発表

1EV-008

若年労働者の社会的困窮場面における援助要請意図

[責任発表者] 山本 謙治:1
[連名発表者] 齊藤 誠一:1
1:神戸大学


目 的
 「無縁化」が進んで久しい近年の日本社会 (浦, 2015) にあって,30歳代以下の世代は助けを求めずに孤立し,自殺死亡率も他の世代と比べ高止まりしている (厚生労働省, 2017) 。本研究では若年労働者の援助要請意図に焦点を当て,彼らの抱える中心的問題である経済問題・対人関係問題それぞれの場面における援助要請意図を家族・親しい友人知人・専門家という相手別に検討すること,およびその年齢や性差との関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
調査対象:20歳代および30歳代の被雇用者304名 (男性151名,女性153名) 。平均年齢30.56歳 (SD=4.80) 。
調査方法:株式会社マクロミルの全国モニターを対象としたweb調査を実施した。
調査内容:2つの場面 (負債がかさんで経済的に行き詰まった場面 (経済問題場面) および,上司との対人関係問題により退職を検討せざるをえなくなった場面 (対人関係問題場面) ) を呈示した。調査協力者には自分がぞれぞれの場面におかれたと想定してもらい,候補となる援助要請先 (経済問題場面においては家族・友人知人・専門職・支援団体の4つ,対人関係問題場面においては家族・友人知人・職場内窓口・職場外窓口の4つを設定) に対し,どの程度援助を求めようと思うかを「1.求めないと思う」から「5.求めると思う」の5件法で尋ね,これを援助要請意図得点とした。なお,援助要請先や援助要請意図得点の設定は永井 (2010) などの先行研究を参考とした。
調査時期:2017年12月
結果と考察
 2つの問題と援助要請先 (各4つ) の組み合わせ8場面のうち,援助要請意図得点に床効果のみられた「経済問題-対友人知人」を除く7場面について,年齢 (20代と30代の2水準) と性別 (男性と女性の2水準) を独立変数,援助要請意図得点を従属変数とする2要因分散分析を行った。
 7場面のうち,交互作用が有意であったのは「経済問題-対家族」のみ (F (1,300) =4.05 (p < .05) ) であった。以下に主効果に有意な差がみられた項目および単純主効果検定の結果を記す (Table1) 。
 年齢による差は,「経済問題-対家族」 (F (1,300) =4.39) および「対人関係問題-対友人知人」(F (1,300) =4.86) は5%水準で,「対人関係問題-対家族」 (F (1,300) =8.47) は1%水準で20代の方が30代よりも有意に高い援助要請意図得点であった。30代の方が20代よりも高い援助要請意図を回答した場面はなかった。
 性別に目を向けると,「経済問題-対家族」 (F (1,300) =7.19) は1%水準で,「対人関係問題-対家族」 (F (1,300) =15.74),「対人関係問題-対友人知人」 (F (1,300) =21.37) ,「対人関係問題-対職場内窓口」 (F (1,300) =13.24) の3場面については0.1%水準で女性の方が有意に高い援助要請意図を示した。一方,男性の方が有意に高い援助要請意図を示した場面はなかった。
 年齢性別の組み合わせについて見てみると,有意に高い援助要請意図を示したのはいずれも20代女性で,「経済問題-対家族」,「対人関係問題-対家族」,「対人関係問題-対友人知人」,「対人関係問題-対職場内窓口」の4場面では20代男性に対して1%もしくは0.1%水準で有意に高い援助要請意図を示したほか,「経済問題-対家族」,「対人関係問題-対家族」,「対人関係問題-対友人知人」の3場面では30代女性に対しても5%もしくは1%水準で有意に高かった。
 これまで援助要請意図の発達的変化を扱った研究はあまりみられなかったが,本研究においては,場面や相手により年齢による差がみられる局面とそうでない局面のあることが示された。そして,差のみられた局面においてはいずれも20代の方が30代よりも援助要請意図得点が高かった。また,性差については,女性の方が援助要請に対して積極的であるという従来の先行研究の傾向は概ね支持されたものの,年齢×性別の組み合わせまで検討すると,この傾向は20代に限られたものであり,30代同士を比較すると男女間で有意な差がみられた場面は存在しなかった。
 今後の課題として,援助要請意図における年齢差が発達的な傾向であるのか生年といった世代的要因によるものなのかといった問題や,援助要請意図に影響を与える要因を明らかにしていくことなどが挙げられる。

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