発表

2AM-018

集落の多層的な社会的ネットワークの分解

[責任発表者] 小森 政嗣:1
[連名発表者] 飯田 梨乃#:2, [連名発表者] 箕浦 有希久:2,3, [連名発表者] 一言 英文:4, [連名発表者] 竹村 幸祐:5, [連名発表者] 内田 由紀子:2
1:大阪電気通信大学, 2:京都大学こころの未来研究センター, 3:同志社大学赤ちゃん学研究センター, 4:福岡大学, 5:滋賀大学

目 的
 本研究プロジェクトでは,これまで京都府京丹後市の集落を対象に住民の幸福度やソーシャル・キャピタルの調査を行ってきた.地域の集落においては,その構成員は複数の社会的なネットワークに属しているため,ある地域の社会的関係の全体像を明らかにするためには,この多層的な社会的ネットワークを複数のサブネットワークに「分解」する必要がある.本研究ではポータブルAndroid端末を調査参加者に常に携帯させ,Bluetooth 通信でのすれちがい検知機能により,住民同士の空間的近接をもとに社会的接触を長期間にわたり測定した.さらに,調査参加者同士の社会的接触の時系列データ行列を分解することで,社会的接触因子の抽出を行い,多世代が参加するネットワークの特徴を分析する.

方 法
 同一の集落に居住する90名に携帯型デバイスを研究者もしくは調査協力者が配布した.そのうち,実際にデバイスを継続的に携帯していた58名を分析対象とした.調査期間は2017年12月1日から2018年3月31日までとした.
 調査参加者にBluetooth通信でのすれちがい検知機能を搭載した小型Android端末(BL-01: BIGLOBE)を配布し,日中の社会的接触が生じた時刻を5分間隔で計測した.この端末には,近くにあるBluetooth機器のMACアドレスと時刻を記録し,3G回線を通じて記録したデータをオンラインストレージにアップロードする機能,および5分間隔でBluetoothアンテナをリフレッシュする機能を有するアプリケーションを搭載した.調査参加者には日中このデバイスを常に携帯するように,また,帰宅時には毎日充電するように指示した.

結 果 と 考 察
 解析期間中に,ある調査参加者の端末が他の調査参加者が所持する端末を検知した回数は,平均11.81回/日であった.本研究では,ある端末が他の端末を検知した際に,これらの端末所持者同士に社会的接触があったとみなした.
 全ての調査参加者の組み合わせについて,5分毎の社会的接触回数をもとに,30分ごとの社会的接触回数から社会的接触量を求めた(48エポック/日).これをI×Jの社会的接触行列 Yとする.この行列Yを社会的接触の時間パタンを表すI×K の基底行列Hと調査参加者の組み合わせに対応するK×Jの係数行列Uの積に分解することで,社会的ネットワークのサブネットワークを抽出する.ここで社会的接触行列Yおよび社会的接触の時間パタンを表すH,調査参加者間の組み合わせのつながりの強さを表すUは全て非負値であることから,非負値行列分解(NMF: non-negative matrix factorization)を用いた.目的関数がユークリッド距離規準のNMFを行った.因子数Kは,コーフェン相関係数および残差平方和を参考にK=4とした.
図1 社会的接触の因子分解
図2 各因子と対応する社会的接触生起パタン
図3 各因子と対応する社会的ネットワーク.色が濃いほど年齢が高い,○は女性参加者,□は男性参加者と対応する.
 因子ごとに,基底行列Hをもとに求めた社会的接触の生起日時(図2),および係数行列Uをもとに求めた社会的ネットワーク(図3)を示す.これらの結果から,第1因子は日常的に日中に生じる社会的接触と関連しており,様々な世代が参加していることがわかる.一方,第2因子は主に週末を中心に生起する社会的な接触と関連しており,このネットワークでは比較的高齢の参加者が中心となっていることがわかる.第3因子は本研究プロジェクトの活動と関連した社会的接触を反映している.
 本結果は,複雑な社会的関係が重畳した社会集団のネットワークを複数のサブネットワークに分解できることを示している. 今後は,各ネットワークと幸福度や多世代共創との関連を検討する.
本研究はJST-RISTEX 研究開発プロジェクト「地域の幸福の多面的側面の測定と持続可能な多世代共創社会に向けての実践的フィードバック」の一環として行われた.

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