発表

1PM-010

歩きスマホ抑制のためのビジュアルコミュニケーションの研究 (2)歩きスマホ行動のアプリ計測での効果の検証

[責任発表者] 広田 すみれ:1
[連名発表者] 森 久美子:2, [連名発表者] 大山 和政#:3, [連名発表者] 小野寺 順#:4, [連名発表者] 越川 正治#:3, [連名発表者] 白井 郁男#:3
1:東京都市大学, 2:関西学院大学, 3:JR東日本研究開発センター安全研究所, 4:JR東日本秋田運輸区

目 的
 本研究では歩きスマホ抑制のため、従来とは異なる恐怖訴求表現のポスターの効果検証を全体の目的とし、森ら(2018予定)による顕在評価(怖さの程度)と潜在評価(ネガティブ感情の程度)から採用された2つのポスターを提示して駅構内での歩きスマホ行動をアプリで測定し、ポスター提示前後の行動の比較により効果を検討することを目的とした。
方 法
 研究は参加者間比較で1)顕在評価条件、2)従来条件、3)潜在評価条件を各1日行い、ポスター(表1)提示前後の歩きスマホ行動時間を比較した。歩きスマホ行動の計測は実験用アプリ(Android 5.0-7.1系)を用いた。このアプリでは歩きスマホの開始と終了の時刻及び位置データを取得するもので、1)Androidの歩数計機能が歩行を認識、2)画面がスリープ状態でない、3)端末の傾きが10~70度、の全てが揃うと歩きスマホ中と認識する。スリープ状態での歩行や端末が下向きで参加者が端末を見ていない状態での歩行は歩きスマホと判別されない。アプリ動作中でも参加者は普段通りスマートフォンを使用できた。起点はJR新宿駅付近のビル内の会議室で、参加者はそこから指定先(2か所。1,2回目で異なる)に行くことを求められた。目標地はいずれも新宿から1駅でホーム上を長く歩く状況を作ることを意図し、大久保駅は東京法務局新宿派出所、四ツ谷駅は迎賓館前とした。また1両目に乗るよう指示し、両駅でホーム上ほぼ端から端まで約200mを歩くようにした。会議室から東京法務局新宿派出所までの往復の所要時間は約40分、迎賓館前までは約50分であった。
 手続きは以下の通り。参加者は新宿駅近くのビル内の会議室に集合し、インストラクションを受けた。調査は「駅構内の案内や周知の分かりやすさ」を目的とすると伝え、実験参加及び実験用アプリについて同意を得、インストールしてもらった。続いて会議室から1回目の目的地へ鉄道で往復してもらった(事前)。その際参加者が固まらないよう30秒毎にスタートした。会議室帰着後は「ポスターのわかりやすさの評価」の名目で他3枚のダミー(いずれも啓発もの)と共に掲示されたターゲットのポスターを閲覧し、文字数等を評価した。続いて2回目(事後)の目的地へ鉄道で往復、帰着後実験用アプリをアンインストールし、本来の目的を明らかにして実験参加の意思を尋ねたが不参加を表明した参加者はいなかった。最後に当日提示のポスターについて森ら(2018予定)同様の質問に回答してもらった。参加者募集はサーベイリサーチセンター(株)に委託、同社の登録調査員とネット募集の関東近隣の都県在住の10-30代でAndroidユーザーである。有効実験参加者数は顕在評価条件26(男18,女9)、従来条件22(同16,13)、潜在評価条件25(14,15)であった。構内での実施では他の乗客に影響のないよう十分配慮した。
結 果
 歩きスマホ時間は「駅構内」を長方形で定義して算出し、事前処理として行動全体の比較では平均所要時間の比で調整、駅構内の比較にあたり駅の構造による通路の距離の違いを考慮し、当該範囲での時間は除外した。全体での歩きスマホの時間についてはMann-WhitneyのU検定で条件間の有意差は見られなかった。だが各人の行動変化をみると(図1)、行動全体では従来条件では2回目に大幅に歩きスマホの時間が長くなる参加者がいるのに対し、顕在評価条件ではほぼ同じ、潜在評価では若干短いなど多少の効果が見られ、また駅構内での行動でも同様の傾向が見られた。
考 察
 平均値ではポスターによる統計的有意差はなかったが個別には一定の効果、特に後者は駅構内について抑制傾向が見られた。ただし一部に極めて歩きスマホの時間の長い実験参加者がおり、依存傾向が影響していると推測される。
引用文献
森久美子・広田すみれ・大山和政・小野寺順・越川正治・白井郁男(2018予定)歩きスマホ抑制のためのビジュアルコミュニケーション効果に関する研究(1)顕在・潜在指標を用いた脅威アピール刺激の評価.日本心理学会第82回大会発表論文集.

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