発表

2EV-020

集団間和解による自集団肯定化効果ー泥棒洞窟実験の追試を通じた集団間ステレオタイプ変化の検討ー

[責任発表者] 熊谷 智博:1
1:法政大学

目 的
 集団間紛争において和解が重要であるのは、相互依存関係を形成にある。それによって更なる相互攻撃行動を予防するという、将来にわたる肯定的効果が期待できる。これらの根底にあるのは外集団に対する否定的認知の好転である。しかし和解が紛争当事者自身の内集団に対する認知に与える影響についてはあまり検討されていない。和解のための手段として有効な方略として謝罪が考えられるが、大渕(2015)によれば謝罪には他者からの印象を回復する効果があるが、この謝罪による印象回復は他者の心理過程だけではなく、印象が回復されたという自己認知においても生じると考えられる。同様に集団間関係においても、和解は紛争相手や周囲の第三者のみならず、自集団に対する肯定的変化を生じさせると考えられる。特に集団間紛争において敗北した集団は自集団に対する認知が否定的になると考えられるが、本研究ではそれが和解によって肯定的な状態へと回復すると予測した。この点を検討するため、本研究では、Sherif et al., (1961)の泥棒洞窟実験を半世紀ぶりに追試し、集団間競争による集団間認知の生起と強化、及び和解による自集団への肯定化効果を検討した。
方 法
 参加者:20歳から22歳までの日本人男女16名が実験に参加した。
 手続き:参加者は東京都内の指定された場所に集合し、バスにて東京都多摩地区のキャンプ場へ移動した。そこで年齢、体格、性別が均等になるように2つのグループ「赤組」「白組」と分けられ、キャンプ場内の離れた場所にある小屋で生活するように指示された。実験は3日間にわたって実施され、1日目はグループ分けの後、グループ内で自由時間を過ごし、最後に集団間競争課題(夕飯勝負)を行った。2日目は3つの集団間競争課題(学力テスト、釣り、ドッジボール、夕飯勝負)を行った。3日目の午前中は4つの集団間競争課題(縄跳び、綱引き、ムカデ競争、ボール運び)を行った。その後、昼食時に集団間和解の為に、上位目標として外集団成員と共同でバーベキューを行った。
1日目の集団形成直後、2日目終了後、3日目競争課題終了後、及び和解課題終了後に内集団と外集団のそれぞれに対する「有能さ」認知(5項目)「温かさ」認知(5項目)(Fiske et al.,1999)の程度を7件法で回答させた。3日目終了時、集団間競争課題の成績は、2日目終了時は紅組の3勝2敗、3日目終了時は白組の6勝3敗であった。

結 果
 各段階にて回答者が回答した「有能さ」と「温かさ」の両方に対して、赤組と白組で個別に内集団、外集団に対する平均得点を求めた。結果は表1の通りであった。

考 察
最終的には敗者であった赤組の内集団に対する「有能さ」認知得点は、集団間競争課題の結果に応じて変化しており、3日目終了後には最も低下していた。しかし和解後にはそれが勝者側である白組に対する認知と同程度まで回復していた。この事は、集団間紛争によって敗れた側の集団は対立集団と和解によって否定的になった自集団認知を回復する事を示唆している。従って和解は単に紛争を終結させ集団間関係を改善させる点に寄与するだけではなく、敗北した側の集団成員の自集団認知と自尊心の回復に寄与することが考えられる。
一方、「温かさ」認知に関しては、勝敗とは無関係に一貫して外集団を内集団よりも温かい集団と認知しており、内集団バイアスが持続する一方で、和解によって紛争時よりも外集団の温かさ認知が肯定的に変化することが示された。これらの結果から、集団間和解による集団間認知は異なる経緯で建設的効果を発揮することが示唆された。

引用文献
Fiske, et al.,(1999).(Dis) respecting versus (dis) liking: Status and interdependence predict ambivalent stereotypes of competence and warmth. Journal of Social Issues, 55, 473-489.
大渕憲一(2015).失敗しない誤り方 CCCメディアハウス
Sherif, et al.,(1961).Intergroup conflict and cooper

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