発表

2EV-084

物体概念の階層性の獲得 基本レベルと上位レベルのカテゴリー化に着目して

[責任発表者] 谷口 康祐:1
[連名発表者] 石橋(田邊) 亜澄:2, [連名発表者] 小西 行郎#:1
1:同志社大学赤ちゃん学研究センター, 2:東北大学加齢医学研究所

目 的
例えばイヌを見た時に,我々は瞬時に「イヌ」であることを認識できるが,そのほかにも「動物」や「柴犬」であるといったことも認識できる。このように,我々は1つの物体に対して様々な水準でカテゴリーを認識できる。これは物体の概念が階層的な構造を持っているためであると考えられている(e.g. Collins & Quillian, 1969)。この概念の階層は物体の認知に影響を与えることが知られていることから(e.g. Rosch, Mervis, Gray, Johnson & Boyes-Braem, 1976),階層的な概念構造は言語と関連しているといえる。しかしながら,まだ言語を獲得できていない乳児であっても階層的なカテゴリーを認識していることが示されており,基本レベル(イヌvsネコ)や生物/無生物(動物vs乗り物)といったカテゴリーの認識が4ヶ月前の乳児でもできることが示されている(e.g. Quinn & Eimas, 1998)。そうならば,乳児はどのように物体のカテゴリーを認識しているのだろうか,またカテゴリーの階層はどのようにして構築されるのだろうか。本研究ではこれらについて調べるため,乳児を対象に上位レベル間(動物vs野菜・果物)のカテゴリーと生物/無生物レベル間(動物vs乗り物)のカテゴリーでの選好性を比較し,乳児の階層的な概念の獲得過程を明らかにすることを目的としている。
方 法
参加児
33名の乳児(男児16名,女児17名,4-11ヶ月)を対象とした。
刺激
動物,野菜・果物,乗り物,道具のカテゴリーからそれぞれ4つを3Dプリンター(stratasys社製 Objet30 Prime)によって造形したものを刺激として用いた。刺激の大きさは約8-15㎝とし,材料はアクリル樹脂を用いて造形し,テクスチャは半透明で統一した。
手続き
参加児はテーブルの前で保護者と一緒に座り,実験者は対面で向かい合い刺激を提示した。課題は馴化ブロックと選好ブロックで構成された。馴化ブロックでは,いずれかのカテゴリーの3つの刺激を順番に提示し,参加児はそれを見たり,触ったりして自由に探索した。刺激は最低でも20秒提示し,参加児の興味が続いた場合には20秒経過しても探索を続けさせた。選好ブロックでは,馴化ブロックにて提示されていない刺激と新カテゴリーの刺激の2つを同時に提示した。新カテゴリーは上位レベル間(e.g.動物vs野菜・果物)と生物/無生物レベル間(e.g.動物vs乗り物)の2条件で行った。馴化ブロックと同様に参加児は両刺激とも自由に探索を行うことができた。参加児の行動は対面にあるビデオカメラで撮影された。

結 果
選好ブロックにて参加児が2つの刺激それぞれに対して探索した時間を計測し,2つの刺激の総探索時間から新カテゴリーを探索した時間の割合を算出した(新カテゴリーの物体に対する探索時間/合計探索時間)。月齢によって新カテゴリーに対する探索の時間が変化するかを調べるため,重回帰分析によって検討を行った(Figure 1)。重回帰分析では,月齢(4ヶ月から11ヶ月)とカテゴリーレベル(上位レベルと生物/無生物レベル)を独立変数として投入し,その最適モデルを検討した。その結果,7ヶ月と10ヶ月で有意に選好性が高くなることが示された(7ヶ月:β= 0.17, p < .05; 10ヶ月:β= 0.20, p < .05)。カテゴリーレベルは,生物/無生物レベル課題のほうが探索時間を長くする傾向を示した(β= 0.10, p < .1)。
考 察
本研究では,月齢によって新カテゴリーに対する選好性が月齢によって変化することを示した。特に7ヶ月と10ヶ月で新しいカテゴリーの物体に対して選好性が高くなることが示された。7ヶ月では新カテゴリーの階層によって選好性にほとんど違いないことから,カテゴリーの違いを認識しているというよりは物体の形態の違いに対して反応されたと考えられる。他方,10ヶ月では生物/無生物レベルのカテゴリーの選好性がより高くなっていることから,上位レベルと生物/無生物レベルのカテゴリーの違いを区別していることが示唆される。本研究から,新カテゴリーに対する認識は7ヶ月ごろから行われるが,その処理は月齢によって異なることが示唆された。
引用文献
Collins AM, Quillian MR.(1969). Journal of Verbal Learning and Verbal Behavior.8,241–248.
Rosch E, Mervis CB, Gray W, Johnson D, Boyes-Braem P. (1976). Cognitive Psychology. 8,382–439.
Quinn, PC, Eimas, PD. (1998). Journal of experimental child psychology, 69(3), 151-174.

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