発表

2EV-081

青年期における性役割観とキャリア・レディネスの関連

[責任発表者] 田仲 由佳:1
[連名発表者] 石井 国雄:1
1:清泉女学院大学

目 的
 現代の青年においては,多様な生き方が選択可能であるとされる状況の中で,職業キャリアの形成をはじめ,自らの生き方を主体的に模索し成熟させていくことが求められている。青年がライフコースを展望する際には多くの外的要因が関連しており,社会・文化的観点からは,個人がもつジェンダー・アイデンティティや自律性が影響するという指摘がなされるが(藤原,2009),それらの関連について実証的に取り扱った研究は数少ない。そこで本研究では,具体的な進路選択を目前に控えた大学3.4年生を対象に,キャリア意識の形成に関連することが予測される個人特性として性役割観および暗黙の知能観を取り上げ,それらが職業/人生キャリア・レディネスに対してどのような影響を及ぼしているのかについて性別ごとに検討することを目的とする。
方 法
 調査参加者 東京都内の大学生166名に対して,キャリア系の授業時に調査を行った。そのうち,回答に欠損のあった6名を除外した160名(男性49名,女性124名;3年124名,4年36名;Mage=20.46(SD=0.65))を分析対象とした。
質問紙の構成 キャリアレディネス尺度(職業キャリア/人生キャリア)54項目(坂柳,1996),平等主義的性役割観尺度短縮版15項目(鈴木, 1994),暗黙理論尺度3項目(及川, 2005)に回答してもらった。
結 果
 記述統計量 各変数の記述統計量について,男女別に尺度得点を算出した(Table 1)。
また,各変数について学年による違いがあるかを調べたところ,職業キャリア・レディネス(t(158)=4.29, p<.001)と人生キャリア・レディネス(t(158)=2.44, p<.05)において有意差が見られ,いずれも3年生(Ms=3.20, 3.19)よりも4年生(Ms=3.67, 3.47)の方が高かった。
 尺度間の相関 各変数の相関係数について,男女別に算出した(Table 2)。職業レディネスと人生レディネスは男女ともに相関が強かった。また,女性においてのみ,職業レディスネスは平等主義的性役割観,固定的知能観と相関がみられ,固定的知能観は人生レディネスとも負の相関がみられた。また,女性においてのみ,平等主義的性役割観と固定的知能観と負の相関がみられた。
重回帰分析 平等主義的性役割観と固定的知能観がキャリア・レディネスにどう影響するか,そこにおいて男女の差異がみられるかを検討するため,多母集団同時分析を行った(Figure 1)。まず,職業キャリア・レディネスについては,平等主義的性役割観と固定的知能観の影響に男女の違いが見られていた。女性においては,平等主義的性役割観による有意な正の影響(β=.22, p<.05),固定的知能観による有意な負の影響が見られていた(β=-.21, p<.05)。その一方で,男性においては,有意な影響は見られなかった。それに対して,人生キャリア・レディネスについては,女性における固定的知能観の有意な負の影響のみが見られた(β=-.18, p<.10)。なお,パラメータ間の差の検定は有意差が得られなかった。考 察
女子大学生において,職業キャリア・レディネスは平等主義的性役割観が強いほど高く,固定的知能観が強いほど低い,という傾向が見られ,男性にはそのような傾向が見られなかった。ここから,伝統的価値観や固定的知能観の強さが,女性において職業キャリアを選択したり,思い浮かべたりする上でのハードルの一つとなっていることが示唆される。
引用文献 1) 藤原(2009) キャリア教育研究 28, 19-26. 2) 坂柳(1996) 愛知教育大学教科教育センター研究報告, 20, 9-18. 3) 鈴木 (1994)心理学研究, 65, 34-41. 4) 及川 (2005) 教育心理学研究 53, 14-25.
註 本研究は平成30年度清泉女学院大学共同研究費の助成を受けた。

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