発表

2EV-079

幼児の絵本選好と大人の絵本選択は一致するか?

[責任発表者] 村上 太郎:1
1:九州女子大学

目 的
 絵本に関する研究は、教材としての絵本研究のみならず、絵本読み場面における親子の相互作用の研究(佐藤, 2016)や、絵本の絵が幼児の物語理解や想像力に及ぼす影響についての検討(中澤ら, 2005)など、発達研究においても注目が寄せられているトピックである。
 絵本選びを行う上で、内容についての検討はもちろん重要であるが、絵本を選択する際に最初に判断する材料、言い換えると「読んでみたい」と思った時に最初に目にしているものは表紙の絵であることは間違いないだろう。しかしながら、絵本の表紙と子どもの選好についてはまだ明らかになっていない点が多い。大人は、子どもが喜ぶような絵本を選びたいと考えるだろうが、実際に子どもが好む絵とは一致するのだろうか。本研究では、1つの話について出版社の異なる絵本を複数収集し、絵本の表紙を刺激とした子どもの選好について検討を行うことを目的とする。

方 法
調査協力者:K県のこども園に通う年長児23名(男児14名,女児9名;平均月齢70.3ヶ月,範囲65~76ヶ月),年中児15名(男児8名,女児7名;平均月齢58.6ヶ月,範囲48~63ヶ月)の合計38名。女子大学の保育士・教員養成系の課程に在籍している大学4年生20名。
刺激:絵本「3びきのこぶた」,「おおきなかぶ」,「おおかみと7ひきのこやぎ」を刺激として選定し、それぞれの話について6つの表紙を用いた。
手続き:園の空いている一室にて個別に調査を行った。ラポールを形成後,絵の選好課題を行った。はじめに1つの話について出版社の違う表紙の絵を6枚提示し,「どれも同じお話だけど,全部絵が違うよね。この中で○○(被験児の名前)くん/ちゃんの好きな絵を3つ選んでください。」と教示した。子どもが3つ選択した後,「その中で一番好きなのはどれですか?」「次に好きなのはどれですか?」と質問し,6つの表紙から上位3つの順位付けをさせた。上記の流れを3つの話に対して行い,提示する話の順番は被験者間でカウンターバランスをとった。
分析に際しては,調査協力者の反応に基づいて,最も好きな絵に3点,以下順位に従って2点と1点を与えた。その他の絵は全て0点とした。

結 果
 3つの話それぞれについて、年齢(年中/年長/女子大学生)×絵本(6種類)の2要因分散分析を行った。なお、本稿では表紙の絵を示すことが紙面上難しいため、年齢と絵本の交互作用について結果の概略を示す。
「3びきのこぶた」においては、年齢の主効果はみられず、絵本の種類の主効果がみられ(F(5, 275) = 5.76, p < .001)、年齢と絵本の種類の交互作用がみられた(F(10, 275) = 6.45, p < .001)。
 「大きなかぶ」においては、年齢の主効果はみられず、絵本の種類の主効果がみられ(F(5, 275) = 2.54, p = .03)、年齢と絵本の種類の交互作用がみられた(F(10, 275) = 5.82, p < .001)。
 「おおかみと7ひきのこやぎ」においても、年齢の主効果はみられず、絵本の種類の主効果がみられ(F(5, 275) = 4.00, p = .002)、年齢と絵本の種類の交互作用がみられた(F(10, 275) = 2.15, p = .02)。
 単純主効果の検定の結果、年中群と年長群の絵本選好に差はみられないものの、大学生との間には有意な差がみられたものがどの話においてもみうけられた。

考 察
本研究では、絵本の表紙に着目し、子どもが好む絵本の絵と大人が選ぶ絵本の絵が一致するのかを検討した。その結果、子どもが選んだ表紙と大人が選んだ表紙には不一致が多くみられることが示された。
 大人が表紙を選択する際、「かわいいから」「物語に合っている」「分かりやすい」という理由に基づいて「想像力を広げられそうなもの」「子どもが楽しめそうなもの」「子どもが親しんでくれそうなもの」「その話を1番伝えられそうなもの」などの考えや思いを持って選ぶ様子がうかがえたが、大人が考える「子どもが好きそうな絵本」と実際の子どもの好みには違いが生じた。
 幼児の選択についても検討を行うと興味深い示唆が得られた。特に「おおかみと7ひきのこやぎ」では、男児はおおかみが大きく描かれているものを好み、女児は登場人物が楽しそうなものを好むことが示唆された。さらに絵本選好には性差がみられ、男児が選択する絵本を女児は選択せず、逆に女児が選択する絵本を男児は選択しない、といった傾向を示す絵本も示唆された。
 本研究の結果は、保護者や保育士が読み聞かせを行う際のより良い絵本選択になるような示唆を与えるものと考えられる。


引用文献

中澤潤・中道圭人・大澤紀代子・針谷洋美. (2005) 絵本の絵が幼児の物語理解・想像力に及ぼす影響. 千葉大学教育学部紀要, 51, 53-59.
佐藤鮎美. (2016). 絵本遊びが親子関係に良い効果をもたらすのは本当か. ベビーサイエンス, 16, 18-27.

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