発表

2EV-082

大学生における自己愛傾向と達成動機の関連性について

[責任発表者] 田中 凜太郎:1
1:立命館大学

目 的
 自己愛とは自己を価値あるものとして体験しようとする心の働きのことで,健康的な面もありながら病理的な面も持ち合わせているものである (上地,2004)。青年期の若者が自己愛を維持するためにセルフ・モニタリング (他者が自分をどう見ているかを意識して,状況によって行動を変化させること) を介して,リスクテイキング行動 (飲酒や喫煙といったリスクを伴う行為) をしてしまうことが報告されている (小倉・矢澤,2014)。
 本研究では先行研究の自己愛がリスクテイキング行動に影響を与えたことから,自己愛とリスクテイキング行動と対をなすポジティブな要素を含んでいる達成動機との関連性を探り,ポジティブな影響を与えるのではないかを見る。
方法
調査対象者 男子大学生および男子大学院生186名を分析の対象にした。平均年齢は20.8歳であった。
尺度 自己愛人格目録短縮版(NPI-S) , セルフ・モニタリング尺度の邦訳版, RIBS-U12項目と吉村 (2007) のリスクテイキング行動尺度17項目を参考に作成したリスクテイキング行動尺度,達成動機測定尺度を用いた。
手続き 質問紙は自己愛傾向,セルフ・モニタリング,リスクテイキング行動,達成動機の順に回答してもらった。
結果
自己愛傾向,リスクテイキング行動,達成動機は先行研究から得られたデータをもとに確認的因子分析を行った。その後,それぞれの因子のα係数を抽出し,信頼性を得た。セルフ・モニタリングは確認的因子分析で十分な適合値が出なかったため,探索的因子分析 (最尤法,バリマックス回転) を行い,因子の解釈可能性に基づき2因子解を採用した。その後,水準以下の因子負荷量を削除し,残った項目を含めた因子のα係数を抽出し,信頼性を得たことを確認してからそれぞれの因子に“外向性”と“他者志向性”と命名した。
各尺度でそれぞれ因子を抽出したところで,共分散構造分析を行い,リスクテイキング行動と達成動機それぞれのパスモデルを形成し,そのパスモデルを図1と図2に示した。図1のモデル適合度はχ2 = 11,562, GFI = .979, AGFI = .938, RMSEA = .059であった。図2のモデル適合度はχ2 = 94.788, GFI = .903, AGFI = .730, RMSEA = .184であった。
また、リスクテイキング行動尺度と、達成動機尺度の得点を相関分析したところ、リスクテイキングと挑戦・成功欲求間に有意性のある相関が、社会的達成欲求間に有意傾向があることが分かった。


考察
本研究では自己愛傾向がリスクテイキング行動,達成動機のそれぞれに影響を与えていることが明らかになった。そのため自己愛にはネガティブな側面だけでなく,ポジティブな側面も兼ね備えていることが考えられる。自己愛のポジティブな側面というのは,青年期の若者に自信をつける効果や周囲との関係性から自己を保つようにする効果を兼ね備えているのではないかと考える。しかし自己愛傾向と達成動機のパスモデルのモデル適合はリスクテイキング行動の時と比べて低いため,まだ改良する余地があり,今後の課題としてあげられる。
引用文献
上地雄一郎 (2004). 自己愛の概念と定義 上地雄一郎・宮下一博(編) もろい青少年の心 北大路書房 pp2-9
小倉慈子・矢澤久史 (2014). 自己愛傾向とリスクテイキング行動-セルフ・モニタリングを媒介要因として- 心理学研究, 85, 80-86
吉村典子 (2007). 楽観性が健康に及ぼす影響-リスクテイキング行動,生活習慣,楽観的認知バイアス,健康状態との関連から- 甲南女子大学研究紀要(人間科学編), 43, 9-18.

詳細検索