発表

2EV-077

認知機能低下抑制を目指した「現代高齢者版余暇活動尺度」の開発

[責任発表者] 岩佐 一:1,2
[連名発表者] 吉田 祐子#:2
1:福島県立医科大学/東京都健康長寿医療センター, 2:東京都健康長寿医療センター

目 的
 日本では認知症者の増加が推測されており対策が急がれている。読書やパズルなどの余暇活動を頻繁に行う高齢者は認知機能が低下しにくいことが報告されており(Wang他, 2012; Iwasa他, 2012)、日本の「生きがい型」認知症予防の推進の根拠と位置づけられる。しかしながら、欧米と日本では高齢者の余暇活動の様相が異なり、日本独自の知見の蓄積が必要である。さらには、現代高齢者における余暇活動の標準的な評価方法は未だ確立されていない。Iwasa & Yoshida (印刷中)は、日本における地域高齢者の余暇活動を調査し、11因子から成る標準的なリストを構成した。本研究は、地域高齢者を対象として、認知機能低下抑制を目指した「現代高齢者版余暇活動尺度」の信頼性・妥当性を検証することを目的とした。

方 法
《対象者》 東京都A区に在住する高齢者男女(70~84歳)から594人を無作為抽出して訪問調査を行い、316人(53.2%)が調査に参加した。女性は158人(50%)、年齢は77.7歳(標準偏差4.3)、義務教育は60人(19%)、独居は72人(22.8%)、就労無しは228人(72.2%)であった。
《測度》 認知機能検査:簡易認知機能検査としてMini- Mental State Examination (MMSE)、記憶検査としてMemory Impairment Screen (MIS)、遂行機能検査として語想起検査(動物名想起)、主観的幸福感尺度としてWHO-5-J(Awata他, 2007)を実施した。 余暇活動尺度: 地域高齢者の余暇活動を調査したIwasa他(投稿中)の結果に準じて11項目(「1電子機器の利用」、「2地域・社会活動」、「3友人との交流」、「4運動」、「5学習活動」、「6独りゲーム」、「7文化的活動」、「8旅行」、「9創作芸術」、「10植物の世話」、「11対人ゲーム」)を構成し、実施頻度を4件法(3:よくする~0:全くしない)で回答を求めた。11項目の値を単純加算し「余暇活動尺度得点」とした(値範囲:0~33点)。 共変量: 年齢、性別、学歴、有償労働、経済状態自己評価、慢性疾患(脳卒中、心臓病、糖尿病、がん)、手段的自立を多変量解析に用いた。
《倫理的配慮》 本研究は福島県立医科大学倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2559)。

結 果
 余暇活動尺度得点の基本統計量は、平均値14.25、標準偏差7.19、中央値14.5、歪度-0.1、尖度-0.77であった。余暇活動尺度11項目のα係数は0.81であった。余暇活動と認知機能の関連を検討するため、余暇活動尺度を説明変数、各認知機能検査を目的変数とする重回帰分析を行った(表1)。余暇活動尺度得点はいずれの認知機能検査とも有意な関連が認められた(MMSE: β=0.32, p<.01; MIS: β=0.25, p<.01; 語想起: β=0.26, p<.01)。余暇活動尺度の項目別の分析では、「11対人ゲーム」(p=.16)以外の項目においてMMSEと有意な正の関連が(βの範囲:0.13~0.29)、「6独りゲーム」(p=.15)、「11対人ゲーム」(p=0.053)以外の項目で主観的幸福感と有意な正の関連が(βの範囲:0.14~0.43)それぞれ認められた。

表1 余暇活動と認知機能の関連(重回帰分析結果)
            MMS   MIS   語想起   幸福感
年齢         -0.18** -0.12*   -0.08   0.09
性別         0.04   0.09   0.02    0.02
学歴(義務教育    -0.05   0.06   -0.05   0.06
有償労働(無し)   -0.04   0    -0.06   -0.12*
経済(ゆとり無し)  -0.03   0    0.07    -0.18**
生活習慣病(有り)  0.03   0.03   -0.01   -0.08
手段的自立(非自立) -0.09  -0.05   -0.02   -0.12*
余暇尺度得点     0.32**  0.25**   0.26**  0.47**
決定係数       0.18**  0.08**   0.07**  0.33**
註)表中数値は標準偏回帰係数を示す。** p<.01, * p<.05.

考 察
 余暇活動尺度得点における歪度・尖度はともに絶対値1を超えず、正規分布から大きく逸脱する分布形状ではなかった。内的整合性の指標であるα係数は0.81と良好であった。余暇活動尺度は認知機能検査と正の関連が認められた。また、項目別の解析では、「11対人ゲーム」以外の10項目において、MMSE得点との正の関連が認められた。余暇活動尺度得点は主観的幸福感とも正の関連を示した。項目別の解析では、「6独りゲーム」、「11対人ゲーム」以外の9項目において、主観的幸福感得点との正の関連が認められた。上記より、「現代高齢者版余暇活動尺度」における信頼性・妥当性が確認された。
 知見の限界を以下に記す。本研究は横断調査デザインのため因果関係の特定ができない。調査参加率が53.2%と高くは無いため、サンプル代表性が損なわれ、健康状態がより優れた集団から得られた知見である可能性がある。

引用文献
Awata S他. (2007) Psychiatry Clin Neurosci. 2007; 61(1): 112-9.
Iwasa H他. (2012). J Psychosom Res, 72(2), 159-164.
Iwasa H & Yoshida Y. (印刷中) Gerontol Geriatr Med.
Wang他. (2012). Biochim Biophys Acta, 1822(3), 482-491.

《謝辞》本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金(番号:15K08809)の助成を受け実施した。

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