中の家族の関わり方が,嗜癖者本人に対する治療の効果にどのような影響を及ぼすかを検討する。
方 法
調査協力者 2016年12月から7か月間に久里浜医療センターネット依存専門治療外来を受診した患者の家族36名。その続柄は,母親27名(75.0%),父親8名(22.2),祖母1名(2.8%)であった。嗜癖者本人の性別は,男性が97.3%を占めていた(年齢=17.0, SD=3.30)。
測定内容・手続き まず1回目の調査では,嗜癖外来の初診時に同伴した家族を対象に,嗜癖者本人のネット嗜癖状態の程度について,Diagnostic Questionnaire(DQ;Young, 1998)の邦訳版(久里浜医療センター,2011)を用いて尋ねた(8項目2件法)。続いて2回目の調査(郵送にて質問紙を送付)として,初診から5か月後の時点で,第一に,通院期間中において「本人がネットやゲームをはじめたら,無理にでもやめさせるようにしていた」「ネットの使用に関して本人の希望には一切反対しないようにしていた」「本人のネット使用について,以前よりも厳しくするようにした」という3項目(4件法)を尋ね,本人のネット使用に対する家族の関与の仕方を確認した。第二に,「本人の気持ちや意見,話に耳を傾けるようにしていた」という,嗜癖者への共感的な接し方についても尋ねた(4件法)。さらに,3回目の調査(郵送にて質問紙を送付)として,初診から6か月後の時点で,嗜癖者本人のネット嗜癖の状態について再度DQを用いて尋ねた。なお3回目では,通院期間中に,センターへの入院経験があるかも確認した。
結果と考察
 通院期間中の本人のネット使用に対する家族の関与のすべての項目において平均値を算出し,そのうえで平均値よりも高い場合には高群,低い場合には低群として分割した。そして,初診時および来談6か月後時点それぞれのDQの得点を参加者内要因(初診時or来談6か月後),通院期間中の本人のネット使用に対する家族の関与を参加者間要因(高群,低群)とする2要因混合計画分散分析を行った。その際,入院経験の有無を共変量として投入した。
分析の結果,「本人がネットやゲームをはじめたら,無理にでもやめさせるようにしていた」「ネットの使用に関して本人の希望には一切反対しないようにしていた」「本人のネット使用について,以前よりも厳しくするようにした」の3項目に関して,交互作用が有意もしくは有意傾向となった(順に,F(1,31)=2.93, p<.10, ηp2=.09;F(1, 31)=4.28, p<.05, ηp2=.12;F(1, 31)=3.91, p<.10, ηp2=.11; F(1, 30)=2.96, p<.10, ηp2=.09)。単純主効果検定の結果からは,本人がネットやゲームをはじめた際に,無理にでもやめさせるようにしたり,以前よりも厳しく接するようにしたりしたという家族の関与は,治療効果を促進することが示された。逆に,ネットの使用に関して,本人の希望には一切反対しないようにするという関与は,治療効果を阻害していた。
また嗜癖者への共感的な接し方についても同様に分析した結果(Figure 1),交互作用が有意となった(F(1,30)=5.99, p<.05, ηp2=.16)。単純主効果検定の結果より,このような共感的な家族の関与は,治療効果を促進することが示された。
したがって本研究からは,ネット嗜癖本人の通院期間中に,その家族がどのように本人に関わるかが,治療効果を規定している可能性が示された。より具体的には,本人の話には共感的に耳を傾けつつも,不適切なネット使用に関しては毅然とした態度を取るという関与が,ネット依存の治療効果を促進する可能性が伺われた。このように,治療機関における援助職によるアプローチだけではなく,家族からの協力が伴ってこそ,その治療効果が生じることが示唆された。

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