発表

1AM-129

モノレール運転士のチェックリスト活用行動の促進~運輸指令からの指示に着目して~

[責任発表者] 高原 龍二:1
[連名発表者] 釘原 直樹:2
1:大阪経済大学, 2:東筑紫短期大学

目 的
 本研究は,モノレール運転士のチェックリスト活用行動に対する運輸指令からの指示の影響を確認することを目的としている。ワンマン運行のモノレール車内におけるトラブル対処行動へのチェックリストの影響に関する実験からは,概ね以下のことが示されている。(1)チェックリストを所持していることは行動の正確性に有意な影響を与えない,(2)チェックリストの参照は行動の正確性を高める,(3)チェックリストの参照は対処時間を長くさせる(高原・釘原, 2016; 2017)。従って,チェックリストを所持させるだけでなく,使用を徹底させることが求められることになるが,チェックリストを参照するための事前教育を行った実験でチェックリストを使用しない運転士がいたことなど,教育の限界も示されている。すなわち,運転士個人の資源に期待する運用では,チェックリストを用いた正しいトラブル対処は実現できないと考えられる。そこで,モノレール車内にはいないものの,運転士との連携をとる運輸指令とのコミュニケーションによって,チェックリスト使用行動を促進させ,行動の正確性を高めることが可能であるかを検証することとした。
方 法
 参加者 大阪高速鉄道(株)運転士50名を対象とした。
 実験日時 2017年11月13日(月)から18日(土)にかけて実験が行われた。
 手続き 実験は大阪高速鉄道(株)の災害心理委員会によって,運転士への教育訓練の一環として行われた。参加者は所属する班単位で運輸指令からのチェックリスト使用指示がある指示群,指示がない非指示群に無作為に割り当てられた。指示群は27名,非指示群は23名であった。参加者は研修室にて実験の説明を受け,同意書への署名を求められた。署名後,参加者は1人ずつ車庫内にあるモノレール車両の運転席へと案内された。運転席には実際の運転状況と同様に,チェックリストのPDFが保存されたタブレットが設置された。チェックリストには運転時に生じる可能性のある24種類のトラブルと,それぞれについての対処方法が記載されており,実験において生じるトラブルである「扉故障」はその1つとして含まれていた。参加者は運転席に座り,駅に停車した直後であるという想定のもと車両の扉を開けるところから実験が開始された。開始直後,客室にいる実験者が非常通報ボタンを押し,扉が開かないことを伝えるという状況設定で,該当の扉はドアコックが操作されて開かないようになっていた。以上の状況で,運転士が対処を行い,運転再開のために扉を閉めたところで実験終了とし,終了までの行動が車内に複数設置されたビデオカメラによって記録された。その後,参加者は対応の主観的評価やチェックリストの使用のしやすさについての質問紙への回答を求められた。なお,指示群では非常通報直後と運転再開前の運輸指令への報告時に,チェックリストを使用するようにという指示が与えられたが,非指示群では与えられなかった。
 尺度 録画記録より,段階1(開扉から運転室退去まで),段階2(客室到着から客室退去まで),段階3(運転室帰着から閉扉まで)の3段階に分類された30の行動を正しく行えたかどうかが評定された。また,社内規定を元に作成された直接的な扉故障対応行動6項目が評定された。加えて,チェックリストを参加者がどのように使用したかを示す5項目が評定された。全ての評定は,災害心理委員会によって各項目2段階で行われた。また,各段階でのチェックリスト参照時間と対処行動にかかった時間も測定された。
結 果
 実験の一部が計画通りに実施できなかったことから,関連する段階3の評価項目2つを除外した上で,各段階および全段階の行動の正確性の合計得点を従属変数とした2群の分散分析を行った。結果はどの段階も非有意であった。
 次に,扉故障対応行動の合計得点を求め,チェックリスト参照行動や時間などを要因に加えた構造モデルを検討した(Figure 1)。結果より,正確性に対するチェックリストの使用指示は直接効果では負の影響を示しているものの,指差し確認や対処時間を経由した間接効果では正の影響を示しており,総合効果では正確性を有意に向上させることが明らかとなった。
Figure 1 チェックリスト掲載行動の正確性モデル 
考 察
 先行研究と同様に,チェックリストは所持だけではなく指差し確認などの積極的な参照と十分な対応時間を確保することが行動の正確性に結びつくことが示唆され,運輸指令との連携がそれに貢献し得ることが明らかになったと考える。ただし,その影響はチェックリストに記載のある行動に限定されているため,記載する項目の適切な選定が課題といえる。
引用文献
高原龍二・釘原直樹 (2016). 正確性と好印象のジレンマ 産業・組織心理学会第32回大会発表論文集, 189-192.
高原龍二・釘原直樹 (2017). モノレールにおける運転士のトラブル対処行動へのチェックリストの影響 日本心理学会第81回大会発表論文集, 1002.

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