発表

3PM-084

母親の生命観教育に対する態度の影響因についての探索的検討

[責任発表者] 田中 美帆:1
[連名発表者] 大塚 穂波:2
1:武庫川女子大学, 2:神戸大学

目 的
 子どもの生や死についての基本的な認識は,いくつかの段階を経て発達することが指摘されており (仲村, 1995),それぞれの段階にある子どもたちに対して,適切な生命観教育を行うことが求められている。家庭においても約7割の養育者がテレビの事件や話題を契機に死について話したいと考えている (茎津他, 2009)。しかしながら,5割以上の養育者が子どもの生や死の概念の発達について正しく認識していないことや (林, 2010),死について頻繁に子どもに話している養育者は2割にも満たないこと (茎津他, 2009) も示されている。つまり,家庭には身近な死から子どもに対して生命観教育を行う絶好の機会および養育者にその意思があるにも関わらず,より身近な死をどのように教えていくのかについての検討は必ずしも十分ではない (林, 2010; 林, 2011)。そこで,本研究では,子どもの死の概念についての養育者の理解や現在の家庭での「死」に関する会話の頻度が養育者の生命観教育に対する態度に及ぼす影響を探索的に検討する。

方 法
調査協力者 3~6歳の第一子を持つ母親482名 (M = 35.37歳, SD = 5.09)
調査期間と手続き 2017年1月下旬~2月上旬。株式会社クロスマーケティングに登録をしているモニターを対象に,インターネット調査を実施した。
調査内容 (1) フェイスシート:年齢,婚姻状況,子どもの年齢と性別 (2) 子どもの生や死の概念についての理解: 林 (2011) を参考に,死の諸属性である「普遍性」,「不可逆性」,「身体機能の停止」,「因果性」,「自らの命の宿命性」の全5項目について,一般的に何歳ごろから理解できるかについて,「~2歳」,「3~5歳」「6~8歳」「9~11歳」「12歳~」の5件法で回答を求めた。(3) 家庭での「死」に関する会話の頻度:普段,子どもと「死」について話す機会はあるかについて「ある (1点)」から「ない (4点)」までの4件法で尋ねた。(4) 生命観教育に対する態度:いのちの教育への態度尺度 (林, 2011) を使用した。この尺度は,「意欲的態度 (6項目)」,「否定的態度 (5項目),「非関与的態度 (2項目)」の3下位尺度13項目から構成されている。「非常にそう思う (5点)」~「全くそう思わない (1点)」の5件法で回答を求めた。

結 果 と 考 察
1.調査協力者の特徴
 調査協力者の第一子の平均年齢は4.51歳 (SD = 1.12) であった。普段,子どもと「死」について話す機会が「ある」,「時々ある」と答えた協力者は208名 (43.2%),「あまりない」,「ない」と答えた協力者は274名 (56.8%) であった。子どもの死の諸属性についての理解では,全ての項目で「6~8歳」と回答した協力者が最も多かった (33.4~41.5%)。
2.生命観教育に対する態度の影響因の検討
子どもの死の概念についての理解に関して,5~7歳の間にこれらの概念が獲得されるというLansdown & Benjamin (1985); Speece & Brent (1984) を参考にそれぞれの諸属性について「6~8歳」と回答したものとそれ以外と回答したものの2群に分類した。生命観教育に対する態度の影響因の検討に先立ち,生命観教育に対する態度と子どもの死の概念についての理解,家庭での「死」に関する会話の頻度の相関係数を算出した。その結果,意欲的態度と不可逆性の理解 (r = -.12, p < .05),身体機能の停止の理解 (r = -.10, p < .05),「死」に関する会話の頻度 (r = -.24, p < .001) との間に有意な負の相関,否定的態度と「死」に関する会話の頻度 (r = -.18, p < .001) に有意な正の相関が認められた。非関与的態度はいずれの変数とも有意な相関はみられなかった。
 次に,生命観教育に対する態度に影響を及ぼす要因を検討するため,子どもの死の概念についての理解および「死」に関する会話の頻度を説明変数,生命観教育に対する態度を目的変数とする重回帰分析を行った。その結果,Table 1に示すように決定係数 (R2) は必ずしも高い値ではなかったが,意欲的態度には,生命観教育の頻度が負の影響を,否定的態度には「死」に関する会話の頻度および不可逆性の理解が正の影響を与えていることが示唆された。すなわち,現在家庭で「死」に関する会話をしている人ほど,意欲的態度が高く,否定的態度が低いこと,子どもが不可逆性を理解する年齢を正しく認識している人ほど否定的態度が強いことが明らかになった。
子どもの死の概念における「不可逆性」とは,「死んだら生き返ることはできないということ (白神 ,2016)」である。この不可逆性はその他の概念よりも早い段階で概念獲得が行われているという結果もある (e.g., Kenyon, 2001)。比較的早期に獲得されている概念の獲得時期を理解している養育者ほど,否定的態度が高い原因について本研究では必ずしも十分に明らかにされなかったため今後検討していく必要がある。さらに,その他の生命観教育に対する態度の影響因について,養育者自身の生と死に対する態度などの変数を加えた検討も求められる。

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