発表

2AM-106

認知バイアスにおける加齢の影響 -オプションフレーミング課題を用いて-

[責任発表者] 田 旻:1
[連名発表者] 山本 健太:1, [連名発表者] 増本 康平:1
1:神戸大学

目 的
 オプションフレーミング効果とは,商品を購入する際に,必要なオプションを追加する方法(加法フレーミング; additive framing)に比べ,必要でないと思うオプションを削除する方法(減法フレーミング; subtractive framing)のほうが,より多くのオプションを選択する現象である(Park et al.,2000).一般的に,加法フレーミングでは,オプションを追加すると支払う価格が上がるため,追加するオプションが少なくなる傾向があり,減法フレーミングでは,オプションを削除すると商品に備わるはずであった機能が失われるため,削除するオプションが少なくなる傾向がある(Park et al.,2000).
 これまでの若年者を対象とした研究は,加法条件よりも減法条件のほうがオプションを選択する数が多いことを報告している(Park et al.,2000).一方,高齢者のオプションフレーミング効果に関する研究が少ない.そこで,本研究は加齢がオプションフレーミング効果に与える影響を検証する.高齢者は若年者に比べ,ポジティブな情報に注意を向ける傾向がある(ポジティヴィティ効果;Mather et al., 2005).ポジティヴィティ効果により,高齢者は加法フレーミングで,価格の上昇(ネガティブ情報)よりもオプションの充実(ポジティブ情報)に注意が向くため,若年者に比べ,多くのオプションを選択すると予測される.減法フレーミングで,オプションの減少(ネガティブ情報)よりも価格の下落(ポジティブ情報)に注意が向くため,若年者に比べ,削除するオプションが多いと予測される.

方 法
実験参加者:健常高齢者40名 (Mean=72.33,SD=5.05)と大学生40名(Mean=21.03,SD=1.75).
実験デザイン:年齢(2:高齢群,若年群)×オプションフレーミング条件(2:加法,減法).両要因とも参加者間要因であった.
オプションフレーミング課題:パッケージツアーと健康診断のシナリオを用いて,実験をおこなった.加法条件では,基本価格とオプションのリストが提示され,参加者は必要だと思うオプションにチェックをつけた.減法条件では,合計価格とすべてのチェックをつけているオプションのリストが提示され,参加者は必要でないと思うオプションのチェックを外した.選択の時間をPCで計測した.オプションの選択が終った後,選択についての満足度,難易度,消費意欲を評価させた.
その他の測定項目:認知機能検査(Wechsler,2006),日本語版感情調節尺度(吉津ら,2013) ,日本語版意思決定スタイル尺度(内藤ら,2004).

結 果
 選択したオプションの数について,パッケージツアーと健康診断それぞれの2要因分散分析をおこなった.
 パッケージツアーでは,フレーミング条件(F(1,76)=28.49,p <.001,η2p =.27)に有意な主効果がみられたが,年齢には有意な主効果(F(1,76)=1.26,n.s.,η2p =.02)はみられなかった.さらに有意な交互作用もみとめられなかった(F(1,76)=2.841,n.s.,η2p =.04)(図1).これらの結果から,年齢にかかわらず,加法条件に比べ減法条件のほうが多くのオプションが選択されたことが示された.
 健康診断では,年齢(F(1,76)=14.576,p <.001,η2p =.161)及びフレーミング条件(F(1,76)=34.814,p <.001,η2p =.314)に有意な主効果がみられたが,有意な交互作用(F(1,76)=.482,n.s.,η2p =.006)はみられなかった(図2).これらの結果から,条件にかかわらず,若年者より高齢者のほうが多くのオプションを選択した.また,年齢にかかわらず,加法条件より減法条件のほうがより多くのオプションを選択したことが明らかとなった.

考 察
 本研究では,加法条件において,高齢者は若年者よりも多くのオプションを選択し,減法条件においては,高齢者は若年者よりも削除するオプションが多いと予測した.加法条件の結果は仮説を支持したものの,減法条件の結果は仮説と異なるものとなった.オプションを削除する際にはネガティブな感情が生起する(Chatterjee & Heath,1996).高齢者はネガティブな感情を回避することが指摘されており(Mather et al., 2005),このことが削除したオプションの数が少なくなったと考えられる.

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